「てるてる家族」 第135回
秋子（上野樹里）の研究室の先輩・森野（嘉島
典俊）の就職先が千吉博士の会社に決まった
と聞き、秋子は喜ぶ。冬子（石原さとみ）と和人
（錦戸亮）が考えたチョコレートデーニッシュと
ミートパイは春子（紺野まひる）や秋子にも好
評で、早速新製品として店先に並ぶ。冬子は、
パンを効率的に売るために、焼き上がり時刻
を掲示することを思いつく。夏を迎えるころ、パ
ンの売れ行きが伸びる一方でシャトーの客足
はすっかり落ちていた。
典俊）の就職先が千吉博士の会社に決まった
と聞き、秋子は喜ぶ。冬子（石原さとみ）と和人
（錦戸亮）が考えたチョコレートデーニッシュと
ミートパイは春子（紺野まひる）や秋子にも好
評で、早速新製品として店先に並ぶ。冬子は、
パンを効率的に売るために、焼き上がり時刻
を掲示することを思いつく。夏を迎えるころ、パ
ンの売れ行きが伸びる一方でシャトーの客足
はすっかり落ちていた。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
辰造） ほう！ ミートデニッシュか。…へえ～！
春男） けど新しいパンは作らへん
言うてたんとちゃうんか？
冬子） デーニッシュの生地は一緒やねんから、
いろいろ使わなもったいないやろ？
それは和ちゃんも分かってくれてん。
そら、お父ちゃんや工場長らが、長年大
事に作ってきた、クリームパンやメロン
パンも、大事に作っていくで。もっともっと
おいしい作れるように、修業もしていくつ
もりや。けどな…私はやっぱり、これから
はこのデーニッシュを、冬子ベーカリー
の売り物にしていきたいねん！
春男） …あっ！？ おいおい、冬子ベーカリー
て何勝手に名前変えてんねん。
冬子） あっ、そう聞こえた？
春男） いや、そう言うてたがな。
冬子） 人には言わんとこ思てたんやけど…。
春男） 自分ではそう思てるいう事か？
辰造） まあまあ、大将。
冬子） ええやんか。冬子ベーカリーは
まだ仮の名前なんやし。
春男） いや、仮て、変える気満々やんか。
冬子） けどな、シャトーは喫茶店の名前やろ？
パンを中心にしていくのやったら、やっぱ
りそれらしい名前の方がええ思わへん？
春男） それやったら岩田製パン店でええやろ。
もともとお父ちゃんがその名前で始めた
店や。
冬子） 堅いわ。
岩田製パン店なんてもう堅い堅い！
岩みたいなパン出てきそうやねんもん。
辰造） ハハハ…！
春男） 冬子ベーカリーなんて寒い寒い！
木枯らし吹きそや。おお～。
冬子） そんな名前、自分の娘に付けたん？
どうりで私の人生木枯らし
吹きっぱなしなんや。
春男） どこがや？
冬子） なかなかお母ちゃんの太陽も、
照らへんかった訳や。
春男・辰造） ハハハ…！
春男） 何うまい事言うてんのや、お前。
和人） 冬ちゃん！ 用意できた！
早よやろうや！
冬子） そやな。
生地があかんようになってしまうわ。
辰造） 和人。それがミートソースか？
和人） はい。冷蔵庫に入らへんかったから、
お店で冷やしてきました。
春男） 和人が作ったんか？
和人） はい。前に、冬ちゃんの手料理で
食べた事あるんで。
冬子） それ、どういう意味やの？
春男） …いや、まあまあ、まあまあ！
包むんやな？ これ。
和人） はい。
辰造） なるほど。パイの要領やな。
冬子） あとな…甘いのも考えてん。
春男） 甘いの？
冬子） これ包むねん！
辰造） ほう、チョコレート！
冬子） そう！ いけるて思わへん？
和人） ええかもな。
辰造） よろしな。
春男） ああ…。お父ちゃんも今、チョコレート
があったらなて思てたとこや。…いや、
冬子が言いだすちょっと前にもう、ひら
めいてた事や。あれ…？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
秋子） 森野先輩。
森野） 何や？
秋子） 就職、決まってはるんですよね？
