「てるてる家族」 第98回
まだ暗いうちに起きた冬子（石原さとみ）は、
同期生40人分のパンを焼く。課題につきあっ
てくれたお礼のためだったが、音楽学校を辞
めようかと悩んでいる理江（橘実里）を励まし
たい思いもあった。冬子が学校にパンを持っ
ていくと同期生は喜んでくれるが、理江は欠
席していた。心配する冬子。その夜、春子（紺
野まひる）の国体優勝を祝うすき焼きの席で、
春子は春男（岸谷五朗）に「会ってほしい人が
いる」と言いだし…。
同期生40人分のパンを焼く。課題につきあっ
てくれたお礼のためだったが、音楽学校を辞
めようかと悩んでいる理江（橘実里）を励まし
たい思いもあった。冬子が学校にパンを持っ
ていくと同期生は喜んでくれるが、理江は欠
席していた。心配する冬子。その夜、春子（紺
野まひる）の国体優勝を祝うすき焼きの席で、
春子は春男（岸谷五朗）に「会ってほしい人が
いる」と言いだし…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
照子） どないしよ？
…春子が行ってしまう。
春男） ど…どこへ？ オリンピックは
まだ気が早いで？
照子） そやない！ 私から行ってしまう…。
遠くに行ってしまう…。
春男） えっ？
照子） どないしよ？
春男） いや…そやから、何かあったんか？
照子） 何かって、あの…。何もない。
明日、春子から聞いたらよろし！
春男） 何や？ 一体…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
冬子） よし！ おはようさん！
春男） おはようさん。
和人） おはよう。
春男） 何や冬子、こんな時間に。
まだ夜中やで。
冬子） ちょっとパン焼かせてほしいねん。
春男） 今日休みとちゃうのやろ？
冬子） 学校に持っていくねん。
みんなと約束してん。
私が自分で焼いたパン、
みんなに食べてもらうねん。
春男） 何や、どないしたんや？ 急に…。
冬子） あんな…私、ものすごみんなに助けら
れてん。そやからそのお礼。ええやろ？
春男） まあええけど。みんなて、何人や？
冬子） 40人。
春男） ふ～ん、40人…40人！？ アホ！
そんなん先言うとかな！
そんなパン生地仕込んでへんで。
冬子） ええ～あかんの？
春男） 店に出すの無くなってまうわ。
和人） ええやないですか、大将。
今すぐ僕、仕込みますから。
昼までには間に合うと思います。
冬子） 和ちゃん…ありがとう！ おおきに！
和人） うん。
春男） しゃあないな。ちゃんと和人に
ようお礼言うとくんやで。
冬子） 今言うたやんか。
春男） あっ、言うたか。
冬子） さっ、やろ！ 時間あらへん！
春男） すまんな、和人。
和人） いえ、冬ちゃんらしいじゃないですか。
春男） みんなに助けられたて、
何かあったんか？
冬子） あんな…今な…学校で悩んでる子が
いてんねん。やめるかも分からへんて。
春男） 何でや？
冬子） きっと寂しいねん。そやから、
私のパンで励ましてあげたいねん。
春男） お前のパンで何ができんねん。
冬子） できるわ！ その子な、東京から来て、
すみれ寮に入ってんねんけどな。その
子が言うててん。
（回想）
理江） 私ね、ここに入る時、
すごくお父さんに反対されたの。
冬子） お父さんに？
理江） 最後はケンカみたいになっちゃって。
「私は、絶対宝塚のスターになるんだ」
って、泣きながら抗議したの。最後は
お父さんも、「分かった。頑張れよ」っ
て…。今はそれをすごく楽しみにして
るみたい。
冬子） よかったやんか。
理江） だから…成績が悪くてついていけない
なんて、言えなくてさ。冬休みに東京帰
った時もうそばっかり言っちゃった。本当
は、もう、東京に帰りたかったのに…。
冬子） 私、それ聞いてたら、夏子姉ちゃんの事
思い出してしもて…。夏子姉ちゃんも、東
京に行く時、お父ちゃん反対してたやろ？
けど今は、お父ちゃんかて応援してるや
んか。理江ちゃんのお父さんも、きっとお
んなじなんやろなあ思て。
春男） そんなん言うたらあかん。つらなるわ。
冬子） ほら！ 夏子姉ちゃんが、東京で一番
つらかった時、たまたま、てるてるパン
見つけて、食べた言うてたやんか。それ
でまた、頑張ろういう気持ちになったて。
春男） ああ、言うてたなあ。「ほんまに
あの時はうれしかった」てなあ。
冬子） うん。私も、ほんまにうれしかってん。
それ聞いた時。そやから、理江ちゃん
