Nobody else(6) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「あの~~~~。」


新年の忙しさも一段落し。

事業部もなんとなくのんびりとした雰囲気が漂っていた。



そんな中、夏希が新聞を読んでいた志藤の前にやって来た。


「あ?」

目だけ彼女にやると、


「ほんっと・・・・申し訳ないんですけど。 なんっか・・」

言いにくそうにしていると、突然後ろから



「あれ~~? この人が一番偉い人なの??」


いきなり

オバちゃんが登場した。


「は・・・?」


「ちょっとも~~。失礼だよ。 ほんっとにこの人が一番偉いんだよ??」

夏希はそのオバちゃんに言った。



「・・・どちらさま?」

志藤が怪訝な顔で言うと、


「あ、あの、」

夏希が説明しようとするとその人は一歩前に出て、



「夏希の母でございます。 ほんとうにこちらにはお世話になって、」

と頭を下げた。


「おっ・・・お母さん?」

志藤は驚いて立ち上がり、夏希を見た。


「すみません。 なんか会社の旅行でこっちに来てるみたいなんですけど。 自分だけ有給とってこっちに残ることになって。」

夏希は一応説明した。


「あ~、そうですか。 これはこれは、」

志藤は立ち上がった。



そこに、斯波と萌香が外出から戻ってきたので、

「あ! 斯波さん、栗栖さん!」


夏希は二人を呼んだ。


「え?」



「あのっ・・・母です!」

と、また母を紹介する。


「お母さん?」

二人も驚いた。



「もう夏希がお世話になりまして。 もっと早くご挨拶にと思っていたんですけど。」


「いいえ、いつも加瀬さんからお母さんが送ってくださった野菜をたくさん頂いて。 ありがとうございます、」

萌香もにこやかにお辞儀をしたが、斯波はいつものように無言で会釈をしただけだった。


「もう、夢見たいな家賃で部屋を貸していただけてるって夏希も喜んでいまして。 いつもお二人のお話をしてくれて。 ああ、そうそう・・」

母は思い出したように紙袋から菓子折りを取り出し、まず志藤に


「これからもよろしくお願いします! ほんっとバカな子ですけど、」

と丁寧にお辞儀をした。


「バカな子って・・・」


「今度本部長さんのお宅にも野菜をお送りします。 夏希、住所お聞きしておいて、」

すると夏希は小声で、


「本部長の家は子供が5人もいるんだよ。 たくさん送らなくちゃ!」

と母に言った。


「え! そうなの!? この人が!?」

小声でやり過ごしているつもりの二人だったが、



「丸聞こえなんですけど・・・」



志藤はため息をついた。



そんな彼に構わず今度は斯波たちにも同じ菓子折りを差し出し、

「今後ともよろしくお願いします、」

母は頭を下げたあと、はっとして


「ああ、奥さんにお渡ししておきますね、」

とその箱を萌香に手渡した。


夏希は焦って、


「バカ! 奥さんじゃないってば、」

また小声(?)で母を小突いた。


「え? アレ? 同棲中だったっけ??」


萌香は笑いながら、

「また・・聞こえてますって、」

と言った。



その調子で夏希の母は事業部全員分の菓子折りを手渡していた。


「タマちゃん、ウイーンだもんね。 もらっちゃおっか、」

南は笑った。


「みんなでお茶の時間にいただいちゃいましょう、」

八神も笑った。


「かわいそーですよ。 お宅に送ってあげますから・・」

夏希は口を尖らせた。


南は時計を見て

「もうお昼やん。 加瀬、お母さんを食事にお連れして、」

と夏希に言った。



「ああ、ハイ、ええっと・・・」

どうしようか迷っていると、スっと斯波が近づいて無言で夏希の手に何かを握らせた。



「・・??」



その手の中を見ると1万円札が小さく折りたたまれたものだった。



そのまま出て行った斯波の背中を見やる。

「は~~、キザ~。」

南は笑う。


「い、いいんでしょうか。 1万円も、」

戸惑う夏希に


「いいんだよ。 ホラ、あんだけカッコつけたんだからさ。 受け取ってやらないと、」

肩を叩いた。



昼休みを終えて、夏希一人戻ってきた。


「あれ、お母さんは?」

南が言うと、


「なんか六本木ヒルズに行きたいとか言って、勝手に行っちゃいましたよ。」

と笑う。



「元気なお母さんやな。 いつまでいるの?」


「明日の午後、帰るって言ってます。」


「じゃあ、今晩一緒に食事しようよ。 あたし予約しとく、」


「ありがとうございます!」



そう言った後、いつものようにデスクで黙々と仕事をする斯波に近づいて、


「あのっ・・・ありがとうございました! 母もすっごく喜んで!」

一礼した後、おつりを差し出した。


「え? こんなに残ったの??? いったい、何食ったの?」

と驚くくらいのおつりだった。


「ほんと田舎者なんで。 あんまり洒落たとこだと食べた気がしないんだそーです。 いいんです。 ああいう人なんで、」

夏希は笑顔で言った。



「そう・・」

ブスっとしてそのお金を財布に戻した。


「でも、斯波さんってすっごいいい人だねって。 あたしは大学2年の時に寮を出て一人暮らししてたけど、母にしたらほんっと毎日心配でどーしようもなかったんですって。 でも、ああいう人が隣にいてくれたら安心だって。」



ほんと。

こんなわけわからない娘を

一人で

東京になんかやって。



心配じゃないわけがない。



おれでさえ

もう心配でたまらないのに。



夏希の母が福島から上京してきました・・

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