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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「斯波・・」




志藤は

何事にもクールで

取り乱す姿も今まで一度も見たことがなかった

彼のこの姿に

驚いた。



「ずっと・・ここにいたいって・・言ったのに!」



志藤は昨日彼女と駅で別れたときのことをふと思い出した。



『みなさんと一緒に仕事ができて、良かった・・。 初めて自分として存在できる場所だったんじゃないかって、』



あの時の

見たこともないような

柔らかい彼女の表情・・・

そして

自分の秘書になる話を断ったことも。



そうか・・・



志藤はタバコを手にしたまま、固まってしまった。



「あいつ・・みんなに黙ってここからいなくなるつもりやったんやな、」



「え・・」

斯波は顔を上げた。



「黙って・・いなくなろうって・・。 覚悟してたんや・・」



あの時

秘書になることを断ってきた時。

なんで

理由を聞かなかったんやろ。

ひょっとして

おれがその理由を深く聞いてくるのを待っていたかもしれないのに!



志藤は

どうしようもない後悔の気持ちでいっぱいになった。



何も聞かなかったから。

彼女の思い悩む気持ちを汲み取ることができなかった・・。



「志藤さん・・」

斯波は志藤が狼狽する様子を怪訝な表情でうかがった。



「・・あいつのSOSを・・わかってやれへんかった・・」



「え・・」



「きっと! 何かを聞いて欲しかったはずやのに!」



タバコの箱を

ぎゅっと握りつぶしてしまった。




「秘書を・・断った・・?」

斯波はその話を初めて聞いた。


「その理由を、おれは聞かなかった。 なにかあったはずなのに。 あんまり無理を言ってはいけないって、勝手に引いてしまって、」


「いったい・・何が、」


「たぶん十和田会長がらみや。 それは確かやと思う、」



今までのいきさつを考えると斯波もそう思えた。

志藤は退職願に添えられていたやはり短い手紙を彼に見せた。




『突然のご無礼をお許し下さい。私は本日付で退職する決心をいたしました。 私のためにご迷惑をおかけしてしまって本当に申し訳ありませんでした。 今までこんなに自分のことを信頼してもらったこともなく、涙が出るほど嬉しかったです。 これ以上本部長や事業部に迷惑をかけるわけにはいきません。 お世話になりました。 みなさんにもお詫びをしたいのですが、本部長からもうすべてを話して説明してください。 さようなら。 栗栖萌香』



「ようみると、この手紙・・・切手貼ってへんやん。 きっと直接会社の郵便受けに入れにきたんや、」



『・・幸せ・・。 幸せって・・ほんまにあったんや、』



ゆうべ

抱きしめた彼女が

そう言った。



最後って

思ったから・・

おれに抱かれた?



まだ今になっても彼女の身体の感触が

生々しく残っているのに・・・



「あの男が・・無理やり連れて行ったんです! きっと・・また彼女を脅して、」

斯波はその思いが十和田に向かい

怒りが沸いてくる。



「事業部に迷惑をかけられないって書いてあるということは。 なんか・・あったんやろな。 会社を辞めざるを得ない何かが。」

志藤は冷静に言った。




「おれのこと・・・好きだって言ってくれたのに・・・、なんで、」



斯波はまた

感情が昂ぶって

震える声で言った。




志藤の後悔も募るばかりで・・・(ノ_・。)

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