Pure Love(5) | My sweet home ~恋のカタチ。

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そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「おはよう・・ございます、」



高宮は亡霊のように現れた。



「お・・・・地獄から生還してきたかのような男、」
志藤はハハっと笑った。


いつものように南が彼のデスクの脇で雑談をしていたので、

「・・昨日は・・お世話様でした、」

いちおう頭を下げた。


「ああ。 ノープロですから、んなもん。」
南は明るくそう言った。


「昨日、高宮んとこ見舞いに行ってん。 加瀬と、」


「加瀬と?」


「あんた、斯波ちゃんにチクったやろ? 加瀬が高宮んとこ泊まった話。」


「チクったって・・。ほんのちょっと言っただけやん、」


「も、加瀬、そのことで斯波ちゃんにめちゃくちゃ怒られたんやて。 ほんま、もう過保護ってゆーか。 なんか自分の部屋の隣貸すようになってから、父親気分になってるんちゃうのん? この前も、加瀬が友達と飲んじゃって遅くなったら、鍵を開ける音を聞いてたみたいで、次の日に『遅かったな、』って言われたみたい。」


「なんや、ソレは・・」
もう笑ってしまった。



盛り上がる二人に、
「・・・とりあえず、仕事します。」
高宮は自分の席に着く。


南が

「あたしが行ったらさあ、あからさまにやーな顔するんだよ、」

わざと高宮に聞こえるように言うと、


「してませんて、も~~、」



鬱陶しそうに振り向いた。
その彼の情けない顔に二人は顔を見合わせて笑ってしまった。






「え? 17日? 実家からは帰ってきてるんですけど、友達がお祝いをしてくれるってゆーんで、飲みに行こうかなあって、」


「そっか・・じゃあ、次の日は?」


「・・は、別に空いてますけど、」


「じゃあ、ごちそうするよ。 お誕生日とこの前のお礼もかねて、」



「お礼?」


「バナナがゆの、」

高宮はそう言って笑った。


「・・・そうとう恨んでますね。」

夏希は恨めしそうに彼を見た。


「恨んでなんかないよ、」


「じゃ、もう一回、食べます?」


「・・それは・・・・・・ま、おいといて。」


「おいとかないでください、も~、」



社内では周囲の目が気になるので、二人はもっぱら内線電話で会話をするようになった。


そっか

友達と、か。

高宮は少しガッカリして受話器を置いた。



でも

なんかプレゼントしたいよな・・・

いつもメシばっかだし。


彼女は普通の女の子と違うから、どういうものが嬉しいのか、皆目見当がつかないし。




残業中、休憩室でぼんやりと考えていた。



そこに、ふらっと南が入ってきた。



・・ということには気づかないほど、集中して考え事をしていた。



すると

彼女はいきなり彼の視界の中に飛び込んできた。


「わ・・なんですか、いきなり・・・」


「あたしが入ってきたことも、ぜーんぜん気づかないで。 何考えてるか当ててあげよっか?」



不気味に笑った。


「なんだよ、も~」

と、彼女を避けるように体を横に向けた。


「加瀬の誕生日のプレゼント、なにがいいかなーとか、」



ギクっとした。



「あ! 図星!」

思いっきり鼻の頭を指差され、半ばヤケになり、


「いいじゃないですか・・。 も、彼女、変わってるから何がいいかわかんないんですよ、」

認めてしまった。


「そやなあ・・・」


「・・指輪、とかいきなりすぎますかね?」

逆に身を乗り出してきたので、


「えっ! つきあってへんのにいきなり指輪??」


「声が大きい・・・」

高宮は焦って周囲を見回す。



「重いよ~。 それは重い! だいたい加瀬ってアクセしてるところ見たことないし。」


「なにが好きなんだろ、」


「・・新しいジャージとか、」

南は自分でもいい思いつきだと思った。


「はあ??」


「喜ぶ顔が目に浮かぶ~。」


「・・バカらし、」

高宮は鼻で笑ってそっぽを向いた。



「ウソウソ! そういえば、前にね。 萌ちゃんが加瀬から万華鏡をもらったって言うてた。」


「万華鏡?」


「うん、キラキラしたものが好きなんやって。 その万華鏡もみせてもらったけど、めっちゃ小さくてかわいいねん。」


「キラキラしたもの・・・」


「と言っても。 指輪は重いよ、」

南は念を押す。




「で、そのときに斯波ちゃんにもプレゼントしたんやけど、なんやったと思う?」

想像もつかなかった。



「ダンベル!」



しばしの沈黙の後、高宮はぷっと吹き出した。


「意味わかんなくて、さすがの斯波ちゃんもツボに入っちゃって、ひとりで部屋篭って笑ってたんやって、」



「・・ほんっと・・・。 かわってるよなあ・・」

高宮はおかしそうにいつまでも笑ってしまった。