荒川小屋の裏から登りが始まる。

 
登りの途中に水場がある。


 
振り返ると、荒川小屋が小さくなっている。背後には赤石岳が聳える。

 この辺りは、高山植物のお花畑として特に有名。ミヤマキンポウゲ

 
シロウマタンポポ(ミヤマタンポポ)

 
お花畑は、柵で保護されている。
 

 
クジャクチョウ


 
ハクサンフウロ

 
お花畑はとても綺麗だが、登りは結構きつい。
この日初めて、後ろから来た人に道を譲る。赤石小屋からとのこと。

 
お花畑のジグザグ登りから、トラバース道に。ザレていて、慎重に行く必要がある。


 
イワギキョウ

 
 ようやく稜線に。案内板に荒川前岳の表示はないが、地図によると、稜線を左に行かないといけない。案内板の所に荷物を置いて、デポする。 

 
といっても、ほんの数分の距離。11:35着。

 
荒川中岳(3,083m)山頂。12:00着。

 
 中岳避難小屋と悪沢岳

 
とてつもなく大きい。コースタイムでは1時間半。しばらくは展望の良い尾根歩き


 
コルまで結構下る。その先は、かなりの急登のようだ。

 
お花畑は続いている。タカネマツムシソウなど


 
ジグザグの道の辺りから、岩と砂の急峻な登りが始まる。

 
振り返ると荒川中岳の避難小屋が小さく見える。


 
コバノコゴメグサ

 
岩を登る箇所あり。

 
 振り返ると、荒川岳が随分高い。ということは、まだまだ登らないといけない。

 
 赤石岳。右横に大きく見える。

 
山頂が見えてきた。しかし、足はなかなか進まない。

 
13:25 遂に悪沢岳(荒川東岳)山頂に到着。今回の登った山の中で、最も高い標高3,141m。

 
遅い昼食。百間洞山の家のお弁当。エビ天が入っているなど、充実の内容。 


 
またまた他に人がいないので、頂上を占領中。
まだ、千枚小屋まで、コースタイムでは1時間45分かかる。
とはいっても、天気はもちそうだし、せっかくなので、味わってゆっくり行くことにする。

 
ゴジラみたいな岩

 
頂上から、急降下。下りで足のマメが痛む。

 
望遠で見ると、聖平小屋の屋根が見える。

 
タカネナデシコ

  
聖岳。見る方向によって形が変わる

 
14:20 丸山(3,032m)着。まだ、3000m超。
 
  
椹島の方向

 
話に聞いていた、丸山と千枚岳のコルにある「危険な岩場」
疲労もピークの中、結構怖い。

 
振り返ったところ。高度感あり、両側滑落の危険もある。

 
さらに連続でもう一発。真面目に怖かった。北アルプスだと、もう少し鎖や梯子等のサポートがありそうなのものだが。


 
岩場の上部。回り込む。下りだと結構危険なのではと思う。最後まで気が抜けない。

 
そんなこんなで最後のピーク千枚岳(2,880m)に14:50到着。


 
今日、千枚小屋に入り、泊まる人が登っていた。

 
悪沢岳を振り返る。

 
千枚小屋へは、比較的歩きやすい道が続いていた。山小屋周辺はお花畑がある。


 
千枚小屋

 
随分遅くなったが、15:40、無事に千枚小屋に到着する。千枚小屋はこれから縦走に向かう人と、赤石小屋から来た人が多く、昨日百間洞山の家に泊まった人で、今日千枚小屋泊は、私以外には、悪沢岳で私を追い抜いていった若者だけだった。

明日の椹島のバスは10:30.これを逃すと次は13:00になってしまう。
千枚小屋から椹島までコースタイムは4時間50分なので、朝食(4:30)を食べずに出発するのが無難かと思っていたら、朝食食べて、小屋の前からの日の出を見てからでも十分間に合いますとのこと。大丈夫だろうか。

 
2009年火災で焼失した千枚小屋は、今年の7/16から、この新建物で営業再開。

 
小屋のすぐ裏のお花畑

 
17:00 夕食。

 
夕食後、ここまでの無事を祝うかのように虹が出ていた。 
よくここまで頑張れたものだ。今日はぐっすり眠れそう。


第四日目 8/24(金) 晴れ

千枚小屋(2,600m) 5:20発 →5:30着 駒鳥池 5:35発 →6:05着 見晴台 6:10発 →吊り橋 8:40着発 →滝見橋 8:45着発 →9:00着 椹島ロッジ(1,120m) 10:30発 (東海フォレスト送迎バス) →11:25着 畑薙夏季臨時駐車場
■行動時間:3時間40分

