You're my sunshine(9) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

夏希は怒られながらも懸命に頑張っていた。



「はいっ! クラシック事業本部ですっ!」


今日も張り切って電話を受けて。


「お、噛まなかった。」

南はこっそり笑う。


「えっ・・・っと・・・クラシック事業部ですよね??」

電話の向こうの声の主は不思議そうに言った。


「はい、そーですけど、」


「斯波さんは・・・」


「どちらさまですか?」

夏希がマニュアルどおりに相手の名を聞くと、



「あ・・・っと・・八神ですけど。」


「八神・・さん?」

すると、南が慌てて電話を取って、


「あ、八神? 久しぶり~。」

彼と話し始めた。


「・・今の、誰ですか?」

怪しんで聞かれ、


「ああ。 ほら新入社員の子。」


「あ、そっか。 デカい声でしたけど・・・」


「ついこの間まで女子大生やったんやで~」

南が彼の想像を煽るようなことを言うと、



「・・・かわいい、ですか?」



八神は気になる質問をしてみた。


「え? ・・うん! かわいいよ! めっちゃかわいい!」

南はことさら大きな声で言った。


「そうかあ・・かわいいのかあ。」

八神はかみ締めるように言う。



「で、どうなん? そっちは夜?」


「ええ。 もう、マサヒロさんに振り回されて大変・・・。 疲れて、」


「大変やな。 でも来月の中旬には戻れるんやろ? もちょっとやから頑張って。 今、斯波ちゃん出かけてるねん。 あとで用件メールしといて。」

南はそう言って電話を切った。




「八神さんって・・・その今、ウイーンに行ってるっていう人ですか?」

夏希は南に言った。


「うん。そう。 来月の半ばくらいに戻ってくる。」

八神の頭の中でこの新入女子社員の妄想が広がっているんじゃないかと想像するだけでおかしくてたまらなかった。


「あ、そうだ。 斯波さんが、あとでオケの打ち合わせに連れて行ってくれるって言うんです。」

夏希は嬉しそうに南に言う。


「え? ほんま?」


「なんか嬉しくって! でも、なんもしゃべるなって言われてるんですけど、」

と付け加えて、


「なに、ソレ~。」

南は吹き出した。


「何でもいーです。 嬉しいなって、」

無邪気に喜ぶ彼女が微笑ましかった。




とりあえず、その打ち合わせに連れて行ってもらったが。

行きの電車の中では、斯波は一言もしゃべらない。




ほんと

無口な人だなあ・・・・。




夏希はその空気を打ち破ろうと、



「さっき、出てきたところにいた犬、見ました? ほんっと間抜けな顔で、」


どうでもいい話を向けるが、無言・・・。


「斯波さんって・・本当に無口な方ですね・・」


思ったことをすぐ口にしてしまう彼女が思わず言うと、いきなりジロっと怖い顔で睨まれた。


「あ! すみません、すみません! ウソです!」

何がウソだかわからないのだが、恐怖のあまり我を忘れてしまった。




打ち合わせ中も約束どおり、夏希は一言もしゃべらずにじっと話を聞いていたが、大学の講義を聴いている気持ちになって眠くなってしまった。



みんなが言っていることが・・よくわからない・・。



「おい!」

寝ていることを見破られて、斯波は夏希を小突いた。


「はいっ! はいっ・・・なんでしょう?」

オーバーにリアクションをすると、


「ちゃんと話、聞いとけ!」

ものすごく怒られた。


「すみません・・・」



夏希の地獄のような時間は過ぎて、二人は駅までまたも無言で歩いていた。


すると



「もー! だからちゃんと打てっつただろ~!」

公園の脇を通り過ぎようとすると、少年たちが何やらもめている。


「あんなとこに突き刺さっちゃったじゃんか! どーすんだよお・・・」

金網の高いところに野球のボールが食い込んで取れなくなっているらしい。



「し、斯波さん!」

夏希はいきなり斯波に自分の荷物を手渡す。


「は?」


「ちょっと待っててください!」

彼女は一目散にその子供たちの輪の中に駆け出して行った。


「おい!」

斯波は彼女の突飛な行動に慌てた。




「よし! じゃあ、お姉ちゃんが取ってあげる! 待ってて!」

夏希は張り切って金網を上り始めた。


2m近く上がった所でボールに手が届き、

「よっ!」

金網から引っこ抜いた。


「落とすよ~、」

と下にいる少年のグローブを狙ってボールを落とした。


「お~~、すげー! ありがとう!」

子供たちは嬉しそうに礼を言った。


「どーいたしまして! よっ・・と!」

夏希は少しだけ降りてそこからぴょんと飛び降りた。



その瞬間。




「いっ・・・・・・・」




左足が曲がって、グキっ!と音をたてた。


「い・・・った~~~い!!」

夏希は座り込んで足首を押さえた。



「何やってんだよっ!」

斯波が駆け寄る。


「・・・い、いけると思ったのに・・。」

夏希は痛みで泣きそうだった。


「バカっ! せめて靴を脱いでから上れっつーの! おい、坊主、ちょっと荷物持ってろ。 タクシー呼んでくるから!」

斯波はそばにいた少年に荷物を持たせ、彼らが呆然としている中走り出した。




ほどなくしてタクシーを呼んできた斯波が、

「荷物、持って。」


夏希に荷物を持たせて、いきなり彼女をお姫様抱っこした。



「へっ!?」




予想外の彼の行動に夏希は驚いた。


「ちゃんとつかまってろつーのっ!」

また怖い顔で言われ、


「はい・・・」

夢中で彼の首につかまった。


「おだいじに~」

少年たちに見送られ。




お・・男の人に

お姫様抱っこなんて・・・。



夏希は"初めての経験"に胸がドキドキして収まらなかった。


ひじょうに間抜けなことで怪我をしてしまった夏希。 斯波にいきなり抱きかかえられて・・


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