「花子とアン」 第128回
第22週 「新しい家族」
ももの結婚＆出産。そして、朝市結婚おめでとう！
旭） 僕は…ずっと、周りの人たちをびっくりさせるよう
な絵を描いて、有名になりたいと思っていました。
でも、ももさんを書いているうちに分かったんです。
周囲に才能を評価されるよりも、もっと大切な事が
あると。それは…描く対象を、ちゃんと愛する事で
す。芸術家気取りは、もうやめにします。これから
は、地道な仕事について、一生懸命働きます。
生活の苦労も絶対にかけません。
それでも…ダメですか？
もも） 違うんです。こんな素敵な絵描いてくれて、
本当に嬉しいです。でも…これは本当の私じゃ
ありません。ほんの少し前まで、北海道で酷い
暮らしをしてました。２年前に夫を亡くして…
いろいろあって東京に来ました。
旭） 知ってます。
もも） え…？
旭） 実は…聞いてしまったんです。
初めてお会いした時に、かよさんのお店で…。
（回想）
もも） 食べる物も着る物もなくて…。
冬は本当につらかった。
冬は本当につらかった。
雪ん中、裸足で仕事したり…。
誰も助けてくれなくて…。住むうちもなくて…。
馬小屋で寝てた。
旭） 僕なんか、想像もできないような苦労をなさった
んですね…。でも僕はそれを聞いて…どうしようも
なくあなたに惹かれました。そんなに過酷な生活
の中でも、生きようとする強さを持ち続けた。
僕はあなたのそんな強さに惹かれたんです。
その気持ちを、僕は、この絵に込めました。
ももさん。
これからは僕に…ももさんを守らせて下さい。
花子） もも。
（微笑むもも）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
1933年（昭和8年）・夏―
それから、１年後の夏。
旭とももは結婚し、
村岡家の近所に家を借りました。
あの時、旭が描いたももの絵は、
展覧会で３等賞になりました。
旭は英治に印刷の技術を教わりながら、
青凛社で働いております。
そんなある日の事、
珍しいお客さんが訪ねてきました。
花子） てっ…朝市、どうしたでえ？
朝市） はな、しばらく。
今日は相談があって来ただ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
朝市） ももちゃん。ご結婚、おめでとうごいす。
もも） ありがとうございます。
朝市） もうすぐ赤ちゃんも生まれるだって。
ふんとにおめでとう。
もも） ありがとう。
花子） ありがとう。それで、相談って？
朝市） これだけんど…。
花子） 生徒たちの綴り方。
朝市） 文章を書く事で、子供たちの考える力伸ばし
てやりてえと思って、ずっと綴り方の授業に力
を入れてきただ。
英治） 綴り方は、物事を客観的に捉える力が培わ
れるし、批評の目も養われる。
朝市） 長え事指導してきて、
随分生徒たちの作品がたまったもんで。
思い切って本にしてみっかと思うだ。
花子） いいじゃんね！ 自分の書いた綴り方が本に
なったら子供たち喜ぶわ。
朝市） 青凛社で、こりょう本にしてもらえんかと
思って。今日は頼みぃ来たです。
英治） もちろん。
朝市） よかった。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
英治） では、お預かりします。
すぐに、見本組みに取りかかりますね。
朝市） よろしく、お願えします。
英治） ゆっくりしていって下さい。
朝市） ああ、ほうだ。こないだ、武に誘われて、甲府
で演芸会に行ったら、はなのモノマネしてる芸
人さんがいたさ。
花子） てっ…私のモノマネ？
（回想）
芸人） 会場の、大きい方々。
（笑い声）
芸人） ごきげんよう。これから、皆様方の、
ラジオの、おばさんの時間です。
またお話しましょうね。
それでは皆さん。ごきげんよう。さようなら。
（拍手と笑い声）
朝市） ごきげんようのおばさんって、
はな、すっかり有名人じゃんね。
花子） てっ…。
朝市） はなの「ごきげんよう」がみんなに広まって、
おらもうれしいだよ。
花子） 朝市…。