 
朝食4:30 今回の山での最後の食事。がっつり食べる。 

 小屋の正面。「富士が見える千枚小屋」の看板に偽りなし。

 
今日もいい天気。登る人たちは続々と出発していく。

 
日の出5:10頃。しっかり見届けて5:20頃下山開始。1,500mを一気に下降する。

 
マメに絆創膏を貼っただけだが、快調なペースで下っていく。
駒鳥池。なかなか神秘的。オコジョも出没するそうだ。

 
見晴台。正面は赤石岳。
道は整備されているが、かなり降りたところに岩場の登下降があったりして気が抜けない。また赤いテープの目印はあるが、見落とすと、道を外したりする。

 
今回は吊橋に始まり吊橋に終わる。

 
滝見橋

  
滝見橋のたもとで車道に出る。車道(砂利道)歩きは登りでつらい。
 
 
コースタイムを1時間10分短縮して、9:00椹島ロッジ到着。


 
しばらくしたら、赤石岳の大蔵尾根を降りてきた人が増えてきた。

洒落た売店。バスの整理券をもらう。畑薙湖沿いにある赤石温泉白樺荘で一風呂(500円)浴びたいところだが、その後の運転が眠くなりそうなので、ここでシャワーを申し込む。こちらも500円。

 
湯船にお湯は張っていないので、シャワーのみだが、実に4日ぶり。顔、肩などかなり日焼けしてしみるが、本当にさっぱりした。途中の高速道路のサービスエリアに入るのが少々気がひけるところだったので良かった。

 売店の裏は芝生になっている。のんびりするには良いところだ。10:30定刻のバスに乗る。百間洞であった逆コースの人たちには会わなかった。さすがに一本早い8:00のバスには乗ってないと思うが。

畑薙駐車場が近づくにつれて、車のエンジンがかかるか等、心配になる。4日間、炎天下置きっぱなしということなので。ちょっとドキドキしたが、大丈夫だった。運転席に座ると、終わった気持ちになるが、東京までは、4時間以上かかる。すぐ出発。


 
帰る途中、なかなか来れなそうもないので、井川を観光する。これは、井川大橋。

 
2トンまでの車が渡れるという吊橋。しかし「転落注意」とあるが、転落したら間違いなく大事だ

 
当然すれ違えない。これを車で渡るには、度胸がいる。

  
大井川鉄道・井川駅。駅員がいて売店がある。観光客らしき人が何人かいた。

後は行きと同じ、県道27号線で帰る。行きと違って、昼間だと全然印象が違って明るい雰囲気だった。ただ、道が細くすれちがいにくい中で、大型の工事車両が通るため、曲がった道を、待避場所までバックさせられたりして苦労する。県道27号線は、新静岡ICにつながっていて、スムーズに高速に入れる。

 
混雑表示があったが、NEOPASA 駿河湾沼津SAに寄っていく。新しいSAは賑わっている。山の中とのギャップがすごい。

 無事に帰り着くことができた。

とにかく南アルプスは大きかった。危険な場所もなくはないが、危険と事前に分かる場所ばかりなので、リスクは少ないと思った。とにかくきついことは確かだが、天候の急変や体調不良がなければ、何とか歩ききれるように思う。
ただ、とにかく登下降が激しく体力を消費する。歩くのに精一杯となるので、本来したかった、思惟をめぐらすことはなかなかできなかった。

このエリアの魅力は、日常と隔絶した感覚を味わえることだと思う。今時は海外でも電話などが通じたりするが、ここはほとんどつながらなかった(ちなみに、ドコモはかなりつながるらしいが。)。とても不安ではあるが、慣れると気にならなくなる。

ただ、単独行ということもあるが、今回の山行はいろいろ心配ばかりしていた。ある意味、都会のストレスから逃れるために、新たなストレスを抱えてしまったようなところがあった。2日目の後半から徐々に本来の調子が出てきたが、久々の本格登山で、心配性の度が過ぎてしまったようだ。それでも都会のストレスよりは全然楽ではあるが。

それにしても、4日にわたり天気が良く、最高に恵まれたときを過ごすことができた。休暇も含めて、こうした環境を得られたことに感謝したい。

次はいつ山籠りできるだろうか・・・。

第三日目 8/23(木) 晴れ

百間洞山の家(2,400m) 4:50発 → 百間平 5:50着発 →標柱 6:50着発 →7:35着 赤石岳(3,120m) 赤石岳避難小屋 8:00発 →小赤石岳(3,081m) 8:30着発 →9:45着 荒川小屋(2,610m) 10:00発 →11:35着 荒川前岳(3,068m) 11:45発 →12:00着 荒川中岳(3,083m) 12:10発 →13:25着 悪沢岳 13:50発  →丸山(3,032m) 14:20着発 →14:50着 千枚岳(2,880m) 15:10発 →15:40着 :千枚小屋(2,600m) (泊)  
■行動時間:10時間50分


