Don't miss the eyes(19) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

志藤は少しあっけにとられたあと、また笑顔を見せて、



「ウソっぽいけど、ほんまみたいやで。」

とタバコを取り出した。



「水谷さんさあ、高宮のことが好きなの?」



平然とそう聞かれて、



「えっ・・」



理沙はぱあっと赤くなってしまった。



もうそれだけで

彼女の気持ちが丸わかりだった。



「そっかあ。 あいつ仕事もできるし、アメリカ帰りやし、顔もいいし、背も高いし、血統もいいしね、」

指を折りながらそう言った。


「そ、そんな! 私はもう全然、そういうことなんか・・・・」

理沙はせめてもの否定をした。



「ただひとつ。 あいつの"汚点"があるねん、」



「え・・」



「ああいうのが好きやっていう、"変態"なトコ。」



おかしそうに笑った。



「変態・・??」



理沙は突飛な言葉が出てきて声が裏返りそうになった。



「変態やろ。 水谷さんみたいなカワイイ女の子がそばにいるのに。 あんな、異星人みたいな女が好きやなんて。」



なんと答えていいかわからない。



「おれもあんな女、初めて見たし。」


志藤はふうっと煙を吐いた。



「いちおう、いろんな女の子とつきあってきたけど。 初めて会う種類の女っていうか。 ていうか、人間としても初めてって言うか。 気が遠くなるほどアホやけど、あんなに素直な人間にも会ったことない。」

理沙を見て、ニコーっと笑った。



「素直・・・」



たしかに。

本当に子供みたいに

気持ちがストレートな人みたいだった。



「たぶん。 高宮も初めて会ったタイプの女やったと思うで。 あいつもなあ、いろいろ捻くれて育ってきてるみたいやから。 加瀬と出会って、きっともう・・洗濯機で心をガラガラと洗われる気持ちやったんやろなあ。 恋愛って理屈やないやん。 周りから見ると、『なんで?』って思えることも。 本人にとってはアリなんやろなって。 ま、おれやったら? 加瀬とはちょっとつきあえないかなあって思うけど。 ま、娘くらいの気持ち?」

志藤はふっと笑った。



「でも。 そんな加瀬が、高宮にとってはかわいくってしょうがないんやと思うけど。」



最後にポツリと彼が言った言葉に

理沙の心はちくんと少し痛んだ。



「水谷さんならさあ、もうぜんっぜんもっといい男がおるやんて。 あんな変態男やなくても、」

と思ったら軽く言われて、


「そ、そんな・・・」

顔をひきつらせた。



「って、言われるのもウザいんだよな。 ほっとけって?」

志藤は勝手に言って勝手に笑っていた。





「そして、あたしはどんなリアクションをすればいいのでしょう・・・」

夏希は理沙に対してどうしていいのか本当にわからなかった。


「え、別になんもしなくてもええやん。 優しくしたりするとな、嫌味になるし。」

南はパソコンのキーボードを叩きながら言う。


「嫌味って、」


「あんたは勝者やで? 敗者を慰めるなんて神経逆なでする~。」

彼女の言う意味がよく理解できなかった。



「あたし? 勝ったんですか? 何に?」

そんな鈍い夏希に


「も~~。 あの子、高宮のことが好きやったんやろ? んで、一生懸命アプローチをしたけど、高宮はあんたを選んでつきあうことになったんやん。 失恋したんやんか。」

なんでこんなこと説明しないとわかんないんだ、と少しイラついた。



「あ・・そ、うなんだ・・」

夏希は改めてそれを実感した。




理沙は翌日も東京本社にやって来た。

芦田と打ち合わせをした後、もう12時を回っていたので、お昼をどうしようかと考えていた。



コンビニで何か買って来よう・・。



と思い廊下に出ると、夏希とバッタリ会ってしまった。



「あ・・・」



夏希は目をぱちくりして



そして

また固まった。


理沙がちょこっと会釈をすると、夏希は手に持っていた紙袋をサっと彼女に差し出した。



「は・・・?」



無理やり無言で押し付けられたその袋はほんのり温かかった。



そして

そこから、タイヤキが顔を覗かせていた。



「タイヤキ・・・?」



理沙が不思議そうな顔をすると、



「こっ、ここのタイヤキ! 最高なんです! 皮はもちろんアンコが・・もう! 絶妙な甘さで! 23年の人生一、美味しいタイヤキです!」

夏希は必死にタイヤキの説明をした。



タイヤキ・・・・



なぜ

タイヤキ・・。



理沙はぐるぐると思いを巡らせた。



そして、しばらくしてこれを彼女がくれたのだ、ということにようやく気づき、


「い、いいんですか・・?」

上目遣いに夏希を見た。


「ど、どうぞ!」


「3つも入ってるけど、」


「よかったら、どうぞ。」

目が必死だった。




理沙はだんだんとこの状況がおかしくなって、クスっと笑いながら

その袋から1コタイヤキを取り出して、



「おおきに、ありがとう。 でも3つはちょっと多いから。 私は1コ頂きます。」

とそれを手にして後は夏希に袋を返した。


「え! 1コでいいんですか?? あたし、食後のデザートにって5個にしようか迷ったんですけど! やっぱ多いかなあって4個にしようかと思ったけど、数が悪いし・・んじゃ3個で我慢しよっかって・・」

本気で言っている彼女に、


「5個も??」

理沙は驚いた。


「だ、ダメですかね・・・」


「いえ・・ダメではないと思うけど。」




ほんっと

変わった人だ。



理沙はその温かいタイヤキを手にしてふっと笑った。



「あ! コレ、休憩室で食べませんか? ここじゃあ、なんなんで、」

夏希はすぐそこの休憩室を指差した。


「ここじゃ・・ちょっと食べられないですね、」

理沙はにっこり笑った。




ほんっと

カワイイ人だなあ・・・

背も小さくて、手もちっちゃくて。

ちょっとタレ目で鼻にかかったような甘い声で。



そうだよね

タイヤキ5個なんて絶対に食べそうもない!

しかも食後に!




休憩室で二人で向き合ってタイヤキを食べながら夏希はつくづく理沙を見てそんな風に思ってしまった。



そのタイヤキが夏希の人柄を全て表しているようで・・

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