「あ? 真尋さんですか? え? なに? もう帰ってきたんですか? ・・よく聞こえない・・。 成田? はい、はい・・。 は? ハンバーグ?」
八神は真尋からの電話がよく聞き取れず、大声になってしまった。
『ハンバーグ』の言葉を隣の夏希は聞き逃さなかった。
「え~? 今日、おれ忙しいんですけどぉ~。 も~。 わかりましたよ。 んじゃあ、7時ごろ伺います。 え? 美咲? ・・別にどっちでもいいですよ。 あいつ関係ないし。 ・・ハイハイ、わかったから。 じゃあ、」
無理やり電話を切る。
「真尋さんですかあ?」
夏希がにじり寄る。
「え? そーだけど。 1週間、絵梨沙さんのお父さんがいるNYに家族で行ってて。 今帰ってきたって。 んで、おれに家にハンバーグを作りに来いってうるさくて、」
と言って夏希の顔を見てハッとした。
「ハンバーグですかァ・・・」
もう
目の前にエサを出されて、『待て』をされてる犬か?
と突っ込みたくなった。
「あ、ヤバ。 よだれ・・」
慌てて口の周りを拭ったりして
「おまえ・・。 成人か?」
思わず聞いてしまった。
「あら、加瀬さん。久しぶり、」
「こんにちわ~。 ちょっとお手伝いに。 もうNYから帰ってきて疲れたでしょ~? ほんとあたしが夕飯の仕度をしますから絵梨沙さんは休んでてください。」
夏希は絵梨沙を無理やり座らせた。
「おまえが仕度をするわけじゃねーだろ??」
八神はキッチンで料理をしながらものすごく不満そうにそう言った。
「え~~? ちゃんと手伝ってるじゃないですかあ。 お皿を用意するとか!」
夏希は八神に言った。
「ったく! ほんっと、メイワクだっ!」
八神は行きがかり上、夏希をここに連れてくることになったことをものすごく後悔していた
『ハンバーグが食べたい』
それだけの理由で。
しかも人んちで・・。
その時、
「八神さん、美咲さんがいらっしゃいましたよ、」
絵梨沙が声をかけた。
「え? 美咲さんって。 彼女?」
夏希は八神を見た。
「真尋さんが呼べってゆーからさあ。 あ~、コゲそう・・。ヤバ!」
八神は料理に没頭してしまった。
「こんばんわ・・」
美咲が入ってきた。
「お~! 久しぶりじゃーん!」
真尋は美咲とハイタッチした。
「え? なんの会? よくわかんないけど、慎吾からここに来るようにって・・」
美咲は事情が飲み込めてなかった。
「八神のハンバーグを食べる会じゃん・・。 まあまあ、座って座って。」
真尋は美咲を座らせた。
そして、
「あ、こんばんわ・・」
夏希が遠慮がちに美咲に一礼する。
「ああ・・・。ええっと。 加瀬さん、だっけ?」
「はい! も~、八神さんのハンバーグ食べてみたくって! 無理やり来ちゃって、」
夏希は笑う。
「おい! 加瀬! 早く運べよ。おまえ、料理ひとっつもしてねーんだからさ、」
八神は夏希に言った。
「あ、は~い! あ~~~、いい匂いがしてきた~~。」
夏希はキッチンに飛んで行く。
絵梨沙はそんな夏希を見てクスっと笑い、
「加瀬さんってホントおもしろい子なの。 すっごく明るくて。 子供たちもすぐなついて、」
と美咲に言う。
「・・なんかね・・慎吾とおんなじ匂いがプンプンする子ですよね~~~。」
美咲はキッチンで戯れる二人を見て言った。
「ああ、似てる似てる! 加瀬と八神! あいつら、ほんっといいコンビってゆーかんじ、」
真尋は笑うが、絵梨沙は美咲を気にしてちょっと小突いた。
「え? あ~。 でも。 バカ二人って感じで。 そんだけだよ。」
真尋はさらに笑い飛ばした。
「え~~~! ほんっとおいし~~! レストランって感じですよ~!、コレ!」
夏希はハンバーグを頬張って大きな声で感動した。
「ああ、うるさい・・」
八神はメイワクそうに言った。
「店出せますって! ほんと! あ~、おうちでこんなハンバーグ食べられるなんて・・。 美咲さんは幸せですね~。」
夏希は夢中で食べた。
美咲はそんな夏希の様子をうかがうようにジーっと見てしまった。
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