ビブリア古書堂の事件手帖 第6話~「晩年」 | 日々のダダ漏れ

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ビブリア古書堂の事件手帖

第6話
「晩年」(太宰治)

何者かに石段の上から突き落とされた篠川栞子(剛力

彩芽)は、救急車で病院に運ばれた。しかし、幸いなこ
とに足首
の骨折だけで済み五浦大輔(AKIRA)は安堵
する。一方で、
倒れていた栞子を見つけ救急車を呼ん
だのが藤波明生(鈴
木浩介)だと聞くと大輔は顔を曇ら
せた。やがて、志田肇
(高橋克実)、篠川文也(ジェシー)、
藤波が病室を出ると、
栞子は大輔に病院に持ち込ん
だ金庫から一冊の本を取り出
すように頼む。パラフィ
ン紙に包まれたそれは太宰治の
『晩年』だった。栞子
は、この本を狙う男に突き落とされ
たのだと明かした。

栞子が祖父の代から引き継いだ
『晩年』は、500部程
しかない初版本のなかでも太宰自
身の署名まで入る
などした大変稀少なもので、世に出せば 
300万円以
上の値が付くという。栞子は『晩年』を母屋で
保管して
いたが、その存在を知った人物から「譲ってほし
い」と
何度もメールが来るようになり、警戒していたところ、
今回の事件が起こったと言う。栞子の入院中、大輔
はひとり
で「ビブリア古書堂」を切り盛りするが、古書
の知識
がないため、苦労する。そんな大輔の様子を
見に、小
菅奈緒(水野絵梨奈)や藤波がやってくる。

そんな折、
店の外に出た藤波が大きな声を上げた。
大輔と奈緒
が駆けつけると、ワゴンの中の本にガソリ
ンがかけ
られていた。危機感を覚えた大輔は『晩年』
を売っ
てしまってはどうかと勧めるが、栞子は本を手
放すく
らいなら殺されたほうがましだ、と譲らず・・・。

**********

作者の自筆メッセージが入った本というのは、ファン
にとっては、何物にも替え難い価値を持っているも
のです。
それを手に入れるためなら、誰かを傷つけ
ても構わない。
そう考える人間がいたとしても、不思
議ではありません。
でも、もし自分のつづった言葉
が、そこに込めた思いとは裏腹に、後の世で争いを
招く要因に
なっていると作者が知ったら、果たしてど
う思うでしょうか




**********

栞子) ただ、半年ほど前から、「晩年」をどうしても譲っ
    てほしいというメールが、しつこく送られてきてい
    て、
内容がだんだん脅迫めいてきたので、警戒
    はしていたんです。
大輔) 脅迫って。そんなに価値のある本なんですか?
栞子) 「晩年」は、太宰 治の処女作品集です。これは
    昭和11年に、砂子屋書房から刊行された初版本
    です。
大輔) 乱丁本ってやつですか?
栞子) いいえ。アンカットです。
大輔) アンカット?
栞子) 普通、本というのは、こんなふうに袋とじで製本
    されて、後から小口を奇麗に切り揃えるんです。



栞子) アンカットというのは、切り揃えられずに出版され
    た本のことです。
昔はこの状態で出版されることが、
    多かったんですよ。



大輔) どうやって読むんですか? 
栞子) ペーパーナイフで開きながら読んでいくんです。



大輔) ってことは、この本はまだ、
    誰にも読まれてないってことですか?
栞子) はい。
大輔) これ、本物ですか?
栞子) ええ。
    「晩年」は太宰が27歳のときに刊行されました。




栞子) それまで書き溜めた短編を収録したものですが、
    その中に、「晩年」という題名はありません。
大輔) じゃあ、何で「晩年」なんですか?
栞子) 遺書のつもりだったと、太宰自身が書き残してい
    ます。「晩年」の初版は、500冊しか印刷されませ
    んでした。
ページがアンカットのまま、帯付きで署
    名まで入っている
美本は、もうこの1冊以外存在
    しないかもしれません。
もし店に出すとしたら、少
    なくとも300万以上の値を付けると思います。
大輔) 300万!?
栞子) でも、私にとってのこの本の価値は、値段とは
    関係ありません。この見返しに書かれた、太宰
    の言葉の方が大事なんです。