にも、私のパン食べてほしいねん。
元気になってほしいねん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
春男） 焼けたで～。
冬子） よっしゃ！ ええ感じや！ うん！春男） いや…そやから、何かあったんか？
照子） 何かって、あの…。何もない。
明日、春子から聞いたらよろし！
春男） 何や？ 一体…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
冬子） よし！ おはようさん！
春男） おはようさん。
和人） おはよう。
春男） 何や冬子、こんな時間に。
まだ夜中やで。
冬子） ちょっとパン焼かせてほしいねん。
春男） 今日休みとちゃうのやろ？
冬子） 学校に持っていくねん。
みんなと約束してん。
私が自分で焼いたパン、
みんなに食べてもらうねん。
春男） 何や、どないしたんや？ 急に…。
冬子） あんな…私、ものすごみんなに助けら
れてん。そやからそのお礼。ええやろ？
春男） まあええけど。みんなて、何人や？
冬子） 40人。
春男） ふ～ん、40人…40人！？ アホ！
そんなん先言うとかな！
そんなパン生地仕込んでへんで。
冬子） ええ～あかんの？
春男） 店に出すの無くなってまうわ。
和人） ええやないですか、大将。
今すぐ僕、仕込みますから。
昼までには間に合うと思います。
冬子） 和ちゃん…ありがとう！ おおきに！
和人） うん。
春男） しゃあないな。ちゃんと和人に
ようお礼言うとくんやで。
冬子） 今言うたやんか。
春男） あっ、言うたか。
冬子） さっ、やろ！ 時間あらへん！
春男） すまんな、和人。
和人） いえ、冬ちゃんらしいじゃないですか。
春男） みんなに助けられたて、
何かあったんか？
冬子） あんな…今な…学校で悩んでる子が
いてんねん。やめるかも分からへんて。
春男） 何でや？
冬子） きっと寂しいねん。そやから、
私のパンで励ましてあげたいねん。
春男） お前のパンで何ができんねん。
冬子） できるわ！ その子な、東京から来て、
すみれ寮に入ってんねんけどな。その
子が言うててん。
（回想）
理江） 私ね、ここに入る時、
すごくお父さんに反対されたの。
冬子） お父さんに？
理江） 最後はケンカみたいになっちゃって。
「私は、絶対宝塚のスターになるんだ」
って、泣きながら抗議したの。最後は
お父さんも、「分かった。頑張れよ」っ
て…。今はそれをすごく楽しみにして
るみたい。
冬子） よかったやんか。
理江） だから…成績が悪くてついていけない
なんて、言えなくてさ。冬休みに東京帰
った時もうそばっかり言っちゃった。本当
は、もう、東京に帰りたかったのに…。
冬子） 私、それ聞いてたら、夏子姉ちゃんの事
思い出してしもて…。夏子姉ちゃんも、東
京に行く時、お父ちゃん反対してたやろ？
けど今は、お父ちゃんかて応援してるや
んか。理江ちゃんのお父さんも、きっとお
んなじなんやろなあ思て。
春男） そんなん言うたらあかん。つらなるわ。
冬子） ほら！ 夏子姉ちゃんが、東京で一番
つらかった時、たまたま、てるてるパン
見つけて、食べた言うてたやんか。それ
でまた、頑張ろういう気持ちになったて。
春男） ああ、言うてたなあ。「ほんまに
あの時はうれしかった」てなあ。
冬子） うん。私も、ほんまにうれしかってん。
それ聞いた時。そやから、理江ちゃん
にも、私のパン食べてほしいねん。
元気になってほしいねん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
春男） 焼けたで～。
和人） 冬ちゃん、そろそろ学校行く
用意せなあかんのちゃう？
冬子） あ…あっ、ほんまやね。
春男） あとやっとくから着替えてきい。
冬子） あっ、うん。ああっ！ お父ちゃん、
和ちゃん、ほんまにありがとう！
春男） 今日は春子が帰ってくる日やで。
冬子） あっ、うん。分かってる。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
冬子） おはよう！
一同） おはよう！
生徒） あ…何や、ええ匂いするなあ。
冬子） パン持ってきたで！
朝焼いたばっかりの！
恵美子） ほんまに持ってきてくれたん！？
冬子） うん！
生徒） ほんまや！
生徒） いい匂いする！
冬子） ほんまに私が焼いたパンやで。
おいしいで。
麻子） ほんまに呆れるわ。あんたには…。
