私はホクトエンターテイメントとの正式な契約を済ませた。
父は仕事ですぐに帰ってしまったが
「夕飯。 どっかで食おうぜ、」
まだ6時だというのにもう彼はおなかが空いているようだった。
「ああ、うん・・。」
お兄さんは書類を大事にカバンにしまいながら返事をした。
「会社の経費で落ちるんだろ? すんげえとこで食おうぜ!」
「おまえはほんっとに頭が悪いくせに、そういう所だけは気が回るよな、」
さっきとは違ってただの兄弟になっているのが少し微笑ましかった。
「沢藤さんも一緒にどうですか?」
「え・・ええ。」
うなずくと
「気安く誘うなよ~。」
彼が横やりを入れた。
「カレシのおれに承諾取れよ、」
などと言い出して
「はあ???」
お兄さんも私も驚いた。
「えっ・・・そーなの???」
心から驚いているお兄さんは私と彼を見比べた。
「ちっ・・違います! この人おかしいんです! 私、別に彼女じゃないですっ!!!!」
絶叫してしまった。
「そこまで否定すんなよ~~~。 さびしいな、」
彼はいじけてそう言った。
「なんだよ・・びっくりさせんなよ・・・。 いくらなんでもおまえとこの沢藤さんが・・・。 ありえないじゃん、」
ありえない・・・
私はその言葉を頭で反芻してみた。
そうよ・・
ありえないわよ・・・。
結局、そのホテルの最上階のレストランに行った。
彼はジーンズでいつものようにヨレヨレのシャツで最初止められてしまったが、ここがホクトの系列のホテルであったので、何とか許してもらって個室に通された。
「だからさ・・ホテルにそんなカッコでくんなっつーの、」
「みんななんで見た目ばっかに拘るかね~~~。」
「おまえ、ほんっと成長してねーな。」
「真太郎も。 オヤジにこき使われて大変だな、」
「え? 別に・・・。 仕事も楽しいし、」
「東大行ってる上に仕事までしてさあ・・・。 どーせいつかは北都に入るわけだし、そんな慌てて。」
「少しでも早く会社になれておきたいんだ。 いろんな面ですごく勉強になる、」
二人はずっと話をしていたけど、お兄さんが気にして
「沢藤さんにも迷惑を掛けているでしょう。 こいつは。」
と、話しかけてくれた。
「えっ・・・。 ええっと・・・、はあ、」
否定をしなかったので
「迷惑~~? おれかけた?」
彼はずいっと身を乗り出した。
「ほんと。 いるだけで人に迷惑をかけるからな・・・。」
お兄さんの言葉に笑ってしまった。
確かにその通りだったから。
またも真尋の別の顔を見たような気がした絵梨沙は少しほほえましく・・・
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