森野） もう決まってるで。
秋子） どこですか？
森野） 池田食品や。
秋子） えっ、ほんまですか！？
森野） けど、即席麺だけを作る気はないねん。
それは、入る時の条件として…。
秋子） ほんまに、千吉博士んとこに
入りはるんですか？
森野） 千吉はか…
ああ！ 安西千吉社長の事？
何や知ってんの？
秋子） はい。よう知ってます！
うちの一家全員知ってます。
森野） そうか！
そんな有名やったんか、あの人！
なかなか面白い人やな。
僕に「是非入ってくれ。好きな事何
でも研究してええ」言わはんねん。
僕も、いろいろ話あったよって、
どないしよ思たんやけどな…。
秋子） 絶対いいですよ～！ 絶対その
会社に入りはったらええわ！
森野） そうか。岩田もそう思うか？
秋子） はい。私は、心の底から応援します。
その会社でする仕事の話、私に聞か
せて下さいね。
森野） 岩田…。
浪利） はい！ 秋ちゃんももうそろそろかな
思いまして。
秋子） うん。もう終わるよ。
浪利） 一緒に帰りましょ！
秋子） あっ…。
浪利） えっ？
秋子） 何ですか？ 先輩。
森野） いや…何もない。
秋子） あ…。先輩な、今度就職しはんねん。
浪利） えっ？ ああ～ ご卒業ですか？
おめでとうございます！
森野） ああ…。
秋子） それが、どこ就職しはると思う？
浪利） どこですか？
秋子） 聞いたら笑うよ。
浪利） どこなんですか？
秋子） 後で教えたげる！
そしたら先輩、お先失礼します。
浪利） 失礼します。
森野） また…。
秋子） ああ～早よ卒業しはれへんかな～。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（回想）
秋子） ああ～早よ卒業しはれへんかな～。
ああ～早よ卒業しはれへんかな～。
ああ～早よ卒業しはれへんかな～。
森野） はあ…。
（床にしゃがみ込む森野）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
冬子） 次はチョコレートデーニッシュや！
なっ？ ミートデーニッシュはどない？
春男） うまいわ。
冬子） ほんま？
辰造） ほんまや！ こらええわ！
冬子） よかった！
おいしい。こっちもおいしいわ。
辰造） けど、見た目がチョコレートは
甘そうに見えた方がええな。
どっちも見た目変わらへんさかい。
冬子） ほんまや。
春男） フフフ…。そういう時はやな、粉砂糖や。
粉砂糖ここにまぶしたったらええねん！
冬子） 粉砂糖か！ さすがお父ちゃんや！
春男） ヘヘヘ…。
和人） よし！ 出来た！
辰造） うん？
春男） うん？
冬子） 何？ 和ちゃん？
春男） 何や？
冬子） チョコレート？
和人） うん。こうやってな、溶かしたチョコを、
つけとくねん。チョコが冷めたら固まる
やん。じゃあ中に入ってるもんの目印
になるやろ。
冬子） 完璧や。さすが和ちゃんやわ！
春男） いや、お父ちゃんも今、粉砂糖より
チョコレートの方がええなて、直感的
にひらめいてたんや。ヘヘッ…。
辰造） だてに経験積んでへんな、和人！
冬子） さすが和ちゃんやわ。
絶対これは売れるで。フフッ！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
春子） うん…おいしい！
浪利） ほんまに！
秋子） 冬ちゃん、よう考えたなあ。
冬子） よっしゃ！ ほなこのチョコレート
デーニッシュとミートデーニッシュ、
早速売り出すで！
浪利・春子） うん！
秋子） けど置く場所あらへんのと違う？
冬子） えっ？
春子） そやなあ。ケースの中もいっぱい
やし、上にも置くとこあらへんわ。
冬子） え…。
秋子） 何か、減らさんとあかんのと違う？
冬子） それはしたないねん。
３人） う～ん…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
