First breath(19) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

真尋はゆうこが持ってきた紅茶にミルクをいれて、頬づえをつきながらぐるぐるとかき回していた。



「・・・率直に話す。 真尋、ウチと契約をしてくれ。」



会議室の一角で向かい合った真太郎は真尋にそう切り出した。


真尋は視線をゆっくりと兄に向けて、



「・・あ?」



間の抜けた返事をした。


「だから。 ピアニスト北都真尋として・・・。 ホクトエンターテイメントに所属して欲しい。」

真太郎は真剣なまなざしでそう言った。




しかし




「え、なにソレ・・・」




真尋は眉間に皺を寄せて、ものすごくものすごく

嫌そうな顔をした。


「実は・・・北都でオーケストラを作りたいんだ。」

真太郎はその話も切り出した。


「オケ?」


「そう。 今、案を練っているところで。 先に契約した沢藤さんや・・おまえにも今考えている『クラシック部門』の部署に所属してもらいたい。」



「・・・・・・」



真尋は無言でまだカップの中の紅茶をぐるぐると回していた。




ゆうこは

真尋の反応にハラハラした。



「音楽を、真剣にやりたいと思う。  社長も前向きに考えてくれていて・・・」


真太郎が熱を込めて話していると、いきなり




「やだ。」




真尋は紅茶に口をつけた後、ひとこと

そう言った。



「え・・・」



ゆうこも真太郎も同時に声を上げた。




「やだ。」



真尋は駄々をこねるコドモのように再びそう言った。




「やだって・・・。 どうして、」

真太郎は少し動揺しつつ言った。


「別に。 プロダクションなんかなくてもピアノは弾けるじゃん。」


「今はまだ学生だからそれでもいいけど。 おまえ卒業したらどうするつもりなんだ? 仕事するにはマネジメントも必要で・・・」


「おれは絵梨沙みたいにコンクールの看板もないし。 その辺の小さいバーでピアノを弾いて生きてってもいいって思ってる。」


「真尋・・・」



「それに。 もし・・・契約するとしても、ホクトとは、しない。」



ものすごくギラついた目で真太郎を睨みつけるように言った。




「ど・・どうしてですか?」

ゆうこは思わず声を発した。



「なんでさあ。 オヤジや真太郎とは全く別の道を行ってたのに・・・またこの人たちに使われなきゃいけないの? わけわかんネ~~~。」



真尋は鼻で笑った。




「なんでおれがいつまでも真太郎の『下』にならないといけないの? そんなの絶対ヤだかんな!!」



真尋はそう言い放つと、リュックをひっつかんでズカズカと部屋を出て行く。



「真尋!」



真太郎が止めるが、彼の足は止まらなかった。



「真太郎さん、」

ゆうこは心配そうに後ろから声をかけた。





それでも

真太郎は落ち着いていた。


「・・・まあ。 こんな答えが返ってくるんじゃないかって・・・予測はしてたけど、」

と苦笑いをした。


「ど、どーして・・あんなことを言うんでしょう、」



「真尋はね。 北都の名前を捨てるために、ピアノをやろうって決心したんだ。」



真太郎は静かにそう言った。



「え・・・」




「野球でも、大学から推薦きてたけど。 野球はもう無理だからいいって。 日本にもいたくないから、ピアノで留学したいって・・言い出して。」

真太郎は再び腰掛けてゆうこに語りだす。



「ぼくは子供のころ身体が弱くて。 未熟児で生まれてから、ずっとオフクロは心配しっぱなしでしたから。 オヤジは仕事一筋で、オフクロはぼくの世話をかかりきりでするために仕事を辞めたってくらいで。 正直ね、真尋と真緒はほったらかしで育てられたから。 何でも好きなことやってこれたけど、親に期待されてないってあいつなりに思ったんじゃないかなあって。 いちおうね、ウイーンに行くのを決めるまではあいつも悩んだようです。 だけど、ピアノででっかくなってやるって・・・北都の息子じゃなく、北都真尋として生きていくって、あいつなりに決心したんでしょう。」

真太郎は少し寂しそうにふっと笑った。



「でも。 諦めるわけにはいきません。 真尋は・・絶対にウチで獲る・・・」




そして

厳しい表情でそう言った。




思いもかけない真尋の反応に暗雲立ち込めますが・・・

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