フラクセル3 について | 美容皮膚科医の日常ーペルラクリニック神宮前院長 本田淳

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(書いていたら、かなりの長文になってしまいました。フラクセルにご興味がある方や、にきび痕でお悩みの方以外は、時間の無駄ですので、スルーしてください)


フラクセル3 は、凝固型のフラクショナルレーザーとしては最高峰といっても過言ではありません。

そもそも、フラクショナルレーザーというものは、肌を入れ替えると謳われているように、非常に細いレーザービームで無数の傷を皮膚に人工的につくり、これが治癒する過程を利用して、皮膚の諸問題を解決していくものです。

主に、にきび痕、毛穴、肌質の改善に用いられますが、フラクセル2から3にアップグレードした際に搭載された、波長1927nmのレーザーによって、色素斑(しみ)の治療がフラクショナルレーザーで可能になりました。

もっとも、白人に対しては、より強度の高いブリッジセラピー(炭酸ガスフラクショナルレーザー)でも色素斑を治療対象としうるとされていましたが、日本人に対しては、効果と、リスク・ダウンタイムのバランスが悪く、フラクショナルレーザーをもって色調の改善をはかるという発想はありませんでした。副次的に、フラクショナルレーザーを継続していれば、合併症としての炎症後色素沈着が生じない限りにおいて、肌がトーンアップするというのは、体感的にも理論的にも首肯できるところでした。

詳しい話は省きますが、波長1927nmのレーザーを用いれば、その色素斑の種類や状況、これまでの治療経緯を勘案したうえで、有効な治療として推奨しうるということです。それだけ、合併症リスクは少ないということですね。ただ、色素に反応してカサブタを生じる、あるいはレーザートーニングのようなカサブタをつくらなくても色素斑を薄化できる(限界はあります)というのとは、レーザーの波長特性による生体反応が異なります。ゆえに、治療面全体にカサブタ(コーヒーの粉をまぶしたような性状)がのり、事実上お化粧でカバーできません。いや、できることはできるのですが、いくつかの理由で推奨できません。この点が、クリアできるか否かが、治療に臨む方がもっとも考えるべきことになります。

長くなってきましたので、本題にそろそろ。

今回は、ニキビ痕の治療に関して、色々とお伝えしたかったのです。

効果に関して。

照射エネルギー(レーザービームの深達度と比例関係にある)が、ある範囲で強ければ強いほど効果が上がるということを信じている医師はすでに少数派です。もちろん、ニキビ痕の状況に応じてケースバイケースの話ではあります。そもそも、「フラクショナル」治療という概念を持った機器は、電磁波の波長の違いという概念を越えて、多数存在しますので、機器の特徴で使い分けというのも、まあ、ありです。本当は、機器の違いというより、その熱影響の広がり方をこそ認識した治療が・・・

さらに長くなりそうなので、話を絞ります。

フラクセル2から3にアップグレードした時もそうですが、それ以前に、ブリッジセラピーのDeepFx と TotalFxの、効果の圧倒的な違いを前に、その原因というか真因を考えていました。当初は、単純に皮膚「表層」のカバー率(どれくらいの割合で皮膚の入れ替えをはかるか、程度にぼんやり考えてください)が大きく上がるから、外観上そのように見えるのは当然くらいの認識だったのです。

特にニキビ痕の治療に関して、以前は、レーザーの皮膚面に対する垂直方向の影響を重視していたため、水平方向の影響は、二義的なものと捉えられていた節もあったのですね(水平方向の影響と関数をもつのは、主にカバー率です)。

そもそも、カバー率を上げれば、効果は高まるが、炎症後色素沈着の発生率も、ぐっと高まるので、さじ加減が難しいのです。もっとも、範囲を絞った治療であれば-極論、ニキビ痕1個ずつ-、リスクマネージメントはそれほど問題にはなりません(治療範囲と相関するサイトカインの話は、とりあえずここでは考えません)。

ですから、カバー率を上げることの重要性が、これまで考えられてきたより、ずっと高いものであることがわかっても、なかなかTotalFxをお薦めすることができなかったのです。かといって、DeepFxのカバー率を上げるのは、広範囲で行うには危険です。色素沈着の問題だけでなく、皮膚の損傷が大きすぎて、その後の治癒機転に支障が生じ、かえって効果が出ないのです。

そこで、局所的に高エネルギーでDeepFxを施したあと、通常使わないような低エネルギーで、その代りカバー率をかなり上げて、広範囲にDeepFxを重ねるなど工夫もしましたが、総合的にTotalFxを越えることは難しかったのです。


そこに登場した、フラクセル3の波長1927nmのフラクショナルレーザーは、深達は得られないものの(0.2mm程度)、日本人に対しても、高カバー率の治療がローリスクでできるという点で秀逸なのです。これは、残念ながら、炭酸ガスフラクショナルレーザーであるActiveFxでは、(日本人の肌に対して)実現できなかった領域です。

そして、単に色素系の問題に対する改善だけでなく、また、皮膚表層部分の入れ替えといった単純な理屈でもなく、水平方向の張力変化がもたらす効果が、にきび痕の改善にも大きく寄与することが帰納的に認識されるにいたったのでした。




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