朝食は4:30。写真を撮り忘れたが美味しい食事だった。今日は歩行時間が10時間を超える長丁場。とにかく早出ということで、4:50に朝食を食べてすぐ出発。


小屋からの登りはかなりきついと言われていたが、一番のりもあって快調に進む。

 
荒川岳、悪沢岳、遠望。今日も快晴。

 
遠く、北アルプスもはっきり見える。

 
急な登りを過ぎると、百間平。なだらかで気持ちのいい場所だ。


周りの展望もよく、心弾む。

 
目指す赤石岳は、標高差340m。

 
後方は昨日苦しめられた、兎岳、中盛丸山などの峰々。 

 
赤石岳。中腹に大斜面トラバースの道が見える。


大斜面下コルからの道。赤い石のゴロゴロした上を歩くが、安定感はある。

 
聖岳。あれを登ったのだと思うと、嬉しくなる。

 
荒々しい山肌。

 
標柱。ここから急坂と地図にある。確かにジグザグの急登が始まる。

 
標柱には、30分で赤石岳避難小屋とある。あと一息とつぶやきながら登る。

 
ガレ場が続く。

 
二重山稜の底へ下っていく。


 
富士山が端正な姿。

 
百間クマ注意とあるが、ここで聞かされても・・・。

 
チシマギキョウ

 
小屋から頂上まで2~3分。ただし、荒川岳の縦走路は頂上を経由しないといけないので、注意。小屋から行けると思ったら、行けなくて、小屋と頂上を2往復することになってしまった。まあ、大したことないけど。

 
7:35 待望の赤石岳山頂(3,120m)。他に人はおらず、独占状態。
深田久弥が「私の記憶にあるあらゆる頂上のなかで、赤石岳のそれほど立派なものはない。」と記しているが、そこまでかは分からないものの、立派さは感じる。

 
これから向かう、荒川岳(左)と悪沢岳。


北アルプス遠望

 
聖岳 


 
赤石岳避難小屋。おやじさんが話しかけてくれる。
主人:どこから?
私:百間洞です。
主人:この後、降りるの?
私:いえ、千枚小屋まで行きたいんですが、行けますかね。
主人:それはいいね。すぐ降りちゃうんじゃもったいないから。大丈夫、時間早いし、今日は天気ずっといいから。いいカメラ持ってるね。写真一杯とってね。

そっか、行けるのか。一気に気が楽になった。名物おやじさん、噂どおりいい人だった。

 
小屋の正面から富士山。朝はさぞ綺麗なことだろう。

 
名残惜しいが先を急ぐ。意外と小赤石岳らしきものは、遠くて高い。

 
振り返ると赤石岳がだいぶ遠くなった。

 
歩いてきた途を振り返る。途の半ばは越えたかと。

 
気持ちのいい稜線歩き。だが、最後は結構登らされる。8:30 小赤石岳(3,081m)頂上。

 
赤石岳を振り返る。

 
荒川三山。といっても悪沢岳は、別の山にしか見えない。

 
大聖寺平。この手間にあるダマシ平は、大聖寺平と間違えられるので、その名がついたそうだ。

 
稜線から外れてトラバース道へ。荒川岳が聳える。

 
ぐんぐん下って、荒川小屋へ。9:45着。

 
明るい感じの山小屋。

 
すいか300円をいただく。山の中でスイカとは、担いでくるのも楽ではないだろうが。
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第二日目 8/22(水) 晴れ

聖平小屋(2,300m) 4:40発 →聖平 4:45着発 →5:10着 薊畑 5:15発 →小聖岳(2,622m) 6:05着発 →7:25着 前聖岳(3,013m) 7:55発 →10:15着 兎岳(2,818m) 10:30発 →小兎岳(2,738m) 11:20着発 →12:25着 中盛丸山(2,807m) 12:50発 →13:50着 百間洞山の家(2,400m) (泊)
■行動時間:9時間10分


朝食4:20 昨日の疲れは残っていない。ちょっと安心。なにしろ、今日はいきなり聖平小屋から前聖岳まで、約3時間、標高差710m、平均斜度14度の急登から始まる。まだ暗い4:40に出発。ヘッドランプが接触不良のようで、歩く衝撃ですぐに消えてしまうが、目が慣れるとランプなしでも歩ける明るさだった。


聖平までは、木道などの歩きやすい道。 ここから稜線の道となる。

 
既に雲海の上

 
光岳方面を望む。天気は快晴。

 
薊畑で日の出。5:15くらい。


遥か前方に聖岳がきれいに望める。


ホソバトリカブトとマルバダケブキ。登山道はお花畑の中を通る。まだ森林限界を超えていない。このあたり、急登が続くが、それにしても呼吸が苦しすぎる。
五歩歩いて、ひざに手をついて肩で息をする感じ。まるで富士山の頂上付近のよう。昨日から感じていたことだが、贅肉のせい、というほど太ってないし、心臓疾患? たどりつけるのか、俄然不安・・・。




