『Papillon -coterie-』 のハルカ様から素敵なSSを頂きました!
ハルカさんがアメンバー200名突破リクを募集されていたので、
リクエストをお願いした所、
第1弾で早速書いていただきました!
私のリク内容は、『蓮の昔の知り合いの女性(元カノ?)が現れ、
自分は身を引こうとするキョーコを蓮が焦って追いかけて告白(orプロポーズ)!』です。
このお話は、オムニバス「W sweet」の設定で書いていただいていますので
もしもまだ「W sweet」を読まれていない方は先にこちら をお読み下さい。
単独でも充分楽しめますが、読んだ方が一段と萌が広がります。
甘くて可愛くてキューンとくるお話の数々です。
今回のお話は切なくてちょっぴり悲しくなるけど、
最後はもちろんハッピーエンド 素敵です!!
ハルカさんありがとうございます
o(〃^▽^〃)o
そしてアメンバー200名突破おめでとうございますヾ(@^▽^@)ノ
W sweet [鼓動 後編]
キョーコはどこをどう走ったか全く記憶がなかった。
気が付いた時にはマンションの自分に当てられた部屋で泣いていた。
夢を見ていた自分に絶望し涙が枯れた頃、のそりと立ち上がり一番大きな旅行鞄を持ってきた。
魂の宿らない瞳で部屋の中にある自分の物を詰め始めた。
全て詰め終え玄関先に荷物を運ぶとおもむろにキッチンへ向かった。
ゴミの袋を出し中に自分の箸や茶碗などを次々とぽとりと入れていった。
陶器同士が当たり弾け割れたが何も気にならなかった。
破片が袋を突き破りキョーコの脚を傷付け、それでもキョーコは黙々と自分の物を捨て続けた。
全てを片付けゴミ袋も玄関先に置くとリビングに入った。
テーブルにコツンと音を立てて『コーン』を置いた時だった。
「キョーコ!!!」
蓮は帰ってきて玄関先の荷物を確認すると驚いた。
灯りの洩れるリビングへ急ぐとキョーコはのそりと立ち上がって蓮の脇をすり抜けた。
生気のないそれは蓮を青ざめさせるには充分だった。
「待って!行かないでくれ!」
蓮は後ろからキョーコを抱き留め、リビングのソファまで連れて座らせた。
「もう、キョーコ以外に俺の体は触らせない」
正面に座り蓮はキョーコを真っ直ぐに見つめた。
「そんなの無理です…」
微かに、しかし蓮の耳にはしっかりとキョーコの声が聞こえてきた。
「無理じゃない。俳優だって辞めてずっとキョーコといる」
「出来っこありません…」
「何が不安?俺はキョーコだけたよ。そうだ、結婚しよう」
「そんな物で人の心は縛れません…」
何を言っても否定的なキョーコに蓮は視線を落とした。
そこで傷付いたキョーコの脚が飛び込んできて蓮はおもむろに立ち上がった。
どこかへ行き戻ってきたその手にはキョーコが捨てた陶器の破片が握られていた。
蓮はキョーコの前に跪いて勢いよくその破片を自分の心臓へ進めようとした。
「だめーーーーっ!!!」
咄嗟に蓮の心臓を庇ったキョーコの手の甲に破片が突き刺さり慌てて蓮は破片を投げ捨てた。
「何やってるんだ!」
「久遠さんの方こそ何をしてるんですか!」
光の宿ったキョーコの瞳からはらはらと涙が舞い降りた。
「心臓を、心を抉り出してでも君に捧げたかった…」
血の流れる手を震えながら取り合った。
「そんな事しなくても…信じますから…1人にしないでください」
キョーコはそっと蓮に身を寄せると痛む手を無視して強く抱き締めた。
「うん、何もかも捨ててもキョーコの側にずっといるよ」
そう抱き締め返す蓮にキョーコは涙を流しながら笑顔を向けた。
「私、稼ぎのない人とは結婚しませんよ。だから俳優、続けて下さい」
YESともNOともとれる結婚の意志に蓮は苦笑した。
<おわり>