<4月11日(日)>

寒いと言い飽きたのですが、又言います。「いつまで寒けりゃ気が済むんじゃ~。」。

お昼はまだしも、朝晩冷えるの。でも、今夜は意地で春らしい着物でオペラハウスに行ってきました。


ベルリン関連、もうちょっと続きます。随分経ってしまった今更記事なのであっさりと。と思ったのですが、結局長くなってしまいました。すみません。

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ベルリンの2日目はStaatsoper unter den LindenでTristan und Isolde


あれ、去年スカラ座に行った時もたしかトリスタンとイゾルデだったわよね?(→こちら

そうなんですが、偶然ではなくて、誘って下さったdognorahさん が大のトリイゾ・ファンだからで、云わばついでのルチアでアラーニャを観られたのもこのトリイゾのお陰です。


私は特にワーグナーが大好きというわけではないのですが、ワーグナーの中ではトリイゾが一番回数観ててお馴染みなので(生ではおそらく今回が6回目)、外国で英語の字幕なしで観るには適してます。スカラ座の字幕は個人用で英語もあったけど、ここでは選択はないので仕方なく舞台上のドイツ語字幕を眺めていたのですが、意味はわからなくても歌っているそのままを目で追いながら聴くのは格別で、お陰でワーグナーのオペラの美しさをより堪能できたと思います。


ドキドキドキドキドキドキ

トリスタンとイゾルデってどんなお話? と仰る方には、去年の記事をそのまま繰り返しますが、、


一言で言うと「すごくエッチ」。なんたって、惚れ薬で色情狂になってしまうんですから、まさにそ行為の表現がもろに出てくるんです。それも延々と・・・ガーン

で、そういうのは不倫じゃなかったらオペラにならないわけですが、ご安心下さい、アイルランドのイゾルデ王女には王様である婚約者がいて、途中で王妃になります。

騎士トリスタンはその初老のコーンウォールのマルケ王の甥っ子で、年恰好からはどう考えてもイゾルデとはお似合いだし、マルケ王もトリスタンを後継者にと思ってるらしいので、最初からこの二人を娶れはいいのに、このへんの事情はドン・カルロとそっくりで、皇太子より王様(年食ってても)との結婚の方が強いという政治的な事情です。理由で年食った王様のお嫁さんにしてしまうわけです。

当時は(日本でもそうだったでしょうが)、高貴な人の結婚はお家を守るのが第一であり、惚れた腫れたは浮気で賄ってくれ、ってことですね。

そうは言ってもヒヒ爺とでもうまく行くに越したことはないという配慮から、イゾルデのお母さんは惚れ薬を嫁入り道具の中に入れておいたのです。こんな薬があったら、世の結婚が幸せになること請け合いですね。

だけど、トリスタンとイゾルデは、たしかに惚れ薬を飲んだからボーボー燃え上がったのですが、実はこの二人、自分でも気付かないのかもしれないけどに前から愛し合っていて(イゾルデはトリスタンを看病をしたことがあり)、あれが惚れ薬ではなくてただの水道水でも火が付いたのではないでしょうか。

トリスタンはフィアンセを殺した憎い奴と恨んでいる(つもりの)イゾルデ、不幸な生い立ちで名前からして「悲しみ」のトリスタン、この世では結ばれないと悟った二人はイゾルデが一緒に飲もうというドリンク(実は毒薬)で実質的に心中。


合格でも、あら不思議、死んだ筈の私たち、なんか変よ、うわ~っ、体中からほとばし出るこの欲情、もう我慢できないわ~爆弾


はい、それはイゾルデの女中さんが、姫様に死なれて失業しては大変と、ドクロ死に薬と恋の矢惚れ薬をこっそりすり替えたからです。


そして、燃え上がってやりまくるしかない二人の目に余る猥褻行為は当然すぐにばれてしまい、トリスタンはいさかいで怪我をしてどさくさでイゾルデとも別れさせられて、自分の領地で怪我の療養しながら、イゾルデが来るのをひたすら待つのですが、このシーンが長くてね。私はここを眠らずに全部聴けたためしがありません。毎日海を眺めて船が来るのを待っているのはマダム・バタフライと同じですが、蝶々さんは普通の長さのアリア「ある晴れた日に」一曲だけで待つのは終わりますが、トリスタンの待ち時間は長~いですからね。ウトウト・・・


で、再会はできたものの結局トリスタンは怪我から回復できずに死に、イゾルデは悲しみで死に、めでたく最初に図った心中を果たすわけですが、マルケ王もやって来て、「あんなことになったのは薬のせいだったと女中から聞いたから、二人を許してつかわす」と言うけど、女中さん、そういう大事なことは先に言わなきゃ。あ、でもそしたら彼女が罪に問われちゃいますもんね。でも、王様、この二人があんなことになったのは薬のせいではなくて、きっといつかそうなったにちがいないですよ。


こういうドラマチックな内容で、官能的なワグナーの音楽もぐっとくるほど刺激的なのですが、なんせ長丁場ですからね(正味4時間)、オペラに慣れてない方は、最初は避けた方が賢明でしょう。ワグナーに慣れない私はいまだに半分バージョンがあればいいのに、などど実は思ってるんです。


