<4月4日(日)>
イースター4連休中ですが、昨日と一昨日はジムと会社に行き、明日はバレエとオペラのダブルヘッダーなので、家でのんびりできるのは今日だけ。
今更ですが、ドミンゴ降板で大騒ぎとなったヘンデルのタメルラーノについて書いておきます。
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詳しいストーリーは→こちら をご覧下さいということで他人様のブログに頼ってしまいますが、要するに、
タタール皇帝タメルラーノが捕虜にしたトルコ太守(これがドミンゴの役)の娘(恋人がいる)に横恋慕するゴタゴタ劇で、エキゾチックでゴージャスな設定です
Composer George Frideric Handel
Director Graham Vick
Designer Richard Hudson
Choreography Ron Howell
Conductor Ivor Bolton
Tamerlano Christianne Stotijn
Andronico Sara Mingardo
Bajazet Kurt Streit
Asteria Christine Schafer/Sarah Fox
Irene Renata Pokupic
Leone Vito Priante
元々は3月8日のドミンゴと17日のKurt Streit(シュトレイトと呼ぶことにします)を一回づつ観るつもりで2回分買ってあったところ、シュトレイトだけになってしまったので1回でやめとこうか迷ったのですが、誰も切符を買ってくれないでしょうから、結局自分で行くしかなくて・・・。
いえ、ご贔屓で今回も素敵だったシュトレイトを2回観るのは問題ないし稀なヘンデルは聴けるときに聴いておきたいので、ドミンゴが出るというだけで切符を買ったオペラに慣れてない人たちが口々に愚痴ってたように「どえらい長くてアリアも延々と続くアリアも退屈だった」というのが理由なのではありません。期待通りのヘンデルらしい典雅なバロック音楽だし、舞台も衣装も洒落てて素敵だったので、普通なら喜んで2回いくところです。
信じられない下手くそ歌手
2度目をタメラったのは、「シュトレイトはもう一度聴きたい、しかしあの下手くそな女を聴くのは苦痛だ どうしようどうしよう・・・」ということで、その足を引っ張った女というのは、どんなオペラ初心者も口を揃えて批判していたタイトルロールのChristianne Stotijn。
ドミンゴ先生ったら、自分さえ気分良く歌えれば他の人はどうでもいいなんてひどいじゃないですか!
たしかにこれをレパートリーにしてる人は少ないでしょうが、ドミンゴ先生が「君、僕と一緒に出るためにこの役を歌ってくれたまえ」と言えば喜んでやってくれるメゾ・ソプラノはたくさんいるでしょうに。
長身で碧眼美人のStotijnは、何度も着替えた衣装はどれも格好良くて、ビジュアル的には魅力的なズボン役だったけど、歌があれじゃあね。声量はないし、高音と中音の継ぎ目がゴツゴツで聴きづらいったら。大劇場で主役を張れるレベルではありません。批評が軒並み二つ星だったのは彼女にせいにちがいないです。
で、ひどいのが彼女一人であればまだしも、もう一人力不足の人がいたのも二度聴くのをためらわせた理由で、こちらは誉めてる批評もあったし上手だったと言ってる人もいたので好みの問題かもしれませんが、アステリア姫の恋人役アンドロニコ役のアルトSara Mingardoは声に魅力もなく大幅な声量不足。
この二人のズボン役の絡むシーンにはやりきれないものがあり、ドラマを盛り上げるためにもなぜカウンターテナーを使わないんだろうと怒りさえこみあげてきました。この頃は上手なカウンターテナーがたくさんいるのに、ドミンゴ先生はもしかしてカウンターテナー嫌い?
ドミンゴ先生
私はドミンゴ先生は全盛期にすら惹かれなかったので、彼が出なくて全然がっかりもしませんが、高音を駆使する必要がないので今の彼でもなんとかなりそうでしかもドラマチックな父親という役を掘り出したのはさすがドミンゴ先生だし、彼のお陰でこのオペラが日の目を見ることになったとしたら感謝です。退き際の悪い爺さん と思ってはいるものの、さらに新しい役に挑戦する意欲と努力は尊敬してますしね。
そしてテノールとして限界を感じた賢いドミンゴ先生は、70歳を目前にしてバリトンに転向なさるのですが、人材豊富なバリトン業界に割り込んでオペラ界に貢献できるのでしょうか・・・元々はバリトンだったのを無理してテノールを数十年やってたわけで、自然な領域に戻るだけなのですが、そこまでなさるとはなんだか痛ましい気もしますが、幸い(?)その実力を生で聴ける機会がもうすぐ来るので少し楽しみです。
彼が出るというだけで異常な切符争奪戦になってるこの夏のROHのシモン・ボッカネグラですが、ドミンゴ先生、今度はちゃんと出てくださいよね。タメルラーノ降板時みたいな切符騒動は二度とご免ですから(注:2割まけてくれることになったけど、素直にお金を返してはくれなくて面倒な手続だったんですよ)。
舞台と衣装
写真でご覧の通り、シンプルな白い舞台が洗練された感じで素敵でしょ。鮮やかな青い像さんも映えます。巨大な脚はイギリス人にはモンティ・パイソンのアニメをどうしても思い浮かべてしまうので笑っちゃいますけどね。
細かいところにも凝った衣装もとても洒落てて、皆さん素敵に見えました。
ドミンゴの代役で結局全部歌うことになったBチームのシュトレイトは、よくROHに出てくれるアメリカ人テノールで、迫力あるはっきりした力強い声で私は前からファンなのですが、長身でハンサムでもあるのにこれまではなんか影が薄かったのが、これで一気に存在感を示し華やかな主役もできることがわかって嬉しいです
ドミンゴの代役も立派に果たし、「ドミンゴだったらもっとうんと上手だったたろうに」と思った人はいないんじゃないでしょうか。よかった、よかった (いっそドミンゴと競えたらよかったのにね。絶対勝てるから)。
アステリア役のクリスティーヌ・シェーファーは、10年程前にコンサート形式のツェルビネッタで素晴らしかったと思った以外は知名度の割りに失望することがほとんどで、今回も声量不足だし演技もおざなりで血の通わない娘役。ソプラノとしては出番は少ないけど光ってたイレーネ役のRenata Pokupicに完全に負けてたし、シェーファーは過大評価されてるソプラノの一人なんじゃないのかしら?
アステリア役では知名度では劣るBチームのサラ・フォックスの方がうんと素晴らしくて、彼女のおかげで全体のレベルがかなりアップし、イレーネ姫が出てきても「今日の上手なソプラノはこの人だけだな」とは誰も思わなかった筈。2度聴きに行った大きなご褒美となったサラ・フォックス、意外なことに生で聴くのは初めてかもしれませんが、こんなに上手だったなんて嬉しい驚きです
慣れない人には冗長なヘンデルでしょうが、Ivor Boltonはゆったり優雅に指揮してくれて楽しめました。
タメルラーノが歌手がStotijnでなかったら又聴きに行きます。