幼少時からピアノを習っても、中断なくずっと続けているということのほうが実は珍しいのではないか、と、ピアノ愛好者の大人の方や、大人生徒さんたちとお話して感じるようになりました。
嫌になったわけではない習いごとを中断してしまう理由は
「環境の変化」と、「経済的理由」。
私も10数年のブランクがありますが、理由はまさにこの2つでした。
そう、実は私もあまり、中断してしまう生徒さんのことをうるさく言える立場ではないのです。
ピアノに向かうのが、つらくなってしまった時期が、私にもありました。
(「私には、ピアノしかない」というタイトルの連作でそのことを書いています)
つらいわけではないけれど、モチベーションが落ちていたり、「いつまで続けるのかな」とふと思ってしまったということは、学生時代にもありました。
今は、少なくともピアノを弾くことを自分からやめようと思うことはないのですが、そう思えるようになった理由は、離れなければならない時期があったから、ということが少なからず言えます。
指導者をしている方でも、ピアニストでも、結構やめていた時期がある方は多いのです。
「だから、ピアノを習いなさい」という著書を出されたピアニストの黒河好子先生は、受験でピアノをやめてしまっていた時期があったそうです。
手の故障で休んでいた方も結構多い。
ピアニストとか、ピアノの先生でも中断経験があるのですから、音楽を仕事として志すわけではない学習者の皆さんが中断するのは当然なのかもしれません。
長い人生の中には、優先順位が変わることはあります。20代後半で出産した私は、それから10数年は育児が最優先でした。
環境が変わって、続けるのが困難になる場合もあります。転勤族のご主人と結婚した後輩は、それまでのようにレッスンを受けたり、コンクールやステージに出ることが難しくなりました。
健康の問題もあります。病気で体力が奪われてしまったり、入退院を繰り返してピアノどころではなくなる場合。ご自身でなく、ご家族の介護で消耗される場合もありますね。
それでも。
中断しているのは「やめている」わけではないんですよ。「お休みしている」だけ。そのお休みが、ときに20年以上になってしまうかもしれないけれど。お休みする前と同じようには弾けなくなってしまっているかもしれないけれど。
中断したって、戻ってくればいいんです。
だって、ピアノはそこにいるから。いつでも。あなたが音を出してくれるのを待っているから。
これが私の大事なピアノ。生徒さんたちも使う仕事道具ですが、私の一部でもあります。
私は、「中断経験のあるピアノ教師」です。中断しなければならない辛さや、復帰したくてもできなかったもどかしさ、復帰後元に戻らない焦り、ブランクを「黒歴史」と笑えない余裕のなさ、全部経験しています。
また、ピアノの世界に戻ってきたい方、私がお話聞きます。よろしければ。