それに、リングとか登場人物の多いオペラとちがい、主役二人の比重が大きいので、生半可な歌手だったら生で観ないほうがいいですからね。

ドキドキドキドキドキドキ


オペラ三昧イン・ロンドン
Staatskapelle Berlin

Conductor Daniel Barenboim
Director Harry Kupfer
Set Designer Hans Schavernoch
Costume Designer Buki Shiff

Tristan Peter Seifert
König Marke Rene Pape
Isolde Waltraud Meier
Kurwenal Roman Trekel
Melot Reiner Goldberg
Brangäne Ekaterina Gubanova


オペラ三昧イン・ロンドン
家舞台と衣装ワンピース

10年前のクプファー演出で、最初から最後まで舞台の上には巨大な翼の天使がへたばって倒れているだけで、場面によって回転はするのですが、設定通りの船とかお城とか全くカケラも出てこないし、ほぼ全て観る人の想像力におまかせしますってことですね。

私としてはスカラ座の舞台(→こちら の方が好きですが、私はこのオペラハウスの内装もセットのうちだと思えるような後ろの席だったので、トータルとしてはぴったりだったかも。

衣装も時代を特定しないシンプルさですが、マルケ王とか男性の衣装は洒落ててなかなか素敵なのもありました。

オペラ三昧イン・ロンドン
音譜パフォーマンス音譜

女の子イゾルデ

始まる前に舞台にマイクを持った人が出て来たので、「うわーっ、誰がキャンセルしたんんだ!」とどよめき、私は昨夜のルチアの悪夢が蘇ったのですが、「イゾルデ役のマイヤーは風邪気味ですが歌います」とのことでやれやれ。こないだROHで素晴らしいイゾルデだったニーナ・シュテンメが代役で出てくれるのであれば実はもっと嬉しいけどそんなことはまず起こらないので、ここはやっぱりお目当てのマイヤーに病気でも頑張ってもらわないと。

アナウンスのせいで長丁場をハラハラしながら聴いてましたが、具合が悪いとは思えない程最後まで健闘してくれて、さすがワーグナー歌いの女王様の貫禄とプロ根性には感激ですラブラブ!

実は声としてはシュテンメの方が好きだし歌唱的にもシュテンメはマイヤーを追い越したのではないかと思っているのですが、役柄になりきってるマイヤーの情念をみると、総合的にはまだマイヤーがイゾルデ第一人者なのだという気もしますクラッカー

オペラ三昧イン・ロンドン
スカラ座でも彼女でしたが、なんせ値段は高いのにさえぎられるひどい席だったのでずっと見ていることができませんでした。それと比べると今回はこじんまりとした贅沢な空間で33ユーロという安い席でも見切れることなく、それだけでもマイヤー詣でとしては今回の方がしっかり鑑賞できました。一時代を確立した素晴らしいイゾルデを本場で聴くことができて感激でした。


男の子トリスタン
dognorahさんによるとペーター・ザイフェルトは今一番のトリスタン歌いだそうで、絶好調でもあり、こないだのROHのベン・ヘップナーと比べては失礼なほど立派な歌唱ではあったのですが、なぜかトリスタンにだけはビジュアル的にも端正な騎士をないものねだりしてしまう私には、ザイフェルトはかなり外れてて、随分年を取ってくたびれた中年男。この点ではヘップナーと大して変らないのが残念で、総合的にはスカラ座のイアン・ストーリーの方がイメージに近く、マイヤーとのラブシーンも盛り上がります。

いつか、イゾルデが惚れる気持ちも共有できるような光り輝く容姿でしかも歌も上手なトリスタンに遭遇できますよう・・・・でも、若いハンサム歌手は最も期待できどうにない役だしなあ・・・それにあまり若いとおばさんイゾルデ(若いネーチャンにはイゾルデは歌えない)とバランスが悪いかも・・・


オペラ三昧イン・ロンドン
クママルケ王
若いイゾルデに「いや、あんな爺さん」、と思われるマルケ王ですからデブで醜い人の方がいいのに、これがザイフェルトのトリスタンの叔父さんにはとてもみえないルネ・パーペですもん、皮肉なもんんです。長身で精悍な容貌の彼がトリスタンだったらどんなにいいか。
キャンセルばかりされているので、パーペを生で聴くのは数年前のROHのローエングリン以来僅か2回目。病み上がりで絶好調ではないのでしょうが、それでも一流の彼を聴けてよかったです。

宇宙人その他
声量不足でちょっと失望だったローマン・トレーケル以外は皆さん水準が高く、昨晩のルチアで「アラーニャ以外はちょっとなあ・・」と思ったのとは偉い違い。バレンボイム先生指揮のオケのお陰かもしれません。スカラ座に続いてバレンボイム先生のトリイゾでしたが、このオペラには特別な思いがあるらしいバレンボイム先生の情熱が伝わってくるような素晴らしい演奏でした。バレンボイム先生、元超一流だったピアノ演奏はもうやめて、現役世界のトップの一人である指揮だけに専念して下さいね。
オペラ三昧イン・ロンドン       オペラ三昧イン・ロンドン
                                 

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