都子） 照子さん、
まだ夏ちゃんに付きっきりやの？
春男） ああ。全国飛び回ってるみたいやな。
寺井） レコード売るいうのも、
しんどいこっちゃな。
都子） けど今度のはよう売れてるんとちゃう？
いや、ラジオつけたらな、
一日、３回聴く事あるで。
春男） ほんまに？ ハハッ。何や、調子が
ええみたいやな。ハハハ！
寺井） ヒットすんのもええけど、このまま
照ちゃん帰ってきへんようなったら、
春男ちゃん寂しいな。
春男） いや、別に構へんねや、
都子） 今はな、家に娘３人おるさかいに、
そんな強がり言えるんやで！
寺井） けど…春子ちゃんは来年、結婚やろ？
都子） ああ…。
萩原） ♪街の灯りが～
寺井） あっ、来たよ。
萩原） ♪とてもきれいね ヨコハマ
何や！？ どないかしたか？
春男） …何でもあらへん。合うてる、合うてる。
萩原） なあなあなあ！ 最近のわし、
そない、きれいか？ なあ？ きれい？
都子） どないしたん？
あっ、また腐ったタコ食べたな。
萩原） いやいや…腐ったタコ？
何でやねん！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
春男） 何や？ それ。
冬子） フフッ！ 一日の焼き時間。朝はよう
売れるもんだけ焼いて、あとは時間
で順番に焼いてくねん。そしたら焼き
たてが欲しい人は、その時間に買い
に来られるやろ？
一同） はあ～！
秋子） いっぺんに焼かんで済む訳やな。
辰造） なるほど。考えたもんやな、冬ちゃん。
春子） これやったら「ミートデーニッシュない」
て怒られる事もないわ。
春男） 簡単な事やけど、よう思いついたなあ。
冬子） 簡単は余計や。
一同） ハハハ…！
冬子） 表にもな、おんなじもん置くねん。
とりあえず、明日からこの順番で焼いて、
お客さんから要望があれば、書き直して
いったらええねん。なあ、どない？
和人） 分かった。
冬子） うん。お父ちゃんも分かった？
春男） あっ、分かったわ。
冬子） よし！
春男） 「よし」て…。
一同） ハハハ…！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
こうして、私たちは次々に、
新しいパンを編み出していきました。
夏が近づく頃には、
デーニッシュ生地で、卵を包んだ、
卵デーニッシュをはじめ、
チーズデーニッシュ、コロッケデーニッシュ、
ソーセージデーニッシュなど、お惣菜の
デーニッシュが、大評判になっていました。
工場長も調理学校の先生を辞めて、
正式に、うちの工場に戻ってきてくれました。
辰造） チーズデーニッシュあがりました！
冬子） はい！ この次クリーム
デーニッシュお願い！
辰造） よっしゃ！
和人） ソーセージデーニッシュもいけんで。
冬子） 次はソーセージデーニッシュ！
そして、パンの種類が増える度、
売り場はどんどん窮屈になっていきました。
店のテーブルのほとんどは、
パンの置き場となり、シャトーが
落ち着いた喫茶店に戻るのは、
午後遅くなってからでした。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
冬子） なあ、お父ちゃん。
春男） 何や？
冬子） シャトーなんやけど…。
喫茶店やめて、パン屋にせえへん？
春男） …えっ？
冬子） 私な…ずっと考えてたんやけど、
その方がええような気ぃすんねん。
せっかく作ったパンやのに、きれい
に並べる場所がないなんて、寂しい
やんか。お茶飲みに来はる人より、
パン買いに来はる人の方が多いし。
それに、ほら、朝からパン焼いて、
夜まで営業すんの、もうしんどいわ。
春男） そやな…。
冬子） 秋ちゃんにも、弘子ねえちゃんにも、
いつまでも甘えてられへんし。家事や、
勉強の時間割いて、手伝うてくれてん
ねんもん。
春男） ほんまやな…。
冬子） なあ、和ちゃんは、どない思う？