 
こちらをあざ笑うかのごとく聳える前聖岳。

 
這うように、ようやく小聖岳(2,622m)に到着。6:05着。聖平小屋から1時間25分。コースタイムより、かろうじて5分早いぐらいのペース。

 
せっかく苦労して登ったのに、ここから急降下。ガレ場を歩く。

 
シコタンハコベ

 
果てしなく遠い頂上
 
振り返ると、苦労して登った道が続いている。降りていく人は、聖平小屋往復とのこと。何時に小屋を出たのだろう


空は快晴。しかし、登れども登れども頂上には着かず。
相当に苦しい。


7:25 苦労の末、遂に念願の聖岳(3,013m)山頂。
深田久弥が「日本アルプス三千米峰として最南の僻遠の地にあり、容易に近づきがたい印象」と記した聖岳は、自らが書いた「日本百名山」によって、いまや僻遠の地ではなくなり、登山者も多くなったが、とはいえ、簡単には登らせてはくれない山だった。

正面に赤石岳(3,120m)。明日登る山なのだが、まだ、あまりに遠く、大きい。



北アルプス、槍・穂高連峰がはっきり見える。


中央アルプス、後ろは木曽御嶽山(3,067m)

 
仙丈ヶ岳(3,033m)

これから登る兎岳(2,818m)。聖岳からは見下ろすことになるので、容易行けそうな気になるが、それが大きな誤りであることに、この後気づかされる。
 
 
ってきた後方。光岳(2,591m)方面。

 
雲海の下、駿河湾

 
富士山(3,776m)

 
三角点のある奥聖岳(2,978m)は往復45分。先の長さを思い、次回に持ち越すこととしていた。頂上で会った若者は「奥聖岳っていう名前が良くないですよね。」と言いながら、行くのを悩みながらも向かって行った。

 
数える山が多すぎる。360度の展望。至福の時間。30分ほど頂上にいたが、自分の他は3人。いずれも逆方向から来た人たちだった。先を思うと、あんまりのんびりもしていられない。

 
前聖岳から聖兎のコルまで、400mの一気の下り。最初はゆるやかな下りだが、その先は急激な下りになる。

 
正面に赤石岳が聳える。

 
目指す兎岳は、聖岳頂上から見るのとは違って、圧倒的な存在感。 

 
タカネマツムシソウ

 
コウメバチソウ

 
イワツメクサ

 
聖兎のコル付近。激しい下りに、下りにもかかわらず、息が苦しい。振り返ると、最早戻ることを許さないほどに高く聳える聖岳。まさに進退窮まる感じがする。

ここからの兎岳の登りは、聞いていたとおり、厳しいものだった。喘ぎ喘ぎ、何度も立ち止まって息を入れながら登っていく。「歩き続けている限り、かならず頂上に着く。あきらめない限り、登れない山はない。」と呪文のように唱えながら。途中、兎岳避難小屋への道を分けるが、寄っていく余裕がない。

 
10:15 ようやく兎岳到着。コースタイムは聖岳から2時間だが、20分も余計にかかった。我が体力は大丈夫なのだろうか。

 
相変わらず、赤石岳は、遠くに大きく聳えている。 

 
仙丈ヶ岳、甲斐駒ケ岳、塩見岳、間ノ岳。荒川岳。3,000mの峰々が連なる壮観な眺め。 加藤文太郎が「単独行」で「互いに譲らず、高く聳えているのを見ては痛快とは叫ばずにはいられぬ。」と書いているが、まさにそんな心持ち。


手前から、中盛丸山、大沢岳。兎岳の急坂を下りると、すこし落ち着いた登りに。小さなピークを越えて、小兎岳の登りに。ここで、あることに気づく。
急坂でもペースを落とせば、息が切れない、という当たり前のこと。
どうも始めから、ハイペースすぎたということかと。コース標準タイムを半分くらいで歩く、若かりし頃のイメージを引きずっていて、しかも、南アルプスということで知らず知らずのうちにオーバーペースだったようだ。そんな情けないことだが、理由が分かってかなり安心した。

 
タカネビランジ。南アルプス固有種


 
振り返ると、兎岳が大きい。

 
ハクサンフウロ

小兎岳を越え、登り下りを繰り返す。正面には、絶望的に中盛丸山が聳える。八ヶ岳の主峰・赤岳のような鋭鋒に見える。これを越えないとたどりつけない。
オーバーペースにならないように、気をつけながら、一歩一歩確実に急坂を登って行く。これを越えれば、後は、百間洞まで下るだけと言い聞かせながら。

