「怖くって寝れないから!」
美咲は勝手に布団にもぐりこんできた。
「って、なんでわざわざ狭い布団に入ってくんだよっ!」
「だって、もう二度と寝室に入らないでって・・ゆっちゃったし、」
バツが悪そうに言う彼女がおかしくてぷっと吹き出した。
「今日だけ!」
まるで子供だなあ。
たまに
こーやって
すっげえ
かわいいって思えるときもある。
八神は一緒に布団に入って美咲を抱きしめた。
「やっぱり・・一緒に寝たい・・」
美咲はくぐもるような声で言った。
「え~?」
「もうあたしの足、縛ってもいいから!」
何を言い出すんだ、コイツは・・。
八神はおかしさがこみ上げてくる。
「それ、違うプレイなんじゃないの?」
「そうじゃなくって! 手錠もしてもいいから!」
美咲は大本気だったので逆におかしさが増す。
「手錠・・」
大ウケしてしまった。
「わかったよ。 こっち狭いから。 向こうで寝よう、」
八神は笑ってそう言った。
二人は寝室に移動した。
「この前はいきなり顔面に来たからなあ。 鼻血出るかと思った、」
「なんでこの年になっても寝相悪いんだろ・・」
「子供並みだよな、」
「慎吾だってこんなカミナリなのにグウグウ寝れるじゃない・・。 ちょっとくらい我慢してよ、」
美咲は口を尖らせた。
「小学校の時さあ、みんなで遊園地に行って。 お化け屋敷入ろうって言ったときも。 おまえ、大変だったもんなァ、」
八神は思い出して笑った。
「も、ぜんっぜん覚えてない。 慎吾につかまって目えつぶって歩いてたから。」
キャーキャー騒ぐからさあ・・。 んで、しまいにゃ、転んじゃって。 おれまで一緒に転んじゃってさあ。 オバケの人に助けられたんだよな、」
「え? そーだっけ?」
「そうだよ・・。 ほんっと、それ考えるとよく一人暮らしなんかできたよなあ、」
「夜帰るのもちょっと怖くって・・。 誰もいないのわかってても、『ただいまァ!』って大きな声出したりして。 風の強い日なんかベランダでガタガタ音がするだけで、一晩中眠れなかったこともあったし、」
美咲は八神に抱きつくようにして言った。
「でも・・。 もう一人じゃないんだァって・・。 いつも帰ると慎吾がいるから・・」
「ん・・」
八神はそんな美咲の頬にそっとキスをした。
こうして
あっという間にまた仲直りをして。
「ねえ・・」
彼女の身体をまさぐりながら耳元で囁く。
「え・・?」
「・・やっぱ、避妊、したほうがいいの?」
「え? なに、いきなり・・」
「だってさあ、もうすぐ結婚すんだし。 美咲も子供欲しいって言ってたじゃん、」
「まあ、そりゃ・・そーだけど。 でも、結婚式まであと2ヶ月もあるし~。 いろいろ忙しいから・・。 やっぱ、もうちょっと・・」
と言われて、小さなため息をついて、
「なんでさあ・・。 キモチいいことと、繁殖行動って一緒なんだと思う?」
すごく
すごく真面目な顔をして言われたので
美咲は口に手を当てて思いっきり吹き出してしまった。
「も、やだァ!慎吾ってば・・」
彼の胸を叩いて、大笑いしてしまった。
「え、なんで? そう思わない?」
八神はまだ真面目だった。
まるで
子供のギモンのように。
こんなことすぐ口にするし。
「も~、慎吾ってほんっとカワイイ!!」
美咲は母性本能を思いっきりくすぐられて、八神の頭を自分の胸に抱きしめた。
なんだかんだ言っても
楽しい
新婚生活(?)
なのだった。
の、はずだった・・。
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