Virtual Mix Rackに組み込まれたVCC


slate digital VCCの使い方について書いてみたいと思います。

VMRの中に組み込まれて使えるようになったVCCですが、
単独で使える時代から素晴らしいプラグインとして
ミックスにおいて好んで使ってきました。


通すだけで明らかに音がアナログになる素晴らしいプラグインですが、
どれをどういう基準で私が選んでいるのかを紹介したいと思います。


全部で6つのコンソールをエミュレートしているわけですが、
今回はVCC CHANNELのみに焦点を当てて見ていきます。


Brit 4k E & G

SL4000 E console

メーカーが公表しているわけではありませんが、
間違いなくSSL4000のEシリーズだと思います。


非常にたくさんのメーカーがモデリングしているコンソールですが、
個人的にはslate digital製のものを一番気に入っていて、
通すだけで音がアナログ的になる素晴らしいプラグインです。



Brit 4kのイコライジング特性

まずはBrit 4k Eを見てみましょう。
挿すだけで40Hz付近からHPFが掛かり、
40Hzから10kHzに掛けて中域が山型にやんわり持ち上がります。

ローの40HzはからのHPFはスマートなサウンドになる印象ですね。


ドライブを多めに回すとそのまま音量が大きくなる感じです。

ドライブを最大まで回した時。

基本的にはイコライジングカーブがそのままで
音量だけが大きくなり目盛りは0から18までありますが、
0から18までドライブを回すと2dB程度大きくなります。

SSL4000はEシリーズととGシリーズがエミュレートされていますが、
Brit 4k E(SL 4000 E)Brit 4k G(SL 4000 G)は非常に似た特性を持っており、
基本的には微妙にイコライジングカーブが異なるのと
Brit 4k Gの方が中域が持ち上がる特性が弱いという違いがあるだけで
目を見張るほどの大きな差はありません。


EとGの比較画像。


ほんのり中域が持ち上がるので、少しだけ音が大きくなったように感じますが、
クセというほど扱いにくいものではないので、
個人的には
Brit 4k Eが一番使用頻度が高いです。


倍音増幅はかなり強烈で、
挿すだけで明確に違いがわかるレベルです。

オリジナルの正弦波

Brit 4k Eの倍音特性

Brit 4k Gの倍音特性

基本的にSSLシリーズは奇数系の倍音増幅が多いですが、
ほかのメーカーのものに対して非整数倍の倍音増幅が多いので、
これが良い感じに歪むポイントなのではないかと思います。

WAVESのSSLも似た特性ですが、
違いがはっきりわかるのはslate digitalの方です。


EもGもかなり倍音が出ていますが、面白いのが
ドライブを回しても倍音の量にはほとんど変化がないことです。
また
EとGで明確に倍音特性が異なるわけでもありません。


個人的にはEの方をよく使いますが、
SSLはソースを選ばないオールマイティーなコンソールとして使用しています。
特に意図がない場合はSSLを選んでいます。


US A

API console

US AはおそらくAPIコンソールのことではないかと思います。
USとAの間にスペースが空いているのは
アメリカ合衆国という意味での「USA」とAPIの「A」の暗喩と推測します。

Brit 4kのイコライジング特性

SSLと同じく挿すだけで30Hz付近からHPFが掛かります。
また僅かに100Hz~400Hz辺りのローミッドがカットされ、
3kHzから10kHz掛けてやんわりブーストもされているので、
音が立つ印象があります。

ドライブが0の状態でも
100Hz~400Hz辺りのローミッドと
3kHzから10kHzのハイの差は2dBくらいあります。

APIを挿すと僅かに音が立つというか、
前に出てくるような感じになります。

ドライブを最大まで回した時。


SSLとの最大の違いはドライブを増やしていくと、
20Hz付近のローがベルカーブで明確にブーストされる点です。


低音ならぬ超低音ですが、ベルカーブは100Hzあたりから
スタートしているので音が太くなる印象があります。


APIのプリアンプもそうですが、
如何にもメリケン的な前に出てくる感じでしょうか。


US Aの倍音特性

倍音特性はSSL同様に奇数系で非整数倍の倍音も
大量に出ています。

ただSSLよりも僅かに控えめな感じでしょうか。
こちらもドライブを回しても倍音の量にあまり大きな変化は見られません。


Brit N

NEVE console

Brit=イギリス、N=NEVEだと思うので、
NEVEコンソールで間違いないと思われます。


Brit Nのイコライジング特性

Brit Nは挿すだけで明らかに音が太くなります。
500Hz辺りから20Hzを頂点に挿すだけで5dB程度の
ベルカーブがあり、低音のトラックの音作りの一環としてインサート出来ます。

EQで音作りをするのも大切ですが、
太さが欲しいときはNEVEコンソールを選ぶのも良いかもしれません。

Brit Nはドライブを最大まで回してもイコラインジングカーブに
ほとんど変化はなく、
僅かに1dB程度音量がブーストする程度なので画像は省略します。


Brit N倍音特性

Brit Nの倍音増幅は控え目です。
ほかのNEVEのモデリングでもこの特性が再現されていることが多いですが、
やや地味な感じで、EQのローブーストも相まって
やはり「太さ」が得たいときに向いているかもしれません。




trident

trident console?

