初めて参加するトレイルランニングの大会は雨がシトシト降る中でのスタートだった。

1週間後にはサロマが控えているのでまずは10キロにエントリーし、今回の目標は「絶対にケガをしない」ことだけを考えつつ「トレラン」をまずは体験してみること。
昨年秋に知人に見せてもらった鏑木毅選手の「激走!モンブラン」を見てからトレランに興味を持ち、トレランシューズを買いまずは登山から体験してみた。しかし、恵庭岳の下りで大転倒し3週間走れなかった経験から下りにはかなりの恐怖感があった。


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そんな中でのトレイルランは高低差400mをひたすら登ることから始まる。
10分も登らないうちに呼吸は絶頂まで達し、ランニングではなく完全な登山になっていた。トレイルランニングでは急な登りはとにかく歩くしかないが、ダラダラ登るのではなく「早歩き」で登らないとレースにはならない。私は以前から登りは得意と豪語していたが、このレースではそれがある程度証明された。登りではグイグイ他の選手を抜き去り先頭集団がかすかに見える位置にまで来れたが、呼吸は尋常ではなかった。この時点でトレイルランの恐ろしさを知ると共に、来月8日に行われるピンネシリ登山マラソンの山頂コースに申し込んだことを完全に後悔していた。

20分ほど登り下りに入った時点で10位前後くらいの位置にいる感触はあったが、その直後に私はトレイルランの奥深さを知ることになる。下りになった途端、私は後ろの選手にどんどん抜かれていった。登りでかなりいい位置まで順位を上げていたのに、少なくとも4、5人には抜かれながら恐怖の下りを慎重に走って行った。
下りの途中には水が流れる場所や細いケモノ道のような場所もあるので思ったようなスピードは出せないし、ロープが張ってある登山道のような所もあるので一歩一歩足元を確認しながら走らないといつ転んでしまうかドキドキだった。トレラン初心者の私にとって、下りは苦手意識のみがインプットされたが、とにもかくにもこんなに集中して走ったのは初めてかもしれない。


レース後半になると再び私の得意な登りがあった。
今度は合法的な近道コースがあり、遠回りだけど緩やかな登りか、近道だけど急な登りか好きなコースを走れる。私は迷わず近道コースを駆け上り再び後続を引き離した、と思った瞬間分かれ道があった。あとで冷静に考えれば真っ直ぐ進むのが当たり前なのだが、呼吸も浅くなり酸欠美味だった私は冷静な判断が出来なくなっていた。横の方にかすかに見える看板を見つけると一目散にそちらへコースを変えて、ラストスパートとばかりに下りを駆け下りた。

しかし、なんとなく嫌な予感がした私は後ろを振り返り後続選手に手を振ってみたが、みんなは私の方には来ないで真っ直ぐ登って行った。それでも私はそのままコースを下っていたが、ふとレース前の説明を思い出した。「そういえば、スタート前の説明でコースが若干変更になっていたかも…」もう少し登った後の折り返しで走るコースだったららしく、すでに400~500mを勢いよく下ってしまったので、戻るにはかなり登らなくてはならない。受付の時にもらったコース図はしっかり見て頭に叩き込んでいたが、トレランはその日その時で安全なコース設定をしなければならないので、コースの説明などはしっかり聞かなくてはならない。それを忘れて冷静な判断が出来なくなった自分を少し悔やんだが、「それもトレランさ」と有名な選手が言っていたのを思い出しとにかくコースを戻った。

せっかくいい流れで来ていたのにコースミスで大幅に順位を下げてしまった。ショックは隠しきれないが、これがトレラン初参加の現実として受け入れるしかない。まずは後半折り返しのチェックポイントをクリアして、あとはゴールへ向けて下るのみだ。折り返しで19番だと知った私はその後、狂ったように猛スピードで下りを駆け下りた。途中斜めに走っている足跡を無視して真っ直ぐ下り1人をパスして、細い林道では前を走る選手をギリギリまで追いつめてちょっと道が広がったところでもう一人パス。さらに足元が悪い上り下りの途中でさらに一人パスして私は、ゴールゲート目指してラストスパートした。


ゴールラインを越えてストップウオッチを押したがタイムがおかしい。どうやら途中で間違えて押してしまっていたようで正確なタイムが解らなかった。とはいえ、初めてのトレイルラン大会はラストまでスタミナ切れすることなくいいイメージで楽しく走ることができた。まるで初めてマラソン大会で10キロを完走した時のように、「トレランって楽しい!」という言葉を発していた。


とはいえその後は天候が悪化して雨風が強くなり、まだ走っている15キロや30キロコースの選手たちは大変だろうということは想像できる。たまたま私たちが走っている時は小雨で済んだが、この嵐のような天候の中走っていたらと考えるとさらにトレランの恐怖を感じていた。



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ゴール後はボランティアでアロマオイルマッサージまでしてもらい、まずはケガなく完走できたことを心の底から満足していた。結局ゴールタイムは経過時間から計算して1時間20分前後だと思われるが、その後リザルトは機材の故障でしばらく発表されないまま会場を後にした。

大会全体の印象はなんだかとてもワクワクするような雰囲気があった。プロのMCの方が居たのもあるが、ボランティアの人達に若い女性が多かったのも少しテンションが上がる原因になったのかもしれない(笑)トレイルランだけではなく、釣りや登山・ランニング大会などのアウトドアシーンに女子たちが増えていることを実感した日でもあった。



しかし、その後自宅へ帰る運転中に私はコースミスのことをひたすら悔やんでいた。「もし…」という言葉は使うべきではないが、もしコースを間違わなければ10分以上は速くゴールしていだろうし、10位以内に入れたのも確実だ。もちろん、トレランではそれも実力の一つだし無理矢理にでも納得するしかないのだろうが、満足と悔しさの入り混じった私の初トレランはとにかく終わった。


その夜私は、次回のニセコかルスツの大会で勝手にリベンジをするべく、秋以降の予定を考えながらノンアルコールで一人宴会をして就寝した。



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