リップヴァンウィンクルの花嫁 | ヤンジージャンプ・フェスティバル

ヤンジージャンプ・フェスティバル

基本はシュミ日記です。
…遊びをせんとや生れけむ 戯れせんとや生れけん…
  

ちょっと前に観た映画の感想文シリーズ!

この日は『蜜のあわれ』との2本立てでこの作品を鑑賞。
観ようと思いつつ見逃してしまっていた映画を同じ日に観られる感動を噛みしめつつ。

まずはあらすじの紹介です。

【あらすじ】
「Love Letter」「花とアリス」の岩井俊二監督が「小さいおうち」「母と暮せば」の黒木華を主演に迎え、一人の若い女性の心の彷徨と成長を見つめたドラマ。現代の日本を舞台に、ふとしたことから“普通の人生”を踏み外してしまった世間知らずのヒロインが、周囲に流されるまま様々な出会いと経験を重ねながら、過酷な現実社会をしたたかに生き抜いていく姿を、瑞々しい透明感あふれる映像で綴っていく。共演は「そこのみにて光輝く」の綾野剛、「KOTOKO」のCocco。
 2016年の東京。派遣教員として働く平凡な女性、皆川七海。ある日、SNSで鶴岡鉄也という男性と知り合い、そのままトントン拍子で結婚へと至る。結婚式に呼べる友人・親族が少ない七海は、代理出席の手配を“なんでも屋”の安室に依頼する。しかし新婚早々、夫の浮気疑惑が持ち上がると、反対に義母から七海が浮気を疑われ、家を追い出されてしまう。行き場もなく途方に暮れた七海は安室に助けを求め、彼が斡旋する怪しげなバイトを請け負うようになる。やがて、豪邸で住み込みのメイドとして働き始めた七海は、謎めいたメイド仲間、里中真白と意気投合、互いに心を通わせていくのだったが…。

(allcinema onlineより)

いやはや・・・
もう何も言いますまい・・・な圧倒的な作品。

とにかくこの世のものとは思えないほどの透明感を放つ黒木華と、この世のものとは思えないほどの異形感のCoccoとの対比。
そんな2人を取り持つような、取り壊すような役柄を演じる綾野剛の、胡散臭いけれども誠実な眼差し・・・・。

そして、デビュー当時から定評のある、ふんわりとした映像美と、緊迫感のあるカメラワーク、カット割り・・・・と、いつもながらの岩井俊二的な映像美が満載!!!

そもそも綾野剛の演じる、安室の目的がよく判んない・・・とか、主人公の七海があまりにも人のことを信頼しすぎてバカみたい・・・とか、屋敷に行ってから以降の展開はあまりにも現実味が無さ過ぎて、さすがにどうかなと思ったぞ・・・・とか、言いたいことは山ほどあるんだけれども、そんなことはもうどうでもいい!!

僕のようなファンにとっては、3時間という上映時間なんか全く苦にならず、とにかく永遠にスクリーンを眺めていたくなる・・・・という、典型的な「岩井俊二」的な作品でした!!!


岩井俊二監督というのは、大好きな人と大嫌いな人とできっちりと別れる監督さんのような気がしていて、嫌いな人の意見というのは
「何かオサレっぽい雰囲気が嫌い」とか「雰囲気だけで、結局何が言いたいのかわかんない」とか「観ている人自体が『自分は岩井作品が好きなんだ=私って映画を判ってるでしょ?』みたいなとこがあって、ウザい」とか、まぁそんなところなんだろうと思うんだけれども、そのあたり村上春樹にも通じるようなところがあるような気がします。

そういった視点でこの作品を観ると、前半の現実的なパートと、後半のひたすらファンタジックなパート・・・という2部構成もまるで「原作:村上春樹」の映画版だったような気が・・・・。
村上春樹作品でいうならば『ねじまき鳥クロニクル』とか『海辺のカフカ』あたりのような、そんな雰囲気をもった作品だった気がします。


そんなこんな。
岩井俊二ファン以外にはちょっと敬遠されるような雰囲気が満載な作品ではありつつも、ここのところすっかりメジャーな女優さんの仲間入りを果たしつつある黒木華さんが、その魅力を大いに発揮していたり、綾野剛がものすごく楽しそうにインチキなキャラを演じていたり・・・で、岩井ファン以外にも楽しめるポイントはたくさん・・・・

・・・・・・・・あるけれども、もういいや!!!

この作品。
岩井俊二監督による、岩井俊二ファンのための集大成作品!
といっても過言ではない作品なのかもしれません。

この作品を受け入れられるかどうかで、自分が岩井監督作品を好きかどうかが判るようなこの作品。
今後の彼のフィルモグラフィーの中で、重要な作品になるであろう、そんな作品でした!!!!!
(2016年7月19日 アミューあつぎ映画.comシネマにて鑑賞)