 
オヤマリンドウ

 
12:25 中盛丸山の山頂に到着。山頂には案内板などはない。聖平小屋から常に先行していたご年配のグループに追い付いた。それほどペースが落ちていたということはなかったようだ。それにしても、さすが南アルプス。山の一つ一つのスケールが桁違いに大きい。
ちなみに、中盛丸山は、AUスマホが使えた。「ここまで順調」とメールを送る。順調というには無理があるが、心配をかけても仕方がない。



とはいえ、ここまで来れたので、ちょっと安心して、遅い昼食。聖平小屋の弁当だが、美味しく食べる。

 大沢岳(2,819m)。先ほどのご年配のグループは目指すらしい。私は、霧が出てきたことを理由に、トラバースして百間洞に下ることにする。 

 
トラバース道の分岐まで、わずかに登るのさえ、つらいというのが正直なところ。

 
振り返ると中盛丸山が。名前がいまいちな気はするが、なかなか堂々たる山容だ。確かに「盛丸」という感じでもあるのだが。

 百間洞への下り。ダケカンバと高山植物の道とのことで、確かに景色としてはいいのだが、石がゴロゴロして、歩きにくい箇所が多い。


 
右後方に聖岳。北側の沢にはまだ残雪がある。

 
百間洞山の家は、まだまだはるか下。疲労困憊・・・。

 
13:50到着。百間洞山の家は、聖岳と赤石岳の間にあり、どちらかを通らないと下界に降りることができないという厳しい場所に位置するが、小屋の前を清流が流れ、とても趣がある。

宿の受け付けで、明日の宿泊先を尋ねられ、千枚小屋と答えたが、後で、大沢岳に寄ってからきた年配のグループが、中岳避難小屋と答えているのを聞いて、千枚小屋まで行けるか不安になる。中岳避難小屋泊まりだと、バスの関係で一日帰るのが遅くならざるを得ないだろう。

 
17:20夕食。夕食としては2巡目の順番。名物とんかつ。こんな山の中で揚げたてのとんかつが食べられるとは。小屋のスタッフの方も感じがよく、アットホームないい雰囲気。

寝る場所は2階の一角。畳四畳ぐらいに3人が一緒に寝ることになる。一人が自分より若そうな町田の方、もう一人は埼玉に在住のご年配の方。二人ともいろいろな山へ行かれていて、話しがはずむ。いずれも千枚小屋からの自分と逆コース。百間洞から稜線までの登り、赤石岳の登り、荒川岳の登りはかなりきついだろうとのこと。とはいえ、「百間洞から聖岳までも、数多くのピークを越えなければならないので、結構大変だと思いますよ。」と伝える。このコース、どちらから行こうと、楽なはずはないということかと。

ご年配の方は、現役引退されてから、山に行くようになったそうだが、とにかくお元気。自分が今日バテた話をしたら、自分も40代の頃が一番体力がなかった、山にしょっちゅう行くようになって元気になったとのこと。自分もそうならいいが、同じ歳の時にここに来れるだけの体力があるというイメージがもてない。

20:00消灯。しかし、疲れているはずなのに、またしても眠れず。
寝る前に読んだ、雑誌「山と渓谷」の記事が気になる。南アルプスは、木々が多く森が深いため、遭難者の捜索は苦労を要するとのこと。遭難者の捜索の20%は民間ヘリを使わなければならないそうで、その割合は、北アルプスより高いそうだ。しかも不明者を発見できないケースも多いようだ。そもそも、この百間洞で、体調を崩したりしたら大変なことになる。なんて考えると、不安になる。

などと考えていると、いてもたってもいられなくなり、12時前にトイレに行く。トイレは地下1F。人が通ると階段に自動的に灯りがつくので、灯りは特に不要だ。

結局のところ、この歳になると、頼りになるのは、自分。これは疑いない。ただ、この瞬間、何が不安かといえば、励ましてくれる人が誰もいないということだ。もし日常において、自分に自信がないことをやらなければならない時には、家族や友人がきっと励ましてくれるだろう。ここではそれが期待できない。通信が遮断され、周囲に自分を知っている人がいないというのは、自分に自信が無いときには、なかなか厳しい環境だということを実感した。

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第一日目 8/21(火) 晴れ

畑薙夏季臨時駐車場 6:45発 (井川観光協会送迎バス) →7:50着 聖岳登山口(1,140m) 7:55発→9:00着発 聖沢吊橋 →12:40着 岩頭滝見台 12:45発 →14:00着 聖平小屋(2,300m) (泊)
■行動時間:6時間05分

