Licht~光(13) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「・・無理よ・・」


カタリナはどう考えてもこの身体で公演を聴きに行くのは無理だと思った。



シェーンベルグはカっと目を開き



「・・・早く・・・、」


と、彼女の腕を力強く掴んだ。



「おじいちゃん・・・」


その力の強さに驚く。




真尋は朝から何も口にしていなかった。


「少しでも食べないと。 もたないわ、」


絵梨沙は心配して手作りのサンドイッチを差し出すが、イスに座って目を閉じてジッとするだけだった。



絵梨沙の携帯が鳴った。



「・・あ、絵梨沙?」


カタリナだった。



「ええ。 どうしたの?」


「おじいちゃん・・・・公演に行くって、」


「えっ・・・」


彼の状態を知っている絵梨沙は驚いた。



「起き上がることももう難しいのに・・・。 先生も止めたんだけど・・聞かないの。 あたしとママで何とか車椅子で連れて行くから・・・。 劇場の人にも電話を入れておくから、」



「・・わかりました・・。 真尋にも伝えておきます、」


絵梨沙は電話を切ったあと、



「・・・先生が。 公演に来るって、」


真尋に言うと、パッと目を開けてゆっくりと絵梨沙を見た。



「どうしても行くって・・きかないんですって・・。」


胸がいっぱいになってしまって、今電話で聞いたことしか言えなかった。


真尋はものすごい鋭い目で絵梨沙を見た後、また目を閉じてジッとしていた。




「真尋、だいじょぶなんかな。 結局、全然会えなかったし、」


志藤と南と真太郎は劇場に向かう間も心配そうに言った。


「で、竜生は?」


まだ甥っ子に会っていない真太郎は気づいたように言った。


「エリちゃんがもう連れてってる。」


南は言った。


「え、連れてくって・・赤ん坊を?」


「うん。 客席には座らせられないけど、何とか許可もらって舞台袖の方で。 あたしが面倒見るって言うたんやけど、エリちゃんはどうしても竜生にもピアノ聞かせたいって、」



「そっか、」


二人はため息をついた。



その時、大きなバンから車椅子に乗ったシェーンベルグが病院職員の手で下ろされているところに遭遇した。



「・・先生??」


3人は驚いて思わず立ち止まって見てしまった。


家族が付き添って、もうほとんど眠るような彼の車椅子を押して劇場に入って行く。



「真尋の・・・ピアノを聴きに来たんや・・・。 あんな状態で・・」


南は呆然として言った。


最近のシェーンベルグの様子を絵梨沙から聞いていた彼女は信じられない気持ちだった。




劇場のスタッフがシェーンベルグを特別に用意した部屋に、と言ってくれたが


「・・・客席に・・」


半分眠るように彼はそう言った。


「客席で。 ・・・・聴く。」


耳を近づけないと聞き取れないほどの弱々しい声でそう言った。




真尋は客席が見える舞台袖の小窓を覗いた。


すぐに


シェーンベルグがいることに気づいた。



そしてぎゅっと拳を握り締めた。



シェーンベルグは最後の力を振り絞って真尋のピアノを聴きにやってきます・・・



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