Nobody else(1) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

早いなァ。

社会人になって

もうすぐ1年。



でも



すっごい

濃い~

1年だったなァ。



いきなり、頭をファイルでパカンと叩かれた。



「いっ・・・・!」



夏希はハッとして後ろを見た。



「ボーっとすんなよ、も~。」

八神だった。


「急に叩かないで下さい! 心の準備ってもんが必要なんですから!」

夏希の言い分に八神はぷっと吹き出した。


「おまえってほんと感覚が人と違うよな・・・」


「はあ?」


彼が笑っている意味がわからない。

きょとんとしている彼女がまたツボだった。



「あ、そーだ。 昨日、広告代理店のレックスに行ったんだけどさァ。 牧村さんがまたおまえも呼んで食事しましょうって、」


「え? 牧村さんが? でも! この前連れて行ってもらった豚しゃぶ専門のお店! 美味しかったですよね~。 牧村さんって、美味しいお店すっごくよく知ってて。 前にここに来た時のおみやげのチーズケーキもめちゃくちゃ美味しかったし!」


美味しいもの好きの夏希は申し訳ないが牧村の顔よりも豚しゃぶやチーズケーキが浮かんでしまった。




「え~、なんかもう食べたくなっちゃいました~。 八神さん、今日じゃダメですか?」

などと言い出し、


「アホか・・・あの人はいちおうレックスの部長格だよ? いっそがしいんだからさ・・・」


「そっかあ、」


ガッカリ。



肩を落とした。




しかし

偶然に予定外に事業部にレックスの牧村が仕事でやって来た。



「あ、牧村さーん!」

夏希は彼の姿を見て飛んできた。


「ああ、加瀬さん。 こんにちわ。」


「さっき八神さんと牧村さんの噂、してたんですよぉ。」


「どうせ食べ物がらみだろ?」

図星だったので、


「や・・・そんなことも、あるような、ないような・・」


「きみは正直だねえ・・・」

牧村はアハハと笑って、斯波と応接室に入って行ってしまった。




そして

彼が帰ろうとしたとき、



「あ、加瀬さん。」



夏希に声をかけた。



「あ、はい!」


「今日はもう終わりなの?」

時計は7時を指していた。


「はあ、そろそろ。」

腕時計を見て言った。


「じゃあ、ゴハンでも行く? ウチの会社の近所なんだけど美味い焼肉屋があるんだ、」



焼肉屋・・・・



夏希はそれを聴いただけでおなかがぐ~~っと鳴ってしまった。



それでなくても

月末近くなって、食費が底をつきはじめて貧しい食生活を送っていたのに。


「い、行きます!」

二つ返事で承知した。




そしてふっと気づいて、

「あ、今日は八神さんが仕事から直帰でいないんですが、」

夏希は牧村に言った。


「え? 八神くんはいいよ。 今日は加瀬さんと二人で行こう。」

なんでもないというふうに彼は言った。


「あ・・ハイ、」

夏希は特に深く考えずに頷いた。




「う~~、すっごいおいしいですっ!」

夏希はその焼肉屋に連れて行ってもらい、ニコニコだった。


「そう? よかった。 加瀬さんってほんと美味しそうに食べるから食べさせがいがあるね。」

牧村は頬杖をつきながらそんな彼女を嬉しそうに見ていた。



彼は年のころは40くらい。

だけど、おじさんという雰囲気は全くなくて。

見るからに

『クリエーター』

という匂いがプンプンするような人だった。


しかし

業界風をふかすわけでもなく。

穏やかで、新人の夏希にもいつも優しく接してくれた。



「加瀬さんは、いくつだっけ?」


「え? 23ですけど、」

もぐもぐと口を動かしながら言う。


「若いな~。 23かよ・・」

牧村は苦笑いをした。


「牧村さんはいくつなんですか? すっごく若く見えるけど、」


「おれ? 40。 オヤジだよ、オヤジ。」


「そんなことないですよ~。 ほんと若々しくって。 結婚してるんですか?」



「・・正確に言うと、したことはある。」

ニコっと笑った。



「あ~。 バツイチ、ですか、」

夏希の声のトーンが少し落ちた。


「まあね。 もう別れて5年くらいになるかなァ。 小学4年になる娘がいるんだけど、向こうがひきとってて。 たまに会うくらいだけどね。」


「お子さんがいらっしゃるんですかあ・・・」


「一緒になるときはねえ。 すっごい燃えてたのになあって思うよ。 向こうの両親に反対されてね。 一人娘で大店のコだったから。 ほんっと駆け落ち同然で一緒になったのに。」

牧村はビールをグイっと飲む。


「離婚の原因も正直、ハッキリとわかんないってゆーか。 おれがすっごく忙しくなってあんまり家に帰れなくなってから、ちょっとずつすれ違ってって・・・みたいな。 ある日、彼女から離婚届をつきつけられて、『あたし、もう耐えられない』って言われた。」


「そう、だったんですかあ・・・・」

夏希は肉をひっくり返す手を止めた。



「ま、でもね。 愛情ってそんなもんなのかなあって思ったりする。 四六時中一緒にいないと持続できなかったりするもんってあるし。 最初は許せていたこともね、だんだん許せなくなってくるんだって。 些細なことだよ。 歯の磨き方だったり、ゴハンの食べ方だったり。 まあ離婚してひとつだけわかったことはね、結婚って相手が好きだから一緒になるんじゃないんだってこと。」



「え?」



「相手を・・許せる気持ちだよ。 お互いに許しあえる気持ち。」



牧村はにっこり笑った。



そして夏希はレックスの牧村に誘われて焼肉へ行きますが・・

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