 
5:10起床。暑くはなかったが、車の中は寝付かれず、寝不足。まあ、夜行列車の座席で寝るよりはましかと。
身支度をして、6:20頃、駐車場入口へ。7~8人ぐらいの人がいたが、東海フォレストのバスを待っている人が多いようだ。今日は臨時バスが出ないとのことで、最初のバスは8時。もうちょっと早いバスの便があるといいのだが。
井川観光協会の送迎バスは、定刻6:45の到着。予約のある人から乗車させていた。予約しておいてよかったと思うが、結局全員乗れた。


畑薙第一ダムの堰堤上を渡っていく。沼平駐車場で数名が乗ってきて、バスの座席数22名のところ18名まで埋まった。年配の方が多く、自分が一番若い感じだ。


沼平ゲート。ここから一般車両は通行できない。ちょっと不思議な熊の絵。
ゲートから先は、路上に落石が多く、その都度、運転手がバスを降りてどけるので、なかなか進まない。
茶臼岳登山口である、畑薙大吊橋で3名が下車。
畑薙湖が終わり大井川沿いに進むが、さすが大井川、ここまで上流に来ても荒々しい風情。また、対岸には大きなガレがいくつもあって、迫力がある。さすが南アルプス、いちいちスケールが大きい。でこぼこ道に揺られること約1時間、7:50にようやく聖岳登山口に着く。標高1,140m。標高2,300mの聖平小屋まで、標高差1,160mの登りが始まる。

 
ここまでの長い道のりを思うと、気合が入らずにはいられない。ツェルトやコンロ、非常食を数日分詰め込んだザックも意外に軽く感じられ、少し早目のペースで登り始める。これが後で窮地に追い込まれる原因になるとも知らずに。


植林の森の中の、ジグザグの急登。息が切れて苦しい。


日が当たらないので、暑くはない。それが救い。


9:00 聖沢吊橋。ペース的には順調ながら、体力的にはかなりつらい。
この後も急坂が続く。


ところどころにこうした案内表示がある。まだまだ聖平小屋は遠い。「乗越」のあたりか。


再び吊橋。踏み板がずれているあたりが、南アルプスらしい感じ。


これまで、ほとんど展望がなかったが、木々の合間から聖岳が見えるようになる。
あまりに高い。中央の鋭角の頂が前聖岳(3013m)、右の平らのが奥聖岳(2978m)。
 

 
ガレ場。滑落の危険もあるが、トラロープで支持というのが、北アルプスとは違うところか。


沢を横切る。木がない場所では、日差しが痛いくらい。
体力的にも既にバテバテ。あえぎながら登る感じ。

 
ホソバトリカブト。あちこちに群生があって綺麗。

 
息が上がって、休み休み。なので写真も多い。

 
急登の合間に、遠くに滝が望めるうようになってくると、やがて岩頭滝見台に到着。足元の切れたった岩の頭から、対岸の二本の滝が望める。

 
日本百名山の著者深田久弥が、「こんな不便な山の中になければ、天下に名瀑にされてしまうだろう。」と評した滝は、かなり上部から連続して続いていて、確かに見事。ちなみに、この沢は聖沢の支沢の前聖ノ滝沢で、この滝は「聖沢大滝」とは別モノ(聖沢大滝は一般登山道からは見えない。)。 しかし、この沢を登ろうという人がいるのだから、すごいものだ。


色とりどりの花。傾斜が幾分楽になる。

 
望遠で、遥か前方に聖平小屋が。まだ、ここから一時間はかかる。

 
随分、丸太の荒っぽい橋だなと思ったら、

 
元あった橋は流されていたようだ。自然の脅威。

 
聖沢上部。ここまで来ると小屋は近い。このルートは、小さい沢がいくつもあり、水は欠かない。水を含ませると冷たさが持続する「MAGICOOL」が、暑さ対策になかなか役立った。


14:00聖平小屋に到着。コースタイムより若干短かったが、疲労困憊というのが適切な表現。


ウェルカム・フルーツでのお出迎え。


15時過ぎから、急に霧が立ち込めてきて、この後、視界が利かなくなるほどになった。気温も低くなり、肌寒い。その後、雨も降ってきた。
都内の女子高の山岳部30人以上がテントを張っていた。今日聖岳を登頂したそうだ。大したものだ。昨今の「山ガール」ブームを受けて、下級生の方が人数が多いとの事。引率の先生も大変だろうが、いい経験になることだろう。


