長調・短調問わず♭Ⅶ度の和音がⅤの前に用いられるのは後期ロマン期以降にはよくあり、特にフォーレやラヴェルなどの作曲家には幾らでも例を見出すことが出来ます。
フォーレ ヴァイオリンソナタ1番1楽章
フォーレはごく当たり前のように長調でも短調でもⅤの前のⅣやⅡmの代わりに♭Ⅶを用います。これはフォーレが長調と短調を混合したような和声法を用いるので納得がいきますし、弟子のラヴェルもよくやります。
ブラームスなどでも見かけますが、これは古典和声へのアンチテーゼと解釈することが出来ます。あまりにもコテコテのⅡーⅤーⅠを嫌って何か自分なりのオリジナルの響きを生み出そうという努力が音楽の進歩を生み出しているわけですが、この♭Ⅶの和音は短調においてベートーヴェンにも見出すことが出来ます。
ベートーヴェン ピアノソナタ17番3楽章 142小節目から
ベートーヴェン ピアノソナタ17番1楽章 112小節目から
ベートーヴェンの中期は半分くらい初期ロマン派で後期は完全にロマンと言って良いような作品が生まれますが、17番は丁度初期から中期への過渡期あたりの作品でⅤの前の♭Ⅶの和音をフォーレと同じ意図で使っていたかどうかは疑問が残ります。
Ⅱm→Ⅴ7→Ⅰという進行を♭Ⅶ→Ⅴ7→Ⅰとしているのではないか?と疑いたくなるようなケースを散見し、♭ⅦはほとんどⅡmの代理のように響きます。
短調の場合は♭Ⅶはダイアトニックコードなので使うこと自体は調的に何も問題ないのですが、使い方がⅡの代理のようなのでⅡmの第5音を上方変位しているのでは?とこの和音が登場するたびに思ってしまいます。
属7の和音(〇7)の上方変位、下方変位は古典和声で習いますし、長3和音・短3和音の上下同時変位という和音もロマン派では多数存在します。
短三和音(〇m)は短調ではⅡmがⅡm-5になるのでこれは下方変位と同じになり、となると残る可能性は短三和音の上方変位だけになるので、ベートーヴェンやそれに続くロマン派の作曲家はそのつもりで使っているのかもしれません。
単純な可能性の網羅という意味でこういったことはあり得ますが、これは何かの本に書いてあったとか、ネットで見たとかではなく完全に私一人の推測なので何の理論的根拠もありません。
上にずらすのがありなら、下もありでしょう。〇の和音でやっていいなら▲の和音でもやってもいいはずなどの拡大解釈がクラシック音楽の和声法や作曲技法や形式の発展の歴史でもありますので、可能性の網羅という意味では案外あり得ることかも?と思っています。
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