自信モテ生キヨ 
生キトシ生クルモノ
スベテコレ罪ノ子ナレバ


栞子) きっと、知り合いを励ますつもりで、一文を添え
    て送ったんでしょう。同じ文章が書かれた署名
    本は他にも見つかっています。
「罪ノ子」という言
    い回しにも、思い入れがあったのかもしれません。
    「鷗」という短編にも出てきますから。
大輔) 罪ノ子・・・みんな悪人ってことですか?
栞子) 必ずしもそうではなくて、生きている者は誰でも、
    業が深い、という意味に私は解釈しています。
    とても、好きな言葉です。



大輔) 業・・・ですか・・・



栞子) そもそも、晩年は売り物ではないんです。うちの
    祖父が知人から譲り受けたもので、代々店と一
    緒に受け継がれてきた個人的なコレクションです。

**********

大輔) そんなことより、早く警察に知らせた方がいい
    ですよ。何でそんなに落ち着いてるんですか? 
    命を狙われてるかもしれないんですよ。
栞子) いえ。これは単なる、脅しだと思います。
大輔) 脅し?
栞子) 自分が本気だということを伝えるための、警告
    でしょう。あの男の狙いは「晩年」です。
    私を殺しても、本は手に入りません。
    でも、五浦さんには伝えておくべきだと思って。



栞子) 今後どうしたらいいのか、もう少し落ち着いて
    考えたいんです。それまでは、文也にも志田
    さんにも、このことは秘密にしていてください。
    どうかお願いします。


**********

大輔) 篠川さん。
栞子) はい。
大輔) 「晩年」、
    売っちゃった方がいいんじゃないんでしょうか?
栞子) え?
大輔) 手元にあの本を置いていたら、何をされるか
    わかりませんよ。たとえ、脅しだとしても、たか
    が本のために人を傷つけるなんて、まともな
    人間が
することじゃないです。
栞子) あの本は売りません。何があっても 絶対に。
大輔) 篠川さん、よく考えてください。
    もし取り返しのつかないことに・・・
栞子) いいえ、いいえ。あの本を手放すぐらいなら、
    殺された方がマシです!



栞子) そう思ってしまう私も、
    きっとまともじゃないんでしょうね。


**********

【『道化の華』(短編集『晩年』より) 太宰治】

12月の終わり―
海辺の療養院に男が運び込まれた。
男はその海で、心中に失敗したのだ。

警察の者が訪れて、男に告げる。
「女は死んだよ。君は死ぬ気があったのかね」
男は自責の念にかられ嗚咽をもらす。


しかし、友人には何事も起きなかったかのよう
に接した。ほんの一瞬、男が心を許したのは
看護師の真野だった。

退院の朝、男は真野と共に裏山へ登り、
海を見下ろすのだった。

なお太宰は、主人公の男の名前を
『人間失格』にも登場させている。

**********


またも、今回登場した本、「晩年」の作者・太宰治は、
恥ずかしながら高校時代に大好きだった作家で、彼
の作品はたぶん、ほとんど読んだはずの、青春の書。
それを恥ずかしいというのも、失礼な話なのだけれど、
好きゆえに、好きと言いたくない、というような、屈折し
た、複雑な想いがあったりして。本当に好きなものは、
意外と黙って静かに、大事に大事に心の奥にしまっ
ておきたいタイプなのでありました。メンドクサイ私w

栞子が好きだという、「罪ノ子」という言葉も、思春期
に確実に心を鷲掴まれた覚えが・・・。こういうフレー
ズを目にすると、これまた大好きな漫画家、羽海野
チカさんの名作「ハチミツとクローバー」の中に出て
くる、脱ぎ捨ててきたはずの「青春スーツ」を、またも
着込んでしまったような、何とも言えず、眩暈がする
ほど、青春の苦くも甘い香りに包まれてしまいます。
昔のめり込んだ時代を思い出すのは、体に悪い

今回、本の内容というよりは、古本の価値というか、
「アンカット」ということも初めて知ったし、本について
の知識が得られるのは、うれしいこと。本好きなら知
っていることかもしれないけど、本が好きといっても、
人それぞれ、「好き」の方向性が違っていたりするし。

たかが本、されど本。何が大事なのかは人それぞれ。
「晩年」は守り切れるのか、ドキドキの次週が待ち遠
しいけれど、本当はもっと、本の中身にも触れてほし
いと・・・本の話が多くあってほしいと願ってしまう私♪


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