Cherry(12) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「あの! ご迷惑なら・・・・無理にお願いすることでは! ほんと、こちらの都合なので・・・」



一瞬の間に耐えきれなかったあゆみがそう切り出した。




すると泉美はニッコリ笑って



「いえいえ、そうじゃないのよ。 実はね、この前も主人とあなたの話をしていたのよ、」



思いもかけない言葉を言われた。



「え、」



「まあ『ルシエ』の仕事の方が断然、お給金も上だろうけど。 いつか・・・こちらに夜も来てもらえたらって。」




全くもって


思ってもみなかった展開だった。




あゆみは目を丸くして驚いた。




「夜は昼に比べてお客様の雰囲気がガラっと変わります。 仲居さんの裁量でお客さまにサービスを提供することもあります。 昼と同じようにはいかないでしょうけど。 それは私が責任を持ってあなたに指導したいと思います。」



「きっと、あなたならできますよ、」



二人にイキナリ励まされて、あゆみはもうどうしていいかわからずにいた。



「今まではアルバイト扱いでしたが、そうなると正式な『従業員』として入っていただきます。 健康保険や厚生年金なんかもフォローしてるし、有給もあるし。 時間が拘束されるけれど、たくさんのメリットもありますから、」



泉美は優しくそう言った。



あゆみは何だかどんどんと落ち込んだ。



ゆうきの人達が優しくしてくれればくれるほど、胸が苦しくなって。



「・・・あの、」


ようやく顔を上げた。



「・・あたし。 借金を抱えてます。 多額の、」



もう


耐えられなかった。



結城の両親の顔が見れずに、彼女は座布団から降りて土下座をするようにして



「・・・3年前。 両親が事故で亡くなりました。 父は小さいながらも会社を経営していて。 借金ごと・・・あたしはそれを引き継ぐことになりました。 もちろん会社は倒産。 高校生の弟と二人・・・何とか生きていかなくちゃならなくて・・頼れる親戚もいなかったので・・もう水商売で生きていくしかなかったんです・・・。 弟が幸せなことにホクトのアルバイトとして採用されて・・クラシック事業部の方たちに・・あたしまでお世話になって。 住むところから『ルシエ』に勤めることができたのも・・・もう、全部みなさんのおかげなんです! ・・・その上・・・『ゆうき』の方たちに・・・また迷惑を、」




あゆみは頭を下げながら一気にまくし立てた。



呆気に取られていた結城の両親だったが



「・・・その年で。 こんなに仕事をしているのにはワケがあると思っていました、」



泉美の一言でその場の空気が変わった。



「比呂くんからは。 詳しい事情は聞いていなかったけれど、あなたが苦労しているんじゃないかってことは・・うすうす感づいていました。 ・・・あたしも、酒乱だった父から逃げるようにして母と二人で暮らしてきましたから、」


あゆみはゆっくりと顔を上げた。



「親戚のつてで。 芸者の道に入って。 母親を楽にしてやりたくて。 ほんと・・・貧乏で苦労してきましたから。 16で芸者の道に入って・・・本当にたくさんの人達のお世話になって来ました。 比呂くんの亡くなったお母さまや、おばあちゃま。 おばさま。  たくさんの先輩たちや・・そして・・主人にも。 今の自分があるのは、たくさんの人たちに助けられてきたからです、」



義母の生い立ちまで聞かされていなかった結城は少し驚いたように彼女を見た。




「みんな・・・助け合って生きているんです。 あなたを助けたいとか・・上からの目線では何も言いたくないけれど。 まだほんの少しの間だけれど、あゆみさんの人柄は充分に伝わっています。 きっと事業部の方たちも同じ気持ちなんです。 あなたが・・正しいと思うのなら。 人との繋がりで得た信頼は大切にするべきです、」




美しい凛とした表情で泉美はあゆみに諭した。



「女将さん・・・」



あゆみは耐え切れずにボロボロと涙をこぼした。



「・・・・借金のことは。 ウチの顧問弁護士さんにも相談してみよう。 何かいい方法が見つかるかもしれない、」



結城の父も優しくそう言った。




あゆみは鳥肌が立つ思いにかられた。




女将・泉美もつらい生い立ちがありました。 自分の借金のことを包み隠さず話をしたあゆみは・・・



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