第一部「ネオアダチ炎上」より 「アンフィビア・イン・ザ・マッポー・タンク」 | ウナギイヌさん 新しいメッセージがあります

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ウーパールーパー雑記帳
~ためになりません~

この時間は、「ウナギイヌさん 新しいメッセージがあります」の時間ですが、クラズミウマがソチミルコ湖でタニシを取ろうとして携帯電話を落としたため、予定を変更して「ミズミミズスレイヤー」を掲載します。


【重点】 この小説に登場する地名、個体名、生態、飼育法などはフィクションであり、現実ではない 【欺瞞めいています】


<サイバーパンク両生類小説>
~ミズミミズスレイヤー~
第一章「ネオアダチ炎上」より
【アンフィビア イン ザ マッポー タンク】#1

雑然と並べられたタンクを照らす電子LEDのライト、爆音を発する粗悪な「ブクブク」からは、ウナギめいたチューブが縦横無尽に伸びており、それぞれのタンクに汚染されたネオアダチの空気を送り込んでいる。高ミネラル弱酸性水で満ちたタンク内には、住人である数匹のウーパー=ルーパーがうごめいている。

「モズク=サン、今年の春は寒いな」
「ああ、エリーゼ=サン」

モズクは、このタンクの最長老であるエリーゼに面倒臭そうに答えた。飼育者のモラルが崩壊して久しい、このネオアダチのタンクにおいて、年長者を重んじることは最低限の礼儀であり、「ドカン」の占有権などは年長者に与えられるのが習わしだ。この風習は「ネンコ・ジョレッツ」と呼ばれていることが古事記において確認されている。なお、「ひかりクレストバイオキャット」の配給時には、たとえ年長者と言えども一度だけアンブッシュを仕掛けることが認められている。これも古事記に書いてある。

「実際、寒いすぎる」

返答の続きともなくそうつぶやき、タンク内の水質浄化装置、「タッパー式コンパクトテメーン・フィルター」の上に敷き詰められた、オーイソ・サンドの上に繁るバイオミクロソリウムを齧りながら(バイオミクロソリウムには若干の整腸作用があり、特にタンク内のウーパー=ルーパーの嗜好品として人気が高い)、もう一つの水質浄化装置である「スイサク・ドライブ」に飛び移った。この装置の周辺は、電子モーターの影響で若干暖かいのだ。

「そちらはどうだ?カヨコ」

少し離れたところにある別棟タンクにいる姉妹に向けて(ウーパー=ルーパーは多産であるため、どちらが姉か妹かということを気にしない)、モズクはテレパシーめいた信号を送った。言語を持たぬ代わりに、ウーパー=ルーパー同士は、空間を経ていても若干のコミュニケーションを取ることが可能である。カヨコのいるタンクは、モズクの棲むそれと違い、タズナ・サンドが敷き詰められており、ウーパー=ルーパーと友好関係を結んでいるバイオミズミミズ達も多数暮らしている。

「こちらも似たようなものだ」

30分ほど過ぎてから、カヨコから返信があり、モズクはこの寒さがネオアダチにおいて共通であることを確認した。返信に多少時間が掛かったのは、彼女らのニューロンの仕組みによるものであり、バグではない。

「カヨコ=サンも元気なようだな」

同じく返信をキャッチしたエリーゼがつぶやく。

(アンタが一番元気だがな)

基本的に長命なタンク内ウーパー=ルーパーであるが、エリーゼは今年で8歳か9歳という、平均寿命を超える年齢になっているはずだ。ドカンの上に不安定な姿勢でたたずむ長老に対して、モズクは聞こえぬようにつぶやいた。奥ゆかしいつぶやきといえる。

「「アイエエエ!」」

その時、カヨコの棲む別棟のタンクから、ウーパー=ルーパー複数匹のまるでツキジめいた悲鳴が、悲痛な信号としてモズクたちのニューロンに響いた!

「ミズミミズ=サンがぁ!ミズミミズ=サンがぁ!」
「ナンデ!?アカヒレナンデ!?」
「アクアライフに載ってないよぉ・・・」

ナミアムダブツ!悲鳴に続いて、ややディティールのある通信!一体何が起きているのというのか?

【アンフィビア イン ザ マッポー タンク】#1終わり

…not to be continued…