朝市） はなが東京の女学校から甲府に帰ってきて。
初めて「ごきげんよう」って言葉を聞いたときゃ
あ、えれえびっくりしたけんどな…。今思うと、
はながすっかり東京のお嬢様みてえになっち
まって、寂しかっただな。ふんだけんど、はな
が女学校でうんとこさ頑張ってるの分かって。
おらももう一度勉強してみようって気持ちにな
れただ。はなには、感謝してる。おらが教師ん
なれたのは、はなのおかげじゃん。
花子） 朝市…急にどうしたでえ？
朝市） ず～っとお礼が言いたかっただ。
花子） 朝市…。
朝市） 今日は、もう一つ報告があって来ただ。
花子） 何？
朝市） はな。ももちゃんも、聞いてくりょう。
おら…今度結婚するだ。
花子・もも） てっ！
花子） 結婚？ 朝市、おめでとう！
相手はどんな人？ 甲府の人？
朝市） ああ。教員仲間の、妹じゃん。
もも） どんな女の人？
朝市） 気さくで、よく笑う人だ。本読むのが好きで…。
たまに怒ると、おっかねえけんどな。
花子） へえ～！
もも） お姉やんみたい。
花子） えっ？
（笑い声）
朝市） 顔は似てねえけんどな。
花子） リンさん、喜んでたら？
朝市） うん。結婚するって言ったら、うちのおかあ、
急に泣きだしてビックリしたさ。
この年まで独りだから、もう諦めてただとう。
おかあにも、随分心配かけちまった。
花子） よかったね、朝市…。おめでとう。
朝市） はな…何で、はなが泣くでえ？
花子） だって…私ふんとにうれしくって…。
こんなちっくい時から知ってる朝市が、
お嫁さんもらうと思ったら…。
朝市） おら…はなと、ももちゃんには、
こぴっと報告したかっただ。
花子） ふんとにおめでとう、朝市。
花子） はあ～とうとうもらったか～…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
そして、9月の半ばの事です。
もも） う～ん…う～…。
花子） もも…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（産声）
花子） 元気な女の子よ。
もも） ごきげんよう。
ももと旭の赤ちゃんは、
歩と同じ、9月13日に誕生したのでした。
ごきげんよう。さようなら。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
もう一つ報告があるという予告に、すわ結婚か！と思
ったものの、期待しないようにしようと思っていたら…。
本当に朝市の結婚報告でした！ よかったよ～朝市！
又も一生独身コースかと諦めかけていたから、本当
に嬉しいよ～！ リンさんだってそりゃあ、泣くよねえ。
朝市のキャラが大好きなので、架空の人物とはいえ、
いや、架空の人物だからこそ、物語の中だけでも、や
っぱりちゃんと、幸せになってほしくて。ヒロインを想う
一途なキャラもいいけれど、それはそれ、これはこれ
で、初恋の人とはまた別に、リアルな伴侶を得てほし
いと思っていたのよね～。花子とリンクして、なんだか
泣いちゃいましたよ。相手が、顔は似てなくても、やっ
ぱり花子に似ているっぽい女性というのも泣かせるし。
ちゃ～んとその人を好きになって結婚するっぽいのも
いい。花子への想いは秘めたまま、幼なじみの立ち
位置を守り通した朝市が好きだ～！ 願わくば武にも、
結婚相手を見つけてあげてくりょう。地主さまなんだ
から、跡取りなんだから、朝市とばかりつるませない
で、ちゃんと婚活もやらせてくりょう！ 頑張れ、武！
なんて言いつつ、実は、朝市＆武コンビに魅せられ
てる私。いつまでも２人、つるんでいてほしいなり～。
朝市の嬉しい報告で、ももちゃんの結婚＆出産ネタ
が、すっかり飛んでしまいました。ももちゃん、ゴメン。
展覧会で３等賞という微妙な成績から見て、青凛社
で働くのが大正解と思われる旭さんとお幸せに～！
何とか今月中に環境を整えて、9月になったら、いよ
いよ「アン」との出会いになるのかな？ やれやれ…。
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