和人） 俺も、その方がええとは思うけど。
シャトー、おかみさんが作りはった
店やろ？ 勝手に変えてもうたら
あかんのちゃうかな？
辰造） わし、あの店が開店した頃の、張り
切ってたおかみさん見てますさかい。
今でもあの店が、おかみさんそのもの
に見えます。ほんまにあの頃のおかみ
さんは…きれいやった。
春男） ほんまにあの頃はなあ…。
春男・辰造） きれやった。
冬子） 私もな、その頃の事は、何となく覚え
てるけど…。昔の思い出は、思い出や。
それより、パン屋としての未来、考えて
いく方が大事やと思う。あ…あの…とに
かく、あの…喫茶店の、夜の営業だけ
は、やめにしよう思うねんけど…ええ？
春男） まあ、そらしゃあないわな。お客さん
いてへんから、自然と閉める時間早よ
なってんねんし。
冬子） うん。
春男） あ…けど、喫茶店やめるいう話は、お
母ちゃんとちゃんと話し合うて決めなあ
かんで。創業者には、敬意を払わな。
冬子） うん。分かってる。
パン屋になって、はや一年。
私の夢は、どんどん膨らんでいくのでした。
辰造） ほう！ ミートデニッシュか。…へえ～！
春男） けど新しいパンは作らへん
言うてたんとちゃうんか？
冬子） デーニッシュの生地は一緒やねんから、
いろいろ使わなもったいないやろ？
それは和ちゃんも分かってくれてん。
そら、お父ちゃんや工場長らが、長年大
事に作ってきた、クリームパンやメロン
パンも、大事に作っていくで。もっともっと
おいしい作れるように、修業もしていくつ
もりや。けどな…私はやっぱり、これから
はこのデーニッシュを、冬子ベーカリー
の売り物にしていきたいねん！
春男） …あっ！？ おいおい、冬子ベーカリー
て何勝手に名前変えてんねん。
冬子） あっ、そう聞こえた？
春男） いや、そう言うてたがな。
冬子） 人には言わんとこ思てたんやけど…。
春男） 自分ではそう思てるいう事か？
辰造） まあまあ、大将。
冬子） ええやんか。冬子ベーカリーは
まだ仮の名前なんやし。
春男） いや、仮て、変える気満々やんか。
冬子） けどな、シャトーは喫茶店の名前やろ？
パンを中心にしていくのやったら、やっぱ
りそれらしい名前の方がええ思わへん？
春男） それやったら岩田製パン店でええやろ。
もともとお父ちゃんがその名前で始めた
店や。
冬子） 堅いわ。
岩田製パン店なんてもう堅い堅い！
岩みたいなパン出てきそうやねんもん。
辰造） ハハハ…！
春男） 冬子ベーカリーなんて寒い寒い！
木枯らし吹きそや。おお～。
冬子） そんな名前、自分の娘に付けたん？
どうりで私の人生木枯らし
吹きっぱなしなんや。
春男） どこがや？
冬子） なかなかお母ちゃんの太陽も、
照らへんかった訳や。
春男・辰造） ハハハ…！
春男） 何うまい事言うてんのや、お前。
和人） 冬ちゃん！ 用意できた！
早よやろうや！
冬子） そやな。
生地があかんようになってしまうわ。
辰造） 和人。それがミートソースか？
和人） はい。冷蔵庫に入らへんかったから、
お店で冷やしてきました。
春男） 和人が作ったんか？
和人） はい。前に、冬ちゃんの手料理で
食べた事あるんで。
冬子） それ、どういう意味やの？
春男） …いや、まあまあ、まあまあ！
包むんやな？ これ。
和人） はい。
辰造） なるほど。パイの要領やな。
冬子） あとな…甘いのも考えてん。
春男） 甘いの？
冬子） これ包むねん！
辰造） ほう、チョコレート！
冬子） そう！ いけるて思わへん？
和人） ええかもな。
辰造） よろしな。
春男） ああ…。お父ちゃんも今、チョコレート
があったらなて思てたとこや。…いや、
冬子が言いだすちょっと前にもう、ひら
めいてた事や。あれ…？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
秋子） 森野先輩。
森野） 何や？
秋子） 就職、決まってはるんですよね？
森野） もう決まってるで。