さっ、これは後のお楽しみ。
みんな準備して。
冬子） 理江ちゃん、まだ来てへんね。
生徒） ああ。あの子は今日休み。
生徒） なんかお腹痛いねんて。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
冬子） なあ。本科生は、もう本格的な
自主レッスンしてんのやね。
恵美子） 当然よ。もうすぐ文化祭やもん。
麻子） 嫌でも張り切るわ。
冬子） そっか…楽しみやなあ。安達京子さん。
文化祭というのは、
卒業公演のようなものです。
初めて劇場で、
大勢のお客さんの前で、
自分たちの技を見せるのです。
私たちも来年、一人も抜けずに、
文化祭の日を迎えたいと、
私は思っていました。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
寺井） 春ちゃん、国体優勝やてな。すごいな。
春男） そやねん。今日帰ってくんのや。
寺井） 次はオリンピックやな。
春男ちゃんも鼻高々やな。
春男） ハハハ…！
いや、これ以上高ならんわ、この鼻は。
いや、ほんまよう頑張る娘らで、
こっちが恐縮してまうわ。これ以上
何か望んだら、バチ当たるわ。
都子） あら謙虚やな。春男さんは…。それで
照子さんとよう釣り合いとれてんねんな。
春男） まあそういうこっちゃ。
都子） ねえ。
寺井） けど国体やで、国体！ 響きがええ
がな。新聞にかて載ってはるで。
春男） ほんまか？
寺井） 見てへんのかいな。
都子） ええ～？
寺井） ほらほら！ ほら！
春男） うん？
寺井） 「岩田春子は最高の出来栄えで優勝」
って書いてある。写真も載って。
春男） あ～ほんまやなあ。フフフ…
なかなかよう写ってるやんか。
都子） ほなら何？ これで春子ちゃん、
来年のオリンピックに、出られる訳？
春男） いや、まだや。
今年の12月に選考会があんね。
都子） うん。
春男） …でな、何せその、オリンピック確実や
言われてる、春子よりうまい選手が２人
いて、その２人とも、世界選手権いうのに
出てて、国体には出てへんかったそや。
都子） ほな、春子ちゃんは実際は、
３位いう事やな。
春男） まあ、そういうこっちゃな。そやからその
３位をな、12月の選考会まで守り抜かな
あかんねん。
都子） あや～…。
オリンピックへの道は、険しいんやねえ。
春男） そういうこっちゃ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（優勝おめでとうの垂れ幕を見つける春子）
春子） うわ～！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
冬子） 一個だけ余ってしもたな…。
理江ちゃん、おなか痛いのやったら
食べられへんしな…。
生徒） 冬ちゃん、それまた持ってきてな！
生徒） ほんまおいしかったわ！
冬子） ありがとう！
恵美子） 冬ちゃん。
冬子） ん？
恵美子） タダじゃなくてもいいから、
今度はお金出して買うからね。
冬子） えっ、ほんまに？
生徒） 私も買うから。
生徒） 私も買うよ。
冬子） えっ、おおきに！
麻子） 全く！ ここで商売してどないすんの？
けど私も買うよ。
冬子） えっ…麻子さんも？ ありがとう！
麻子） じゃ。
冬子） あ…あ…！ ちょっと…。
麻子） 何？
冬子） あの…。理江ちゃんの事なんやけど…。
恵美子） えっ？ 理江ちゃんが、どうかした？
冬子） 何か悩んでるみたいやねん。もしかした
たら、ここやめるかも分からへんて…。
そやから、みんなで励ましてあげたいね
んけど、どないしたらええ思う？
麻子） どうしようもない。
冬子） え…？
恵美子） だってあの子、いっつも
そんなような事言ってるやん。
冬子） えっ、そやの？
恵美子） うん。なかなかやめへんけど。
麻子） やめたい人を、引き止める権利は
私らにはない。じゃ、行こう。
恵美子） うん。
冬子） え…えっ…ちょっ…。な…何で…？
そ…そんなん、あかんやんか…。
何で…？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
冬子） はあ…。どないしたらええのやろ…？
（ピアノの音）
京子の声） ♪オ！ オ！ヤング ガイ
オ！ オ！ヤング ガイ
オ！ オ！ヤング ガイ
オ！ オ！ヤング ガイ
（部屋をのぞく冬子）
京子） ♪命を賭けて 俺はやるのだ 命を