あまり自信がありませんが、

プラグインに出ている三つ叉の槍のようなマークは
三つ叉の槍」=「trident」の暗喩と推測します。

ほかには思い浮かばないのですが、
もしかしたら違うかもしれません。

tridentのイコライジング特性


SSLやAPIと同様に挿すだけでHPFが掛かりますが、
1kHz付近?からシェルビングでハイが盛り上がります。
これはドライブを回していくとその特性が顕著になっていきます。


ドライブを最大まで回した時。

ドライブを回していくと1kHz辺りからかなり明確に
ハイがシェルビングでブーストされていくので
音に輝きが出てきます。


APIと違ってドライブを回してもローがブーストするようなことはありません。
またSSLと低域の特性が似ていますが、
SSLが比較的マイルドに中域を盛り上げるのに対し
tridentはハイに輝きを与えてくれます。

SSLはオールマイティーなタイプで
tridentはハイに輝きを出したいときに選択出来ます。

NEVEはローが太くなる特性があるので、
このように使い分けていくことが出来ます。

trident倍音特性

イコライジングカーブではtridentはハイに輝きを与えてくれますが、
倍音増幅はNEVEと同じで控え目です。



・RC tube
RC tubeは私が調べた範囲では
個体を特定することが出来ませんでした。

何かモデルとなるコンソールがあるような気がするのですが…

名前からもわかるとおり真空管をシミュレートした特性を持っています。


RC tubeのイコライジング特性

やや位相が荒い感じで、相当年式の古いコンソールなのか?と思います。
ほかのコンソールと違いブーストしていくと、
音量がそのまま下がっていきます。


ドライブを最大まで回した時。


音量が下がる=コンプレッサーが掛かっていることを意味しています。




正弦波にRC tubeを通した波形


ドライブが6の時に約2dBのコンプ、18の時は3dB程度のコンプが
うっすらと掛かります。


波形を見ればこのコンプレッサーのアタックタイムは
185msくらいであることがわかります。


本来コンソールのみのシミュレーターのはずですが、
レトロな機種の特性なのかわずかにコンプレッションが掛かるので
これも音作りに応用できます。

RC tube倍音特性

Tube=真空管の名前の通り、やはり偶数系です。
綺麗に音を伸ばしてくれる感じで、まさに真空管の特性ですね。

非整数倍もなく歪むというよりは
綺麗に音を伸ばしてくれる感じです。


全体的な印象としてはレトロな感じなので、
これはほかの5つにはない個性的なサウンドとして
ミックスの中で出番があります。

もの凄く大雑把に言葉にすると以下のようになります。

SSL=オールマイティー。イギリス的な感じ。
API=オールマイティーだけとやや音が立つ。アメリカ的な感じ。
NEVE=太さが欲しいトラックに。
Trident=高域に輝きを与えたい時に。
RC tube=レトロ、ローファイな感じを出したいときに。



あくまで私の独断と偏見に基づく勝手な印象ですが、
要は個人個人がプラグインの特性を見抜き、
自分の出した音に合わせて使いこなせればそれで良いので、
自分なりに使っていく中でどういうソースに対して
どういうコンソールのどういう設定が良いのかは
大いに研究の余地があります。


何もわからなければなんとなく使っているだけで終わってしまいそうです。


VCCはコンソールのシミュレーターというよりは
イコライザー+エンハンサーのような特性を持っているので、
ミックス時に多分にこの特性を応用できます。


アウトボードを使って録音、ミックスをするときも
ある程度同じような考えに基づいて私は行っていますが、
非常にお手軽に効果的な音が得られるからこそ、
しっかりとプラグインの特性を使う人が見抜いてやって行かないと
ミックスにおける他人との差が出しにくいのではないかと思います。


VCCのような素晴らしいプラグインを多少のお金を出せば誰でも買えてしまう時代に
なってしまっているので、
機材を持っているということそのものは
あまり周りに対するアドバンテージになりにくくなってきました。


何十万もするアウトボードは別でも使い方を研究するという点では同じですが、
いくら道具が揃っても結局使うのは人間ですので、
VCCに限らず是非たくさんの音楽製作のツールをもっと
高いレベルで使いこなせるように研究してみてみましょう。
きっと得るものがたくさんあるはずです。


次回以降にVCCのMIXBUSSやVMRのほかのコンプやEQに関しても
書いてみたいと思います。


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