NHK特集ドラマ
「ナイフの行方」
世を呪う若者に対し、
“大人”は何を伝えられるのか…。
贈る渾身(こんしん)のファンタジー。
と子連れの家政婦・香(相武紗季)を週二回雇っている
が香の娘はなかなかなついてくれない。そんな折、拓
自は自暴自棄になった青年・次男(今井翼)が通りで無
差別に人を刺そうとしているのを目撃し組み伏せる。だ
が、次男の目を見た拓自は警察に突き出すことをため
らい、その足を折って自宅に連れ帰る。自分のことは話
さず、相手の事も聞かない奇妙な同居生活が始まった。
**********
んたが、たかが1ヶ月でケロリと忘れて、「元気
になりました。一人で生きていきます」、なんて、
人間がそう簡単に変わるもんか。
一人で生きていくって言ってるんだから。
金も持ってないだろう? 持ってないだろう?
倍にもして、きっと返すって。
を殺そうとした自分を、ひと月で忘れるんだ。
陽三) 根本さん、それはいけない。
あの日の事と、この子の事は、全然違う。
織江) 重さも大きさも、違うでしょ。
陽三) 殺してもいない。
絶対誰かを刺していた!
陽三) よせよ! 俺が引き受けよう。
織江) あっ、私が引き受けるわ。お金も貸してあげ
る。自立するまで、うちの2階に住めばいいわ。
陽三) 根本さん、もう言うな。何も言うな。
織江) 私が、力になるわ。
拓自) 泣くな。泣くな。このくらいでいちいち泣くな。
軽いんだ。軽くてムカムカする。
織江) もうね、もうやめなさいって。ねっ。
陽三) 根本さん、時々あんたは頑固でいけない。
大丈夫だ、俺たちがついてる。
織江) ついてるわ。
**********
拓自) 私以外にあいつの相談に乗る人間が
必要なんだよ。
香) 余計な心配じゃないかな~。
拓自) いや、仮にも、
誰かれ構わず刺そうとした奴だ。
香) でも、根本さんのおかげで変わったって。
拓自) 信じたいが、多くの場合、
人はそう簡単に変わりはしない。
香) そうなんでしょうか?
拓自) また思いつめた時、私以外にも、
行き場所があった方がいいと思った。
香) そんな風に考えて、スナックのお2人を呼んで、
引き受けると言わせたんですか?
拓自) 素朴な計略だよ。
香) 大人って怖い。
拓自) そう。怖いんだ。私は、後始末どころじゃなく、
あの日の事から、彼の言うように、逃げて逃げ
て逃げまくって生きてきたようなもんだ。人間
は分からないと。みんなが人間を、信じ過ぎて
いるように思えてならない。のんきすぎるよう
に思えてならない。
**********
拓自) 人間って…人間って痛い。
はあ…。人間って…痛い。痛い。
**********
昔は大好きだったのに、どうも最近、山田太一節が
苦手になってきたことを、再確認してしまったドラマ。
いや、いい話だとは思うのだけれども、セリフまわし
が気になってしまって…。う~ん…困ったものです。
今の若い人たちに、そう言いたいんだろうなあって。
軽くてもいいんじゃない?って思いつつ、その軽さに
時々イラついてしまう気持ちも分からないでもないし。
信じ過ぎているように思えてならない。
のんきすぎるように思えてならない。
そういう懸念というか、ちょっと、また嫌な感じがして
いる時代への警鐘とまでは言わないまでも、もう少
し危機感を持ったほうがいいんじゃないの?って…。
もちろん、簡単に人を信じて、のんきで暮らせる世界
は、平和で幸せなことではあるけれど…世界は今だ、
そんな平和な世界だけじゃない。銃を手にすれば撃
ってしまうかもしれない。ナイフを手にすれば、刺して
しまうかもしれない。悲劇はすぐ目の前で起こりうる。
人間って痛い。生きているから…痛い。痛いんだ…。
ドラマのエンディングに流れていたイラストの映像が、
とても印象的で、心を鷲掴まれて…。それはまさに、
人間って痛いと…その痛みが直に伝わってくる絵で。
哀しくて、痛くて、心が苦しくなって、目をそむけたくな
るのに、どうしても、そこから目が離せない…その絵
を描いた人は、石田徹夜さんという方の作品でした。
今回、その作品を知ることが出来ただけでも、このド
ラマを観た価値はあったと、心からそう思った私です。
こちらが、ラストに流れた絵 ↓
「飛べなくなった人」
「兵士」
「無題」
●石田徹也公式ホームページ
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