16:30 夕食。トン汁が温かく、具沢山でありがたい。

1階の様子。山小屋は綺麗で居心地がいい。
小屋で逆コースから来た人の話が聞けた。その人によれば、最も歩行距離の長い三日目(百間洞-赤石岳-荒川三山-千枚小屋)より、明日の二日目(聖平-聖岳-兎岳-中盛丸山-百間洞)の方が、小さなピークが多く、アップダウンが激しく体力的につらいだろう、とのことだった。特に、兎岳、中盛丸山の登りは、こちら側から行く場合、相当にハードだろうとのこと。ついつい歩行時間が10時間を超える三日目を気にしていたが、やはり二日目もきついのかと。そもそも、まだ一つの山も登っていないわけで、体力的に持つのか、自信はないが、頑張るしかない。


18時すぎ、雨があがり、霧も晴れた。小屋から望む上河内岳(2803m)。明日も晴れそうだ。
体力の回復を願う。

ちなみに、昨日も睡眠不足だったにもかかわらず、8時消灯過ぎても寝付けず、23時くらいに気晴らしでもないが、小屋から約100m離れているトイレに行ったりした。スマホが全く使えないので、寝付けないと、することが本当に何もない。
子供の頃、父親と山に行ったとき、「眠れなくても、目を閉じているだけで身体は休まるから、無理して眠ろうとしなくてもいい」と言われたのを思い出した。あの頃の父親は、山では自分にとって頼りになる存在だったということを、たった一人の今、実感する。今は自分一人で乗り越えるしかない。それは登山に限らないことだが。
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自分が、学生あるいは会社に入ってしばらくの時期は、というと随分昔の事になるが、気の向くままに山に行くことができる時期だった。本格的な山に行くときは、だいたい一人で行っていた。自分のペースで行けるメリットもあるが、一人でいろいろ考えるのが好きだった。

その頃、南アルプス南部というと、テント担いで、何日も歩くイメージで、単独行の身としては、なかなか行く気になれずにいた。一人でテントとなると、どうしても荷物が重くなるし、日中一人の分、夕方山小屋で人と話をするのが楽しいわけで、テントで一人というのはちょっと寂しい、というのもあって気が進まなかった。

ところが、空前の中高年の登山ブームのおかげか、はたまた百名山ブームのおかげか、このエリアも、山小屋やアクセス等、改善していて、小屋泊で十分行けるなど、知らないうちに随分身近になっていた。そんなわけでいつか機会があれば、と思っていたが、今年は、長期の休暇がとれ、しかも家族の事情でまとまった旅行には行けないということで、思ったよりもその機会は早くやってきた。

よし、「南アルプス南部」に行こう。
前夜泊二泊三日で赤石岳(3,120m)~荒川三山(荒川前岳:3,068m、荒川中岳:3,083m、悪沢岳:3,141m)を狙っていたが、一日追加すれば、どうやら聖岳(3,013m)にも行けることが分かった。次に行ける機会がいつになるか分からない、となれば、まとめて縦走しようと考えた。
  
 さて、これらの山は、馬の蹄鉄のような形となるため、行き方としては、椹島を起点として荒川三山から左回りのルートと、聖岳登山口を起点として、聖岳から右回りのルートと考えられる。荒川三山からの左回りのルートの方が、総歩行時間は短くなるため一般的とされるようだが、以下の理由から右回りルートとした
①登山口に行くためには、東海フォレスト送迎バス(畑薙第一ダム-聖岳登山口-椹島)と、井川観光協会バス(井川-畑薙第一ダム-聖岳登山口)の2つバスのいずれかに乗らないといけないが、東海フォレスト送迎バスは8/21の出発日には、畑薙第一ダム発8:00が最初であるのに対して、井川観光協会バスは6:45発であること
②左回りだと、帰りに、聖岳登山口から椹島までバスまたは歩きで一旦戻らないといけないこと
③聖岳登山口を起点として右回りの方が、危険箇所が登りになり、より安全と思われること。

というわけでスケジュールが固まった。
なお、バスの情報は、静岡市のホームページに詳しく載っている。
http://www.city.shizuoka.jp/deps/kouiki/kankou_alpus_top.html

ただ、このエリアの最大の問題は、電波がとどかず、スマホが使えないということだ。どうやらドコモは比較的通じやすいようだが、自分が使っているauはかなり厳しいらしい。これは困る。疲れや悪天候で、予定より手前の小屋で宿泊することになると、このエリアでは挽回はほぼ不可能で確実に一日余計にかかることになるので、下山日が変わってしまう。

これでは家族に心配をかけてしまう。それでも、途中の赤石岳山頂や大聖寺平では通じるというネットの情報があった。それに賭けることにする。もっと心配なこととして、もし道に迷ったり滑落した時、救助要請をしようにも連絡がとれないことがある。とはいっても、人はいるだろうし、道に迷うことのないエリアだろう
。とにかく無理せず、慎重に行動を、ということになるが、まあ、それは電話が通じても同じことかと。

