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初出:2010-02-13 20:59:06




その前の話 intolerance(前編)   intolerance(後編)


赤い鳥とんだ。白い鳥とんだ。

毎日鳴くからうるさいな。

そんなら鉄砲で撃ってしまえ。


事実がいつも自身を傷つける。全てが自身が招いたにしては、

宝物としてそっと守っていたひな鳥が無残に食い散らされる様を

見せ付けさせられたとしたら彼の復讐に対しなにも言うまい。


試演の無期限中止の知らせを受け、今後のことをあらゆる面で

シミュレーションした。予定どおり私と彼女は華燭の展を挙げた。

人前では比翼の翼はさもあえいなん様を見せ付けた。

新婚の夜、彼女の身体を労わりそっと休ませる。仕事を

理由に彼女には一本も触れない。

数ヶ月後、マヤによく似た娼婦役を用意した。都心から程なく

離れた別荘を購入し定期的に逢瀬で逢うように画策した。

女優志望の彼女はよく演じた。そのうち慇懃無礼な態度の中に

不安をだいたわが妻殿が興信所を通じ調査しているのを気付いた。

聖に準備万端を整えさせ、彼女の襲来を待った。

プライド高い彼女は最後まで彼女をさげすみ自身のプライドを

保っている。夫の愛人と同じ空間で過ごすという。

数日がなにもなく過ぎた、だがすでに臨界点にたっしているのは

誰が見てもあきらかだろう。

銃の手入れをしていた俺は、弾も入っていないと説明し紫織に

手渡した。窓の外には、マヤそっくりな白いドレスを着た女が

木のそばいる。何気さを装い、紫織は銃を手にし、引き金を

ひいた。瞬間、白いドレスの女は横たわった。紫織は狂喜しながら、

静かに倒れていった。銃には弾は入っていない。彼女自身が幻を

撃ったのだ。おそらくそれが空銃であったことは彼女自身気付いて

いたのだ。互いがintolerance(存在の耐えられない存在)

だと。私が彼女に続いて空の銃の引き金を引いた。

それは己に対しての引き金だった。


紫織はマヤを真澄は真澄を撃ったのだ。

血は確かに流れていた。俺は幻をあの木の下に埋めた。

マヤが観たのは幻に過ぎない、だが俺にもみえるよ。