「・・・絵梨沙・・・・」
ドアを開けた真尋は目の前にいる絵梨沙に驚いた。
絵梨沙はうつむいて立ちすくむだけだった。
「え、エリちゃん???」
驚いた志藤と南もやって来たので
「・・志藤さん・・・・南さんも・・・」
思いがけなかったことに絵梨沙は狼狽した。
「え、なに!来てくれたの!? なんだよ~~~、連絡くれたらおれ迎えに行ったのに!」
何も知らない真尋は大喜びだった。
すると後ろから真理子が顔を出した。
「こんにちわ。 久しぶりね、」
「絵梨沙ママ・・・・。 え? なに? 日本から来たの???」
思わぬ来客にまた驚いた。
「・・・休暇で。 絵梨沙と一緒に行って・・びっくりさせようかと思って、」
真理子は苦笑いをした。
そして後ろにいた南と志藤に目で合図をした。
二人は真尋の後ろで頷いた。
「ま、はいんなよ・・・って大人が5人も狭いなあ・・・」
真尋は言ったが、絵梨沙は足が動かなかった。
「絵梨沙?」
真尋が不審に思っていると、彼女の気持ちをいち早く察した志藤が
「エリちゃん。 おれらもう帰るし。 こっちにはいちおう仕事で来ているからね。 真尋のコンクールが終わるまではいるけど・・・。 ちょっとこいつがどんなトコに住んでんのか見たかっただけだから、」
ニッコリ微笑んでそう言った。
「そうそう早く帰れば。 あんたたちは、」
真尋はあからさまに二人にシッシッと追い払う仕草をした。
「しゃーないなあ・・邪魔者は退散するわ。」
南も笑って玄関に出た。
そしてそっと絵梨沙の背中を優しく触れた。
「じゃあ。 私も久しぶりにウイーンの町に出ようかしら。 志藤さんたちと。」
真理子も言った。
「わー、先生がいれば通訳に困らないやーん!」
南ははしゃいで彼女の腕を取った。
そして。
二人が残された。
「は~~、さわがし。 でも、ほんっと嬉しいよ。 忙しいのにこんなトコまで来てくれて、」
真尋は自然に絵梨沙の背中に触れた。
絵梨沙はその瞬間ビクっとして、身体が硬直してしまった。
「・・絵梨沙・・・?」
何だか彼女の様子がおかしいのにようやく気づいた。
「・・ご、ごめんなさい。 ・・・もう、またこんなに部屋が汚くなって・・・しょうがないわね、」
絵梨沙は無理やり笑顔を作って、散らかった部屋を片付け始めた。
絵梨沙にとっては思いがけず、志藤と南に再会してしまいましたが・・・・
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