絵梨沙にそんなことしやがって!!!
真尋はその男に激しい怒りばかりがこみ上げてきた。
「ああっ・・・んー・・・・、」
夢中で荒々しく彼女を抱きながら、何度も何度もキスをして。
「絵梨沙・・・・、絵梨沙・・・」
彼女の名を呼んだ。
「・・・もう離したくないよ・・・絵梨沙を・・・」
真尋は彼女の細い身体をしっかりと抱きしめた。
絵梨沙もやっぱり彼と離れられない自分に気づいていた。
狂おしくいとおしく彼の逞しい身体に自分の身体を絡ませる。
あの美しい彼の旋律が
頭の中を何度も何度も繰り返されて。
本選は2日後だった。
翌日、真尋は絵梨沙とともに真理子の泊まるホテルに現れた。
真尋は神妙な顔つきでゴクっと唾を飲み込んだ。
「・・このまま・・・絵梨沙とここで暮らしてもいいですか?」
いつものめちゃくちゃな彼とはまるで別人のように
真剣なまなざしで。
「え・・・」
それには絵梨沙も驚いた。
「真尋くん、」
真理子は絵梨沙が少しでも気持ちが軽くなるように彼に会わせに来ただけのつもりだった。
彼の口からそんな言葉が出るとも思わずに。
「・・絵梨沙は。 おれが守る。 おれが・・・養う、」
昨日までそんなこと一言も言っていなかったので絵梨沙は驚いた。
「・・・真尋、」
「でも あなただって今が一番大事な時なのよ。 絵梨沙と一緒に居られればいいって今は思うでしょうが、今はシェーンベルグ先生と一緒にピアノを極める時期だわ。 あなたの負担になってしまう、」
真理子は冷静になって彼にそう言った。
「そうなのかもしれない。 今は仕事もしていないし、ちょこっとバイトするくらいで・・収入だって少ないです。 でも、今・・絵梨沙と一緒に暮らしたいって思いました。 今じゃなくちゃダメだって思いました、」
「真尋・・待って、そんな・・」
絵梨沙も戸惑った。
「絵梨沙がピアノを弾けなくなってしまったことは聞きました。 もう絵梨沙が無理にピアノを弾かなくてもいいように好きなだけ休んでほしいんだ。 おれたちはこのウイーンで楽しい時もつらい時も全部二人で乗り越えて。頑張ってきたんだ。 ここが・・おれたちの居場所だと思うんです。 おれには絵梨沙が必要です。 もう一度・・二人でピアノを弾けるときが来るまで・・・。」
真尋は真剣そのものだった。
真理子は少し狼狽して
「あなたのそばにずっといることとピアニストの道は両方はできないわ。 このまま絵梨沙は・・・ピアニストの道から外れてしまうの・・?」
思わずそう言ってしまった・・。
真尋はひとつの決心を真理子に告げます・・・
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