Lookin' for happiness(17) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「遅い! やっぱり迎えに行けばよかった・・」



真太郎は珍しくイライラしていた。



「今朝、到着する便でしたよね、」

志藤も時計を見た。



もう夕方6時だった。


「ほんっといい加減すぎる! 時間にルーズだし・・。」

ため息をついた。




この日は真尋が再び日本にやってくるはずになっていた。

コンチェルトの仕上がりを見るのと、ミニコンサートの楽曲がきちんと入っているかの確認のためであった。




もうクリスマスまであと3日という押し迫った時間になっていて、年末の休暇に日本で過ごすことになっていた。




そしてさらに待つこと2時間。



「う~~~。 づがれだ・・」



真尋が倒れるように会社にやってきた。


「何やってんだ! 電話の一本もよこさないで!」

真太郎が駆け寄ってきた。



「ひ、飛行機・・1本乗り遅れちゃって・・」


「はあ?」

真尋は来客用のソファにどかっと座った後、ぐったりともたれかかった。


「もう学校の課題もパンパンで。 試験もギリギリまであったし。 それでなくてもおれ、留年しそうなのに! 補講も受けてたら乗り遅れちゃって・・」




真太郎も志藤も

一気に不安でいっぱいになった。




こんないっぱいいっぱいで

きちんとやってきているんだろうか。




二人は同じことを考えた。




「とにかく。 時間ないから。 これから沢藤先生の大学まで行くぞ、」

真太郎は真尋の腕を引っ張った。


「え~~~? これから? ちょっと休ませて~~~。」



泣きが入ったが

そんなことは言っていられなかった。




真理子も交えて

ピアノを囲む。




「はあああああ、」

真尋は全く乗り気がなかったが、このプレッシャーに仕方なくピアノの蓋を開けた。




ミニコンサートで弾く予定の楽曲

ベートーヴェンのピアノソナタ17番テンペスト。




ゆっくりと弾き始めたが、一瞬にして空気が変わった。



真尋の目は真剣そのもので

口を真一文字に結んだ。




これは

すごい・・・。




志藤は思わず体中に力が入ってしまった。



あっという間に

心をさらっていくような

圧倒的な存在感。




あっという間に

第3楽章まで一気に弾ききった。




真尋はもうその瞬間からぐったりして


「・・とりあえず。 もう、いいかな?」

情けない顔して言った。


しかし

真理子は非情にも


「じゃあ。 メンデルスゾーンの『ロンド・カプリチオーソ』、」

と笑顔で言った。


真尋はギクっとして


「なんか・・腹痛くなってきた・・」

と顔を逸らし始めた。




真太郎は



「ウソつくな!」



と一喝した。



「おまえは都合が悪くなるとすぐに腹が痛いとか言い出すんだ!」


「う・・」



真尋はバツが悪そうにジロっと真太郎を睨んだ。



「ったく! だからトーダイはキライなんだよっ!」



わけのわからない文句を言った。




そして仕方なく

また鍵盤の上に手を置いた。



またもトラブルメーカーの真尋がやって来て・・・


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