Pure Love(16) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

なんとなく

わかってきた気がする。



「あ、おはようございます。」

翌朝、夏希は出かけようとすると、同時にドアから出てきた萌香と偶然に会った。


「あ、・・おはよう。」

萌香は彼女の元気のメーターを何となく探ってしまった。


「斯波さんは今日はどうしたんですか?」


「横浜に直行だから・・・。」


「そーですか。 外出が多くてホント大変ですね。」

彼女はいつもと同じだった。




エレベーターに乗り込んだ時、


「あ・・加瀬さん・・・。 あの、」

高宮のことを尋ねてみようと思った時、



「昨日の夜、高宮さんから電話が来ました・・・・」



それを見透かしたわけではないのだろうが、夏希の方からそう言ってきた。



「電話?」



「はい。 すっごい泣いてしまいました・・・」



夏希は恥ずかしそうに頭をかく。



「図々しい気がして。 昨日は平静を装っていましたけど。 なんで黙って行っちゃったんですか!?ってすっごく言いたかった。 だけど、あたしは高宮さんにとってそんな存在じゃないって。 思っちゃって。 自分で・・・踏み込めなかったくせに。 高宮さんがあたしのことを好きだって言ってくれたことも、正面から受け入れられなくて。 それをわざと考えないようにしてたのに。 あたしなんかが高宮さんに相応しいなんて到底思えなかったし。 そのくせ考えてることは・・・彼女気取りじゃないですか。」



落ち着いた様子で素直に話す彼女の横顔を見た。



「仕事、がんばってねって・・そう言われて。 あ~、あたし・・・高宮さんのこと好きなんだって。 初めて認められたというか。」



ようやくその言葉を口にした彼女に、



「・・今頃気づいたの?」



萌香はふっと笑った。



え・・・・」



「私は前から気づいてた。 加瀬さんが高宮さんのことを好きになっちゃったんだなあってこと。」



「栗栖さん・・・」



「半年の間、離れているのはさびしいけど。 彼が大阪に行ってしまったことであなたはようやく彼への気持ちに気づいたのかもしれない。 そう思えば・・これも意味があることなんじゃないかしら。」




『意味があること』



あたしたちに



『これから』


あるんだろうか。



夏希はぼんやりとそう思った。




「だから・・・がんばろーって。 まだまだ仕事だってきちんとひとりでできないし。 もっと張り切って、自分のやるべきことをやろうって。」

夏希はいつものひまわりのような笑顔を見せた。


「うん。」

萌香は優しく彼女を見つめた。





またいつもと同じ毎日が始まる。

夏希は少しだけ秋の気配になってきた空を見上げた。




9月に入り、みんなも忙しくなって外出が多くなる。

夏希は電話番を兼ねてデスクワークが多かったので、一人で事業部で留守番ばかりだった。




あ~、なんかたいやき食べたくなっちゃったな~。

どうして、秋になるとあったかいものがいきなり食べたくなるんだろう・・・・。



今、お昼を食べてきたばかりなのに、夏希はたいやきのことを考えてしまった。



誰もいないはずの部署に戻った時、



え?



斯波のデスクにでっかい男が座っている。



ソフトモヒカンに・・サングラス。

黒いTシャツに迷彩柄のパンツ・・・。

しかも足をデスクの上に乗っけて座り、ヘッドホンで音楽を聴いているのか、小刻みに体が動いていた。



誰っ??

思いっきり不審人物!



夏希は部屋に入れなかった。



だ、

誰か呼んできた方がいいかな・・・。



オロオロしていると、南が外出から戻り廊下を歩いてきたので、



「み、南さん! なんか変な人がいるんですっ!」

慌てて駆け寄った。


「変な人???」


「怪しすぎる人なんですよっ!」



南は早足で部署に入る。

そして



「・・あれ?」

その『怪しすぎる男』を覗き込む。



彼も彼女に気づいて、サングラスを外し立ち上がった。


「なんや、帰ってきてたんか・・・」

南は落ち着いた様子で言った。


「なにココ・・・誰もいないじゃん。 無用心だなあ・・・・」



なに

この巨人は・・・・



夏希はまだ呆然としていると、


「あ、加瀬。 コレ、いちおうウチの看板ピアニストの北都マサヒロ。 ウイーンから戻ってきたみたい。」

と紹介された。



「は・・・・」



172cmの自分が見上げてしまうこんなゴツイ男が・・・

ピアニスト?



「だれ?」

真尋は夏希を指差した。


「ああ、4月から入ってきた新入社員の加瀬。 でかいやろ~?」


「ほんとだ、でけ~。」



・・・この人に言われたくない・・・・。



「前にも言ったけど、社長の次男で真太郎の弟。 だからあたしの義弟なんやけど。 むさっくるしい男やろ? 真太郎とぜんっぜん似てへんねん、」

南はアハハと笑った。



夏希もつられてひきつり笑いをしてしまった。



この人が

噂にしか出てこなかった

天才ピアニスト・北都マサヒロ・・・。



想像と

ぜんっぜん違うし・・・。






夏希は高宮への気持ちをしっかりと認識することができました。


そして、天才・変態ピアニスト・北都マサヒロの登場です!

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