<7月2日(土)>
ROHで11時からのオペラCentrillonのリハーサルを観てすぐに帰宅したら、まだウィンブルドン・テニスの女子シングル決勝の真っ最中でした。今年はベスト4が金髪美女ばかりでビジュアル的に楽しめましたね。明日の男子決勝は、アンディ・マレーが準決勝でやっぱり又負けたので、明日の男子シングルはどうでもいいんですが、ブログでも書きながら横目で見ることにします。アンディが出てたら手に汗握ってそれどころじゃないでしょうが。
オペラのブログの筈なのに最近は旅行や着物のことばかりですみません。オペラもたくさん行ってるんですが、書いてる余裕がなくて。順不同でできるものから簡単に記録だけ残しておかなきゃ。
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5月24日と6月13日の2回、ロイヤルオペラハウスでヴェルディのMacbethを観ました。
シェークスピアの有名な作品で、オペラにするとちょっと設定とか違ってくることも多いのですが、原作にかなり忠実なのではないかしら。って、お芝居観た事ないくせに無責任なこと言うんじゃない!
ま、筋書きやオペラのみどころについては過去の記事(→こちら )をご覧頂くとして、要するに野心が身を滅ぼす暗い話で、マクベス夫人は旦那の尻を叩いて出世を強要する悪妻の代名詞。
でも、戯曲としては有名で客も呼べるでしょうが、ヴェルディのオペラの中では滅法暗くて人気がなく、割引切符まで出る始末。
Composer Giuseppe Verdi
Director Phyllida Lloyd
Designs Anthony Ward
Conductor Antonio Pappano
Macbeth Simon Keenlyside
Lady Macbeth Liudmyla Monastyrska
Macduff Dimitri Pittas
Banquo Raymond Aceto
Malcolm Steven Ebal
Lady-in-waiting Elizabeth Meister
Doctor Lukas Jakobski
オペラのみどころはほぼマクベス夫婦を演じる歌手の力量のみですが、
2002年のプレミエはマリア・グレギーナとアンソニー・マイケルズ・ムーア(今やってるマダム・バタフライでシャープレス領事)、2006年はヴィオレッタ・ウルマーナとトーマス・ハンプソン、そして今回はイギリスが誇る世界的バリトンのサイモン・キーンリーサイドと、3月にアイーダの代役で素晴らしかったリュドミラ・モナスティルスカ(発音がわからないので以下リュドミラ嬢)。
マクベス夫人は、この中では一番無名のリュドミラ嬢が文句なしにベスト
迫力だけできついばかりのグレギーナ、この役には力不足ではないかと思う一本調子のウルマーナに比べると、リュドミラ嬢は立派な声量と張りのある美声でずっと聞惚れ、何度も聴きたいと思いました。迫力と美しさの両方を兼ね備えたソプラノは滅多にいないので、彼女に向いてるヴェルディの他の役でもっともっと聴きたい人です。
次回出てくれる時には全パフォーマンスの切符を確保するわ。
この実力で、さらにルックスが良ければ引っ張りだこでしょうが、その点にちと問題があり、ちょっとデブだし地味な印象なのが残念。でも、私はそんなこと気にしないから、他でお呼びが掛からなかったらROHで他のも全部代役で出てください。
無声映画の大袈裟な目をむく演技みたいなリュドミラ嬢のマクベス夫人に比べると、マクベス役のサイモンは知的で繊細な俳優並みの演技力で、二人のバランスはちょっと悪いかもしれないし、遠くの席の人には彼の良さは理解できないかもしれけど、近くの席からじっくり観た私には立派なマクベスでした。声の迫力はリュドミラ嬢に叶わないけど、ごり押し妻に押されっ放しの夫という設定なのでそれでOK。
テノール好きの私には、マクダフ役は出番は少ないけど良いアリアがあって得なので脇役でも良い歌手が出てくれるのが嬉しいですが、初めて聴くディミトリ・ピッタスはちょっとしためっけもの。
あんまりよく響く声じゃないので遠くで聞いたらどうってことないかもしれないけど、まじかで聴いたら力強くてなかなか魅力的。
パッパーノ大将の渾身の指揮ぶりも見られる席なので、ヴェルディの作品の中では渋過ぎてあまり好きではないし、下手くそな人がやったら退屈で我慢できないでしょうけど、立派なパフォーマンスと暗いけど洒落たセットと動きのある演出を左右から一度づつ見られてラッキーでした。
5月中旬にナポリのサンカルロ歌劇場で観たレベルの低いシチリアの夕べの祈りと比べると、同じヴェルディでも作品を生かすも殺すも演出とパフォーマンス次第だという当たり前のことを再認識。