秋子） どこですか？
森野） 池田食品や。
秋子） えっ、ほんまですか！？
森野） けど、即席麺だけを作る気はないねん。
それは、入る時の条件として…。
秋子） ほんまに、千吉博士んとこに
入りはるんですか？
森野） 千吉はか…
ああ！ 安西千吉社長の事？
何や知ってんの？
秋子） はい。よう知ってます！
うちの一家全員知ってます。
森野） そうか！
そんな有名やったんか、あの人！
なかなか面白い人やな。
僕に「是非入ってくれ。好きな事何
でも研究してええ」言わはんねん。
僕も、いろいろ話あったよって、
どないしよ思たんやけどな…。
秋子） 絶対いいですよ～！ 絶対その
会社に入りはったらええわ！
森野） そうか。岩田もそう思うか？
秋子） はい。私は、心の底から応援します。
その会社でする仕事の話、私に聞か
せて下さいね。
森野） 岩田…。
秋子） 楽しみにしてます。頑張って下さい。
森野） …ありがとう。岩田も僕がいてへん
ようになっても、頑張んねんで。
秋子） はい。
森野） 岩田…あんな…。
浪利） 秋ちゃ～ん！
秋子） ああ、浪利君。もう終わったん？森野） …ありがとう。岩田も僕がいてへん
ようになっても、頑張んねんで。
秋子） はい。
森野） 岩田…あんな…。
浪利） 秋ちゃ～ん！
浪利） はい！ 秋ちゃんももうそろそろかな
思いまして。
秋子） うん。もう終わるよ。
浪利） 一緒に帰りましょ！
秋子） あっ…。
浪利） えっ？
秋子） 何ですか？ 先輩。
森野） いや…何もない。
秋子） あ…。先輩な、今度就職しはんねん。
浪利） えっ？ ああ～ ご卒業ですか？
おめでとうございます！
森野） ああ…。
秋子） それが、どこ就職しはると思う？
浪利） どこですか？
秋子） 聞いたら笑うよ。
浪利） どこなんですか？
秋子） 後で教えたげる！
そしたら先輩、お先失礼します。
浪利） 失礼します。
森野） また…。
秋子） ああ～早よ卒業しはれへんかな～。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（回想）
秋子） ああ～早よ卒業しはれへんかな～。
ああ～早よ卒業しはれへんかな～。
ああ～早よ卒業しはれへんかな～。
森野） はあ…。
（床にしゃがみ込む森野）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
冬子） 次はチョコレートデーニッシュや！
なっ？ ミートデーニッシュはどない？
春男） うまいわ。
冬子） ほんま？
辰造） ほんまや！ こらええわ！
冬子） よかった！
おいしい。こっちもおいしいわ。
辰造） けど、見た目がチョコレートは
甘そうに見えた方がええな。
どっちも見た目変わらへんさかい。
冬子） ほんまや。
春男） フフフ…。そういう時はやな、粉砂糖や。
粉砂糖ここにまぶしたったらええねん！
冬子） 粉砂糖か！ さすがお父ちゃんや！
春男） ヘヘヘ…。
和人） よし！ 出来た！
辰造） うん？
春男） うん？
冬子） 何？ 和ちゃん？
春男） 何や？
冬子） チョコレート？
和人） うん。こうやってな、溶かしたチョコを、
つけとくねん。チョコが冷めたら固まる
やん。じゃあ中に入ってるもんの目印
になるやろ。
冬子） 完璧や。さすが和ちゃんやわ！
春男） いや、お父ちゃんも今、粉砂糖より
チョコレートの方がええなて、直感的
にひらめいてたんや。ヘヘッ…。
辰造） だてに経験積んでへんな、和人！
冬子） さすが和ちゃんやわ。
絶対これは売れるで。フフッ！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
春子） うん…おいしい！
浪利） ほんまに！
秋子） 冬ちゃん、よう考えたなあ。
冬子） よっしゃ！ ほなこのチョコレート
デーニッシュとミートデーニッシュ、
早速売り出すで！
浪利・春子） うん！
