DTMの楽曲が実際の生演奏に比べて劣っている点について、
あるいはどうすれば生演奏っぽくなるかは
DTMと生演奏のミキシングの違い①~④で既に述べた。
今回はイコライザーについて述べたいと思う。
イコライザーの側面から見ると、
中音域のガッツと倍音が密集する高音域の空気感が足りないということが
アナライザーなどを用いるとわかる。
具体的な周波数はどのくらいかというと、
もちろん曲によるので一概には言えないが、
中音域は2.5kHz~3.5kHz。
高音域は7kHz~9kHzというのが私の印象だ。
ここを持ち上げてやると、かなり良くなる。
トラック全体が立つのでお勧めの音域なのだが、
マスタリングで完成した2mixにまとめてこの処理を行っても
あまりいい結果が得られないことが多い。
高音域はブーストしてもわりと良い結果が得られるが、
中音域で2.5kHz~3.5kHzというのは
マスタリングではあまり弄りたくない部分ではある。
様々な楽器の基音が密集している部分なので、
ここをまとめて弄るというのは
ミックスを台無しにしてしまう可能性が高い。
ではどうするのかというと
これは音圧稼ぎのリミッターと同じで
「2mixが完成してからまとめてやればいいじゃん」という安直な手法ではなく、
ミックスの段階で個別に細かく手を入れたほうが良い結果が得られる。
これは私が最近作った楽曲のPROTOOLSの画面だが、
赤丸で囲った部分に中音域と高音域のEQをインサートしている。
楽器によってどれをどのくらい入れるのか?はそれぞれだが、
個別に綺麗に中音域のガッツや高音の倍音や空気感を足していったほうが、
後でまとめてやるよりも遥かに良い結果が得られる。
私のお気に入りのABBEY ROADのRS127とRS135で
中音域と高音域を2dBから4dBブーストしている。
RS127のラックとボックスはブーストされる音域が、
少しずれているので差異を出すにもとても便利だ。
奥に引っ込めたいトラックや前に出したいトラックなどの遠近感も
これでかなり出せるし、フェーダーを弄らなくても
音がハッキリ立ち上がったり、引っ込んだりするのでとても便利。
RS127とRS135はほとんど何も考えずに直感的に使えるので、
耳でイメージしたサウンドデザインを具現化するために
インサートしてブースト&カットを行えば良い。
容易に立体的なミックスが出来上がる。
楽器によっては最初から中音域があったり、高音域があったりするし、
ものによって2dB~6dBの誤差で
気持ちよくなる場所が異なるので、
個別にインサートして調整していくのが一番良い結果が得られる。
私の場合は自分で着想→作曲→ミキシング→マスタリングまで行うし、
そういう方も多いのではないかと思う。
ミックスとマスタリングが繋がった一連の音楽製作作業であるならば、
マスタリングを見据えたミキシングをするべきだと私は思うし、
究極的にはマスタリングでほとんど弄らなくてもいいような
ミックスに仕上げていくのが、個人的な経験としては良いと感じている。
他人の曲をミキシングだけするとか、
マスタリングだけするとか、
あるいは作曲だけして後は丸投げなど色々なケースが実際にはあるが・・・・・
マスタリングで8kHzを持ち上げて高音域のキラキラ感や空気感をプラスするテクニックがあるが、
先ほどのPROTOOLSのインサートの画面でRS135を使って8kHzを持ち上げているトラックが
たくさんあるのはミキシングの段階で既にマスタリングのことを考えているから。
すべてのトラックの8kHzを持ち上げるのではなく、
そうする必要がないトラックもある。
これは低音も中音も高音も全部同じで、
マスタリングでなんとかするのではなく、
ミキシングの段階で最終的な調整で上手くいくように既に下準備を十分にしてある。
もっと言うならシーケンスの打ち込みの段階で既に私はマスタリングのことを考えていて、
「あとでミックスで○○するから作曲の段階で△△しておく」
のような先へ先へと常に未来のことを考えて作業している。
着想からマスタリングまでが作曲だと思っているので、
全部をバラバラで考えるのではなく、
1つの「音楽を作る作業」と考えているのだ。
個人的にはそのほうが良い結果が得られている。