何？
冬子） あっ、失礼しました！
京子） 待って！
冬子） はい！
京子） 入って！
冬子） …はい。
京子） 私に、何か用なの？
冬子） あ…いえ…。
京子） 用もないのにのぞいた訳？
冬子） あ…あの…すいません！
レッスンのお邪魔して。あの…おなか
すいてはらへんかと思って…。いや…
おなかすいていらっしゃらないかと思
いまして。
京子） すいてたらどうなの？
冬子） パンを、持ってるんですけど。
あの…私のうちは、パン屋なので。
京子） 私のために持ってきてくれたの？
冬子） あ…はい！
京子） ありがと。
冬子） はい！ あ…いえ…。どうぞ。
京子） 頂くわ。
冬子） あの…文化祭、頑張って下さい。
失礼します！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
春男） ほな、春子。国体優勝おめでとうさん！
一同） おめでとう！
和人） おめでとうございます。
春子） ありがとう。
春男） ようやったな。食べよか？
一同） 頂きま～す！
弘子） お肉ぎょうさん食べてな！
春男） ああ、そやな。
秋子） おばあちゃんが死んでから、
初めてのすき焼きやな。
春男） こら秋子。暗なる事言うたらあかん。
春男・秋子・弘子） ハハハ…。
弘子） おお～！ おいしそう！
春子） あのな、お父ちゃん。
春男） 何や？
春子） 今度、会うてほしい人がいてんねん。
秋子） 春子姉ちゃん…。
弘子） 誰やの？ それ。春ちゃん！フウ～！
春子） 連れてきても、ええ？
またまた、我が家の雲行きが、
怪しくなってきました。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
宝塚に入るまでは、ずっとお寝坊さんだった
冬子が、友達のために早起きしてパンを焼く。
それが本当に自然で、子どもの頃から、大好
きな人のためには迷うことなくまっすぐに動き
だすヒロイン。「ありがとう」が呼吸するように
自然に口に出る。間違えば「ごめんんさい」と
すぐ言える。当たり前のようで、これがなかな
かできないんだなあ…。でも、それができるヒ
ロインに描かれている朝ドラは、大体好感が
持てるドラマになっているような気がする。あ
いさつや、ありがとう、ごめんなさいが、スッと
出てこないヒロインのドラマは面白くない。そ
の点冬子は、明るくて、一生懸命で、朝ドラの
ヒロインとして、まさに理想のキャラだと思う。
素直で嫌みがなくて、笑顔が可愛い女の子。
爽やかで、清潔感のある女の子が、望ましい。
理江ちゃんを心配する冬子は、実はずっと同
じ事をぼやいているかまってちゃんだったこと
を同期から聞くのだけれど…。成績が悪くて、
頑張りたいと思う冬子と、やめたいと思う理江。
頑張りたいと思う子なら応援できるけど、やめ
たいという子にはどうしようもないかも。本人に
やる気がなかったら、他人はどうしようもない。
理江ちゃんは、結構メンドクサイ女の子とみた。
春子に会わせたい人が言われてしまった春男
がどうするのか、男親の最初の試練はいかに。
岡谷さん、頑張れ～！ と応援しつつ、楽しみｗ
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自然に口に出る。間違えば「ごめんんさい」と
すぐ言える。当たり前のようで、これがなかな
かできないんだなあ…。でも、それができるヒ
ロインに描かれている朝ドラは、大体好感が
持てるドラマになっているような気がする。あ
いさつや、ありがとう、ごめんなさいが、スッと
出てこないヒロインのドラマは面白くない。そ
の点冬子は、明るくて、一生懸命で、朝ドラの
ヒロインとして、まさに理想のキャラだと思う。
素直で嫌みがなくて、笑顔が可愛い女の子。
爽やかで、清潔感のある女の子が、望ましい。
理江ちゃんを心配する冬子は、実はずっと同
じ事をぼやいているかまってちゃんだったこと
を同期から聞くのだけれど…。成績が悪くて、
頑張りたいと思う冬子と、やめたいと思う理江。
頑張りたいと思う子なら応援できるけど、やめ
たいという子にはどうしようもないかも。本人に
やる気がなかったら、他人はどうしようもない。
理江ちゃんは、結構メンドクサイ女の子とみた。
春子に会わせたい人が言われてしまった春男
がどうするのか、男親の最初の試練はいかに。
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