秋子） けど置く場所あらへんのと違う？
冬子） えっ？
春子） そやなあ。ケースの中もいっぱい
やし、上にも置くとこあらへんわ。
冬子） え…。
秋子） 何か、減らさんとあかんのと違う？
冬子） それはしたないねん。
３人） う～ん…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
都子） 照子さん、
まだ夏ちゃんに付きっきりやの？
春男） ああ。全国飛び回ってるみたいやな。
寺井） レコード売るいうのも、
しんどいこっちゃな。
都子） けど今度のはよう売れてるんとちゃう？
いや、ラジオつけたらな、
一日、３回聴く事あるで。
春男） ほんまに？ ハハッ。何や、調子が
ええみたいやな。ハハハ！
寺井） ヒットすんのもええけど、このまま
照ちゃん帰ってきへんようなったら、
春男ちゃん寂しいな。
春男） いや、別に構へんねや、
都子） 今はな、家に娘３人おるさかいに、
そんな強がり言えるんやで！
寺井） けど…春子ちゃんは来年、結婚やろ？
都子） ああ…。
萩原） ♪街の灯りが～
寺井） あっ、来たよ。
萩原） ♪とてもきれいね ヨコハマ
何や！？ どないかしたか？
春男） …何でもあらへん。合うてる、合うてる。
萩原） なあなあなあ！ 最近のわし、
そない、きれいか？ なあ？ きれい？
都子） どないしたん？
あっ、また腐ったタコ食べたな。
萩原） いやいや…腐ったタコ？
何でやねん！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
春男） 何や？ それ。
冬子） フフッ！ 一日の焼き時間。朝はよう
売れるもんだけ焼いて、あとは時間
で順番に焼いてくねん。そしたら焼き
たてが欲しい人は、その時間に買い
に来られるやろ？
一同） はあ～！
秋子） いっぺんに焼かんで済む訳やな。
辰造） なるほど。考えたもんやな、冬ちゃん。
春子） これやったら「ミートデーニッシュない」
て怒られる事もないわ。
春男） 簡単な事やけど、よう思いついたなあ。
冬子） 簡単は余計や。
一同） ハハハ…！
冬子） 表にもな、おんなじもん置くねん。
とりあえず、明日からこの順番で焼いて、
お客さんから要望があれば、書き直して
いったらええねん。なあ、どない？
和人） 分かった。
冬子） うん。お父ちゃんも分かった？
春男） あっ、分かったわ。
冬子） よし！
春男） 「よし」て…。
一同） ハハハ…！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
こうして、私たちは次々に、
新しいパンを編み出していきました。
夏が近づく頃には、
デーニッシュ生地で、卵を包んだ、
卵デーニッシュをはじめ、
チーズデーニッシュ、コロッケデーニッシュ、
ソーセージデーニッシュなど、お惣菜の
デーニッシュが、大評判になっていました。
工場長も調理学校の先生を辞めて、
正式に、うちの工場に戻ってきてくれました。
辰造） チーズデーニッシュあがりました！
冬子） はい！ この次クリーム
デーニッシュお願い！
辰造） よっしゃ！
和人） ソーセージデーニッシュもいけんで。
冬子） 次はソーセージデーニッシュ！
そして、パンの種類が増える度、
売り場はどんどん窮屈になっていきました。
店のテーブルのほとんどは、
パンの置き場となり、シャトーが
落ち着いた喫茶店に戻るのは、
午後遅くなってからでした。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
冬子） なあ、お父ちゃん。
春男） 何や？
冬子） シャトーなんやけど…。
喫茶店やめて、パン屋にせえへん？
春男） …えっ？
冬子） 私な…ずっと考えてたんやけど、
その方がええような気ぃすんねん。
せっかく作ったパンやのに、きれい
に並べる場所がないなんて、寂しい
やんか。お茶飲みに来はる人より、