本格的な山に行くのは本当に久しぶり。旅行に行く前は、普通は楽しみなものだが、本格的な山に行く前は、大丈夫か、危険箇所は無事にいけるか等々、緊張感が先にたつ。今回は特にそう。では、何で行くのかといえば、「頑張ることで、自分への信頼を確認することができるから」かと。家庭も仕事も少々無理はあるが、自分を取り戻しに、頑張ろう。


前日8/20(月)
東名川崎IC 20:00発 →第二東名・新清水IC 21:30発→畑薙夏季臨時駐車場25:20着(仮眠)

お盆明けということも、時間が遅いこともあるが、高速道は空いていた。ただ、足柄SAは「混雑」と表示されていた。
途中、車窓右手に富士山が見えるが、中腹より上に転々と明かりがはっきり見える。山小屋の灯りか。賑わっていることだろう。

車は快調に進むが、自分のナビは、古くて第二東名がないため、リルートばかりでせわしない。こうした中で、降りるインターを間違えるという初歩的ミスを犯してしまった。

第二東名ができて少し時間が短縮できることになったが、第二東名ができる前は、東名清水ICから行くということだったので、第二東名では、そのまま新清水ICから行くのかと勝手に思い込んでいたが、実はその次の新静岡ICから行くと、直接県道27号線につながっていて、そのまま行けるのだった。気づかず新清水ICで降りたので、むしろ、従来の東名清水ICで降りるよりも遠回りとなってしまい大幅にロスタイム。

 
そんなわけで、22:00 本来通らないはずのJR興津駅に寄ってみた。20:15以降は券売機のシャッターも下りて無人駅となるようだ。

遠回りとなってしまったが、清水駅付近で深夜にやっているガソリンスタンドを見つけて、満タンにすることができたので、いいことにしよう。県道67号線沿いの渋川橋東交差点にあるガソリンスダンドで22:30に給油した。

清水からは国道1号線の静清バイパスから、県道74号線に入るが、工事で迂回箇所が多く、流通センターからこども病院間で道に迷う。こんなことで無事につくのだろうか・・・。

県道27号線(安倍街道)に入ってからは、安部川沿いに進む。途中で、このルート最後のコンビニという看板のあるコンビニに立ち寄り、朝食等を購入。既にスマホの電波は微弱。メール等しておく。

道は、県道29号線(梅が島街道)を右に分け、次に県道189号線(三ツ峰落合線)を左に分ける。県道189号線も井川に通じているが、がけ崩れで現在通行止めとなっている。道は片側一車線で民家も少なくなり、本格的な山道。途中から民家は途切れ、完全に真っ暗。既に23時ということもあってか、対向車も一台もなく、前後の車もなく、完全に自分の車だけ。FM放送が入るので、心細さは紛れるが、道はかなり曲がりくねっていて、ヘアピンの連続。神経を使う。スマホの電波は入らず、ここで脱輪や車の故障があると、完全にお手上げな状況。

あちこちで道の補修がされているが、そうした看板などを見ると安心するくらいの何もない山道。井川に行くまでにたぬきに3回遭遇。たぬきでもいてくれると嬉しい。山道をひたすら登っていくと、途中に口坂本温泉を通るが、道の下方に温泉があるらしく、道からは明かりは一切見えず、かえって寂しさがつのる。間違いなく、こんな深夜に一人で運転するような道ではない。

そうこうしているうちに、ようやく富士見峠。かなり安心する。深田久弥の「わが愛する山々」によれば、峠には井川林道開通記念塔というのが立っているそうだが、無論真っ暗で、何も分からない。「それによると、この道路は延長25キロ、工費2億5千万円、3年かかって完成した。」とあるのだそうだ。

富士見峠からは下り。相変わらず、曲がりくねった下りが続くが、ところどころに井川の明かりが見えるようになってきて、心が弾んでくる。
やがて完全に下って、トンネルを抜けると、井川ダム。堰堤上を渡っていく。渡った先の中部電力の広報館である井川展示館は、まるでホテルのように明るく見えていた。その先にすぐ大井川鉄道井川駅がある。

 
井川駅前には0:50到着。
井川の街の中心部は、左から県道388号線が合流してから、しばらく行った先の井川湖沿い。とはいっても深夜に空いている店はない。対向車もない。井川湖を過ぎると再び曲がりくねった山道。途中、シカが道沿いにいた。トンネルをいくつも抜け、かなり行くと、きれいな施設の赤石温泉白樺荘。またそこから山道をしばらく行くと、ようやく畑薙夏季臨時駐車場に到着。ちゃんとした案内が見当たらず、少々不安だが、車がかなり止まっているところをみると間違いなさそうだ。予定より一時間半も遅れて到着。エンジンを切って、そのまま車内で仮眠する。
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