紺野社長を説得するのに、5時間もかかってしまった。
仮契約の一歩手前までいっていたところを、高宮が完璧な資料を手に彼に歩み寄り。
そして説得し。
一気にこっちの仮契約にまでこぎつけた。
「高宮くん、ついたよ。」
「え・・」
帰りのタクシーの中で爆睡していたことに気付かなかった高宮は焦って起きた。
「・・疲れてるところ、ありがとう。 本当にきみのおかげだ。」
真太郎は笑顔で言った。
高宮のマンションに先に行ってくれたことを知って、
「すっ・・すみません! ウチは後でよかったんですが、」
焦りながら言った。
「いや。 今日、箱根から戻ってきて・・・またタイトな仕事だったし。 もう休んで。 本当にありがとう。」
「・・専務、」
「みんなに助けられて・・・ぼくは何とかやってる。 これからも・・・よろしくお願いします。」
年下で地位も下の自分にこんなに頭を下げて。
高宮は真太郎の純な人柄にホロっときてしまった。
「おかえりなさい、大丈夫?」
夏希はもう見た目にもドロドロに疲れていた高宮を見て、心配そうに言った。
「ん・・・。」
「ごはんは?」
「・・・んー・・いいや。 とりあえず風呂入って、ちょっと残った仕事だけ片付けて寝るから、」
本当はもうすぐにでもベッドに横になりたいが、それも許されない。
「明日は。 7時に起こして。 ちょっと早めに会社行ってやんなくちゃいけないことあるから、」
「・・うん、」
夏希は彼が脱いだ上着を手に頷いた。
高宮は自分の書斎部屋があり、夏希の部屋が彼女のスペースと寝室になっていた。
少しだけ仕事を片付けると言ったのに、寝室に戻ってこない彼を不審に思い、夏希は高宮の部屋に行く。
すると、部屋にあるソファでぐっすりと寝込んでいた。
「もー・・隆ちゃんってば。 いくら夏だからって・・・」
夏希は慌てて寝室から上掛けを持ってきた。
とっても気の毒で起こすこともできなかった。
大丈夫かなァ・・・。
このところゆっくり話をすることもできないほど、彼は忙しかった。
ん・・・・
高宮は夜中に目を覚ました。
あ~~~、ここで寝ちゃったんだ。
と、むっくりとおきあがる。
ふっと足元を見ると、夏希が布団を敷いてそこに寝ていた。
「夏希・・?」
彼女が自分を心配してくれて、ここに寝てくれたことがわかり
ふっと微笑んだ。
今が堪えどきだ。
おれは
きみと出会えて、人の優しさに触れて。
大阪から戻って社長秘書になったときから・・・・ずっとずっとこの中で頑張ろうって思うようになった。
志藤さんと一緒に
専務がいつの日か社長になるときに、そこに自分がいて
北都社長の時と同じようにあの人を盛り立てて、側にいて。
この北都グループの力になりたい。
まさか社長の身にこんなことが起こるだなんて思いもしなかったけど、こういう時こそ自分の力が会社と専務のためになればいいって・・・心からそう思う。
もうすぐ彼女と夫婦になって
いつだって側にいてくれる人がいるってことが
本当に幸せなことなんだ。
高宮は激務でクタクタでした。真太郎は部下が身を削っているのを目の当たりにして自分の未熟さをさらに感じてしまいます・・・。
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