パン買いに来はる人の方が多いし。
それに、ほら、朝からパン焼いて、
夜まで営業すんの、もうしんどいわ。
春男） そやな…。
冬子） 秋ちゃんにも、弘子ねえちゃんにも、
いつまでも甘えてられへんし。家事や、
勉強の時間割いて、手伝うてくれてん
ねんもん。
春男） ほんまやな…。
冬子） なあ、和ちゃんは、どない思う？
和人） 俺も、その方がええとは思うけど。
シャトー、おかみさんが作りはった
店やろ？ 勝手に変えてもうたら
あかんのちゃうかな？
辰造） わし、あの店が開店した頃の、張り
切ってたおかみさん見てますさかい。
今でもあの店が、おかみさんそのもの
に見えます。ほんまにあの頃のおかみ
さんは…きれいやった。
春男） ほんまにあの頃はなあ…。
春男・辰造） きれやった。
冬子） 私もな、その頃の事は、何となく覚え
てるけど…。昔の思い出は、思い出や。
それより、パン屋としての未来、考えて
いく方が大事やと思う。あ…あの…とに
かく、あの…喫茶店の、夜の営業だけ
は、やめにしよう思うねんけど…ええ？
春男） まあ、そらしゃあないわな。お客さん
いてへんから、自然と閉める時間早よ
なってんねんし。
冬子） うん。
春男） あ…けど、喫茶店やめるいう話は、お
母ちゃんとちゃんと話し合うて決めなあ
かんで。創業者には、敬意を払わな。
冬子） うん。分かってる。
パン屋になって、はや一年。
私の夢は、どんどん膨らんでいくのでした。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
岩田製パン店よりは、冬子ベーカリーのほうが
入りやすそうな気がする。あんな可愛いパン職
人とイケメンパン職人がいたら、通ってしまう～。
それにしても…冬子が考えるデーニッシュのイ
ラストがおいしそうな事！ 実際に焼き上がった
チョコレートデーニッシュと、ミートデーニッシュ、
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岩田製パン店よりは、冬子ベーカリーのほうが
入りやすそうな気がする。あんな可愛いパン職
人とイケメンパン職人がいたら、通ってしまう～。
それにしても…冬子が考えるデーニッシュのイ
ラストがおいしそうな事！ 実際に焼き上がった
チョコレートデーニッシュと、ミートデーニッシュ、
卵デーニッシュ、チーズデーニッシュ、コロッケ
デーニッシュ、ソーセージデーニッシュと、デー
ニッシュパン、どれもおいしそうでおいしそうで。
特にあのチョコレートデーニッシュが食べたくて、
最近パン屋さんに行くと、必ずチョコレートデー
ニッシュがないかと探してしまう私。でもこれが
意外となくて！ シンプルすぎて逆に今では作ら
ないんだろうか？ おしゃれでおいしそうなデー
ニッシュはあるのだけれど…冬ちゃんのあのパ
ンが食べたいのよ～！ あの、チョコレートがつ
いたパンが食べたいの！ 罪作りなドラマだよ。
もうずっと、頭がデーニッシュパンでいっぱい…。
冬子の夢と一緒に、私のお腹もどんどん膨らん
でいきそうで怖い…。冬ちゃんのせいだからっｗ
デーニッシュ、ソーセージデーニッシュと、デー
ニッシュパン、どれもおいしそうでおいしそうで。
特にあのチョコレートデーニッシュが食べたくて、
最近パン屋さんに行くと、必ずチョコレートデー
ニッシュがないかと探してしまう私。でもこれが
意外となくて！ シンプルすぎて逆に今では作ら
ないんだろうか？ おしゃれでおいしそうなデー
ニッシュはあるのだけれど…冬ちゃんのあのパ
ンが食べたいのよ～！ あの、チョコレートがつ
いたパンが食べたいの！ 罪作りなドラマだよ。
もうずっと、頭がデーニッシュパンでいっぱい…。
冬子の夢と一緒に、私のお腹もどんどん膨らん
でいきそうで怖い…。冬ちゃんのせいだからっｗ
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