<5月30日(日)>

親子3人で、封切になったばかりの映画プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂を観に行きました。実はムスメが大学のjob experienceでこの映画の鎧(よろい)を作る手伝いをしたので、2年前から楽しみに待っていたんです。批評は様々だけど、さすがディズニー映画だけあってきちんと出来てて、登場人物もちゃんと描けてるし、主役の二人も素敵。

初日から1ケ月以上も経ってしまったアイーダについて、今更ですが第一弾です。あ、2回の丸ちゃん出待ちについてはすぐに書きましたよね(→こちら こちら

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オペラ三昧イン・ロンドン    オペラ三昧イン・ロンドン


4月と5月に4回観たアイーダですが、ROHでアイーダを観るのは実は初めて。数年前のプレミエだけでゴミ箱行きになった前回の大不評のプロダクション(真っ白で動きもなかったそうです)は見逃したので。


まず、アイーダってどんなお話なの? と仰る方のために、


アイ-ダはエチオピアの王女だけど、戦いに負けて捕虜になりエジプト王女の下女にされていて、密かにエジプト軍の指揮官ラダメスと愛し合っている。エジプト王女も彼のことが好き。王女と結婚してエジプト王位を継いでくれとファラオに言われるが、アイ-ダを愛する彼はそれはできないと。

アイ-ダはエチオピア奪回を狙う父王の頼みでラダメスから軍の進路を聞き出し、機密をもらした罪でラダメスは死刑を宣告され、まだ彼を愛している王女にもう一度チャンスを与えられるが、アイーダは死んだと思っているラダメスは、彼女なしでは生きられないと死刑を選ぶ。真っ暗な地下牢に閉じこめられて死を待つのですが、そこにアイ-ダが先に忍び込んで待っていて、二人で愛を語りながら餓死。ああ、なんてロマンチックラブラブ



要するに、大企業で一生懸命働いて出世頭になったサラリーマンが、オーナー社長の娘の婿養子にしてあげると言われたのに、下っ端OLのカノジョに操を立てて美味しい話を断るという、一途で立派というかアホというか・・・で、実は倒産したライバル会社の産業スパイだったカノジョにだまされて企業秘密を漏らしたためにクビになって野たれ死ぬって、やっぱりアホ。

オペラ三昧イン・ロンドン     オペラ三昧イン・ロンドン


考えてみれば、私にとってアイーダにはちょっと特別な存在なのかもしれません。私が初めて生で観たオペラだし、ムスメが初めて観たオペラでもあり、今まで私が大劇場で生で一番数多くのプロダクションを観たオペラなのではないかしら。


私が初めて観たのは1974年のローマのカラカラ浴場で(その時のことは→こちら )、ムスメは8歳くらいの時にニューヨークのメトロポリタンオペラで、と両方とも旅行中の経験なので特に印象深かったですしね。

ムスメの「ねー、どうして綺麗な王女様よりデブの奴隷の方が好きなの?」という素朴な疑問もかわいかったな~。そ

の時のアムネリス王女はオルガ・ボロディナ、アイーダはデボラ・ヴォイトだったんですが、今でこそ彼女らは同じような体型だけど、当時のボロディナなほっそり美人、ヴォイトは百貫デブでしたもんね。ま、オペラには役柄と容貌の一致を求めてはいけないという基本をムスメはのっけから嫌と言うほど見せ付けられたわけです。


かつてのような象(エレファント)の登場は期待できないものの、カラカラ浴場は馬車が轟音と共に躍り出てきたし、去年のヴェローナのアリーナはもちろん大スペクタクルの上に雷雨が劇的だったし、ロイヤル・アルバート・ホールも巨大な像が倒れたりして迫力充分、メトもメトらしいまともで大掛かりなセットと人海戦術で、どれも古代エジプトの繁栄を忠実に表現した「おお~っ!」と感激する豪華なプロダクションでした。 


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それで、ROHの今回の新プロダクションですが・・・


マクヴィッカー演出ですから、いかにもというアイーダは期待してませんでしたが、ちょっと斜めに構えたプロダクションで、私はあまり好きではありません。踊りが多いし動きがあって素晴らしいというオペラ仲間もいますが、たしかにそれは同感できるものの、同じ踊りが延々と続いて冗長だし、なんと言っても私が失望したのはエジプト色の排除


聞くところによると、マクヴィッカーはエジプト以外の古代文明に基づいてデザインするよう命じたそうですが、そういうひねくれたコンセプトって嫌だわ。ニュートラルであればまだしも、古代ギリシャ風、アズテック風、中近東風、日本のサムライ風とあれもこれもと入れてまとまりがないしね。あくまでエジプト風で斬新にして新鮮味を出す方がある意味難しいだろうし、チャレンジのし甲斐があるというものじゃないですか? そういうスコープでもマクヴィッカーならきっと素晴らしいものが創れるにちがいないのに、古代エジプト特有の神殿とか神とか大事な要素も訳わからなくして何か得るものがあるのでしょうか?


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オペラ三昧イン・ロンドン
マクヴィッカー好みのエログロは彼らしくて良いけれど、セットがいつもよりもっとお粗末なのも、アイーダに関してはマイナス効果。

勇将ラダメスは、ファラオの娘と結婚すれば巨大な富と権力を手に入れることができるのに、それを捨てて奴隷女であるアイーダ(本当はエチオピアの王女様だけど)を愛することを選ぶというラブストーリーを表現するには、それなりのビジュアルが効果的なのに、このプロダクションは登場人物のいでたちや振る舞いが行動がまるで未開の部落民みたいなのでラダメスが失うものの大きさが表現できなくて観る人の胸を打つ度合いが低くなってしまったら、初めてアイーダ観る人に不親切だし、折角の素晴らしい音楽なのにヴェルディ先生にも失礼じゃないですかパンチ!



スカラ座の豪華絢爛ゼッフィレリ版を貸してもらえばよかったのに


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アイーダの青いドレスは素敵だけど、アムネリスの剃り上げヘアはあんまりだわ。支度に2時間も掛かるんですってよ。それでうんとブスになっちゃうんだから、嫌よね。来シーズンはボロディナ出演予定だけど、嫌がって降りちゃったらどうすんのよ!

これだけで長くなってしまったので、すみません、パフォーマンスについてはまた別に。



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