Smile on me(5) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「・・・恋をしたことは・・ありましたか。」



あゆみは思ったことをふっと口にしてしまい我に返り



「す、すみません・・」



慌ててそれを打ち消した。



それでも泉美は



「それは。 もちろん。 だって青春時代をずっと芸者で過ごしてきたんですもの、」



女将の顔とは別の少しかわいらしい笑顔を見せた。




「ハタチのころに。 真剣にお付き合いしていた人がいて。 もちろんあたしが芸者だってことも知っていてくれてた人で。 ・・プロポーズされたんだけど、」



泉美は鏡を見ながらぽつりぽつりと話し始めた。



「え・・・」



「でも。 あたしを芸者にするために、置屋のおかあさんやいろんな人にお世話になってたし。 その人は結婚して芸者をやめて家庭に入ってほしいって言ったんだけど・・・。 やめられなくて。」



「それで・・別れたんですか・・」


「ええ。 芸者を続けながら奥さんは難しい時代だったから。 相手の人だって、やっぱり自分の奥さんにはお座敷に出るような仕事はしてほしくなかったのかもしれない。 普通のサラリーマンの人だったから。 この世界のことを理解してくれてなかったんだと思うけど、」



あゆみは自分の立場に置き換えてしまった。




「それで。 こちらの後添えにって話を頂いたのが20代後半のころで。 もちろん主人はあたしの仕事のことも理解してくれていたし、同じ世界の人ならわかりあえるって思ってたし、」



やっぱり自分も


『特別』な世界で生きている女だ。




あゆみはそれを思い知った気がして、少し落ち込んだ。



この世界に入った時から


まともな恋愛なんかできないかもしれないと思って


いろいろ経験もして、それを身をもって知った。



落ち込んだ様子のあゆみに泉美は



「比呂くんは。 料亭の子として育って。 お母さんも芸者で、おばあちゃんのところに行けばもうたっくさんの芸者さんがいて。 まあ・・・普通の男の子とはちょっと違った育ち方をしてきたかもしれない、」



いきなり結城のことを切り出した。



「え、」



あゆみは顔を上げた。



「ちょっとかわいそうよね。 女性のいいところもだけど、イヤなところもいっぱい見てしまったかもしれないし。 あの子は子供のころから本当に大人びていて、すごくしっかりしていたし。」



どうしていきなり彼のことを言い出したのか。



あゆみはその意図を読み取ろうとした。



『そんなの。 ウチだって料亭だし。 オフクロは芸者だし。 立派な水商売だよ、』



笑いながらそう言った彼を思い出した。




「あなたはまだ若い。 恋に絶望する必要はないのよ。 たくさんの困難はあるでしょうけど、必ず光が見えるときは来る。」



泉美はくるっとあゆみに向き直ってそう言った。



まるで



自分の心に重くのしかかっていたことが


わかっていたかのような


そんな瞳で。



結城は今まで関わってきた男性たちとは少し違う? と思い始めたあゆみでした。




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