日本行きの切符
2月ごろまで私が日本語を教えていた人が、先日学校に突然やってきた。
「日本行きのビザを手に入れたいんです。相談に乗ってください。」
「え・・・(うわー、きたー。やだなー。)」
ちょっと警戒したが、しょうがないなあ、と思いつつ、話を聞いた。
日本で1年、研修という名目で働くための面接があるらしい。
その練習をしたい、ということなのだ。
(今日のお礼に彼女が持ってきたドラゴンフルーツ)
面接をする先方の会社の仕事は、簡単な通訳兼単純労働。
多分、立ったままの長時間勤務。1年間、きつい仕事だ。
給料はもろもろ引いて、6万円くらい。
・・・ちょっと(というか、相当)給料少ないね。
今だって、立派な職場で働いているのに。
やさしい夫も可愛い盛りの子供もいるのに。
「先生、私は、ずっと、日本に行きたかったんです。
目的はお金じゃないんです。
ただ、見てみたいだけなんです。
行ってみたいだけなんです。
日本のこと、勉強したいんです。」
日本という国はね、誘惑が多いんです。
日本でどんどん変わっていく外国人をたくさん見ました。
「1年間だけなんです。がんばりたいんです。」
日本という国にいろんな意味で憧れ続ける人は多い。
行きたいという人を止めるわけにはいかないが、
行くと決める前に日本の最悪な部分も教えるべきと思う。
ただ、私にはそれを相手に伝えきれるだけの言葉がない。
私がどんなに言っても、彼女にはイメージできないのだ。
だから、彼女の頭には、まだ「憧れの日本」しかない。