「食堂かたつむり」のフルーツサンド | 日々のダダ漏れ

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グレーテルのかまど (6月21日放送)
「食堂かたつむり」の
フルーツサンド





宝石のように美しいフルーツサンド。



たっぷりのフルーツと、ふんわりした生クリームが、
乙女心をくすぐります。



小説「食堂かたつむり」に登場するフルーツサンドは、
それはそれは、美味しそうに描かれているんです。

食パンの純白、クリームの乳白色、洋ナシの翡翠が
かかった白がはっとするような見事なグラデーション
を奏で、レーズンの水玉模様がかわいいアクセント
になっていた。


著者・小川糸さんが伝えたい、フルーツサンドの
極意とは?



(小川糸)
その場、その場の「瞬間芸」みたいな、ところがある
なあと思います。


フルーツ、クリーム、そしてパンの美味しさが奏でる
ハーモニー。食堂かたつむりにも描かれた、その魅
力に迫ります。

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小説、「食堂かたつむり」は、2008年に出版された、
小川糸さんのデビュー作。恋人に振られ、すべてを
失った主人公・倫子が、失意の中、食堂を開き、客
に料理を振る舞うことで、新しい自分を見出していく、
物語です。

食堂かたつむりは、一日一組だけ。
メニューはありません。予約客の好みや雰囲気を
読み取り、イマジネーションで、料理を作ります。

祖母の代からのぬか床で作った、りんごの漬け物。
愛する人を失くした女性のために。



ザクロ入りの、ワイルドなカレー。
開店準備を手伝ってくれた、熊さんという男性へ。



これらのメニューは、
小川糸さんが、登場人物を思い浮かべ、すべて、
頭の中の想像で書いたものなんです。

(小川糸)
自分の中で、「料理脳」のスイッチが入ってしまうと、
すごくいろんな、あ、この料理と、あ、この食材と、
この、あの味を合わせたら、どんな風になるんだろ
うとか、いろいろ考えだすと、すごく妄想が、止まら
なくなって、とっても大きなものになって、こう、眠れ
なくなったりとか、そういうことは、あります。


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読む人の脳を喚起し、限りなく食欲を刺激する、食
堂かたつむりは、世界各国で翻訳されています。



特に、美食の国イタリアでは、60年以上の歴史を持
つ、バンカレッラ賞の、料理部門を受賞しています。

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物語の中、ある日のお客のオーダーは、午後三時
に食べる、サンドイッチ。倫子が考えたのは、身近
な素材だけど、その組み合わせは、全くオリジナル
の、フルーツサンドでした。

パンに汁気が染み込むのを防ぐのと
味に含みを持たせるため、
パンの表面に湯煎にかけた
ミルクチョコレートを薄く塗る。



チョコレートは、
ビターよりもミルクの方が
クリームや果物との相性がいい。




クリームは、
いつも使っている生クリームと、
ヨーグルトから乳清をのぞいて
脂肪分だけにした
クリームを半分ずつ混ぜて作った。




両方を混ぜると、ちょうどよいコクと
爽やかさになり、汁気の多い果物を
しっかりとガードしてくれるのだ。
         「食堂かたつむり」より




そして、主役は洋ナシ。かたすぎず、柔らかすぎず、
食べ頃の見極めが難しい果物です。洋ナシの水分
が、パンに移ってしまわない様、気を配って仕上げ
ます。旬を迎えた、洋ナシの美味しさを、最高のタイ
ミングで閉じ込めたフルーツサンド。その魅力とは?

(小川糸) 
すごく贅沢なものの様な気がしますね。あの、果物
だけで食べて、もちろん美味しいのに、それに、ね、
クリームとか、パンとか、何かそれぞれ食感とかが
違うものを合わせて、一瞬で美味しさが損なわれて
しまうので、すごく生ものというか、その場その場の
「瞬間芸」みたいな、ところがあるなあと思います。


瞬間の味を楽しむフルーツサンド。
小川さんのイマジネーションを、読者がキャッチす
ることで、その美味しさが生まれるのです。

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ヨーグルト風味の生クリームに、旬のフルーツを
たっぷり挟んだ、二つのフルーツサンド。





パンに、フルーツとクリームを挟むだけ。シンプル
だけど、1番美味しい一瞬のために、ひとつひとつ
丁寧に作り上げた、贅沢な、スイーツです。

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食堂かたつむりの著者・小川糸さんには、
忘れられないサンドイッチの思い出がありました。

(小川糸)
中学校の時だったと思うんですけど、部活の試合が
日曜日にあって、その時誰も、お弁当を作る人がい
なくてどうするとかいう話になったら、一つ上の姉が、
じゃあ私が作るって、こう、手を挙げてくれて、そのと
きに、パンに、ジャムか何かを塗って、あと何かチー
ズかなんかを入れて、あの、ロールケーキみたいに、
普段は食べたことがないような形の、ロールサンドっ
ていうか、そういうの作ってくれたんですけど。それ
が凄く嬉しくって、なんかその時からきっと、何か特
別なものというか、普段は食べないけど、何かがあ
る時にいただけるようなものっていう原形があるのか
なって気がします。




その時の、嬉しかった気持ちを、小川さんは、食堂
かたつむりのメッセージとして、描いたのです。

(小川糸) 
やっぱり、料理って、その、作っている、人の気持ち
が入るものだと思うので、手紙のような、ものだと思
うんですね。だから、いつもお疲れ様ですとか、あり
がとうとか、好きですとか、そういう気持ちが籠って、
それが、あの、言葉ではなく、相手に、ストンと伝わ
る、ものだと思うので。


フルーツサンドを作ることで、食べる人と心が通い
合う、フルーツサンドには、そんな力が、秘められ
ていました。



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食堂かたつむりは、映画も観ているのですが、実は
あまり出てきた食べ物を憶えていませんでした・・・。
美味しそう~というよりは、イマジネーションあふれる
不思議な食べ物、という印象のほうが強かったかも。
頭の中だけで想像したほうがいいのか、映像化され
たものを見たほうがいいのか? なんて、両方を見な
いではいられないのですが。特にフルーツサンドは
食べてみたいかも。フルーツサンドって、なんだろう、
食事なのかデザートなのか、どっちの気持ちで食べ
たらいいのか迷うというか、悩んでしまうんですよね。

どっちにしても、もったいないというか・・・贅沢な感じ
がして、結局選べないというか、永遠の憧れの食べ
物のようなイメージなんです、私にとっては。だから、
作者の方が言う「何か特別なもの、普段は食べない
けど、何かがある時にいただけるもの」、というのが、
ああ、そんな感じ~と、しっくりきたというか。そうか、
何か、特別なときなら、自然に、ご褒美的に食べる
ことができそうな・・・そんな気がしてきたのでした♪
銀座千疋屋のフルーツサンドとか・・・食べてみたい
なあと・・・。瞬間芸を・・・味わってみたいものです。


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