ドクロ(4連休の一日目は小雨模様だったので、ずっと家にいて、テレビで映画Shall We Dance? なんぞ観ました。リチャード・ギアのハリウッド・リメイク版ですが、日本のオリジナルの方が良いですね。)


オペラ三昧イン・ロンドン


3月27日、オペラのコンサート形式のオペラを聴きに行きました。隣で歌舞伎をやってて共通ロビーは着物姿で華やかなバービカンでしたが、こちらのコンサート・ホールはいつもにも増して地味な雰囲気だったような。


あまり知られていないマルティヌーのオペラのJuliettaのコンサートだったからです。


Bohuslav Martinu(1890-1959)はチェコの作曲家で、生存中は人気があったと、コンサート前のトークで説明がありました。


チェコ語版とフランス語版があり(両方ともリブレットはマルティヌー自身)、今夜はフランス語版

Georges Neneuxの戯曲Juliette, ou la cle des songes ('Juliettes, or The Key to Dreams)が原作ですが、1930年半ば、寸でのところでクルト・ヴァイルのミュージカルになってしまうところだったところ、マルティヌーがヌヴォーにすでに少しできていた曲を聞かせてもぎ取ったそうです。(「三文オペラ」等で有名なヴァイルのミュージカル版も面白そうだし、そう方がずっと多くの人に接してもらえたのでしょうが)



メモストーリー


夢をテーマにした幻想的でシュールな話ですよ


書籍行商人のミシェルは、3年前にある港町で聴いた若い女の歌が忘れられずに戻ってきたのだけれど、ここは極端な記憶喪失者で溢れている不思議な街


でも、彼らはそれを補うため他人の思い出話を聞くことには異常に熱心で、ミシェルもナイフで脅されてまで子供時代の思い出を語り、感激した人々が彼を町長に推挙までする始末。こんな気味悪い街には痛くない彼は断って汽車で去ろうとすると、街には汽車なぞ走ってないと・・・。さっきミシェルが駅に降り立った筈なのに・・


女の歌がまた聞こえ、彼女ジュリエッタは逢瀬にも応じてくれ、森の岐路で逢い愛を語らう二人。やがてそこにいる記憶売り業者から買ったミシェルと過ごした偽の思い出を楽しく語る彼女とそれを拒絶するミシェル。言い争いになり、ミシェルはジュリエッタを射殺。ミシェルは死刑を宣告されるが、話を反らせるうちに死刑宣告も皆の記憶から消え、ジュリエッタの姿も消えた・・。


夜になるとミシェルは夢役場The Central Office of Dreamsにいて、係員に「いま夢から醒めてここを去らないと、二度とここから出られなくなるぞ」、と言われ、そこには夢を斡旋された人々が次々を現われ、夢でジュリエッタに逢ったと語る。


ドアの向こうからジュリエッタの歌が聞こえる! ずっと夢から醒めたくないミシェル。だけどドアを開けてもジュリエッタはいない。係員が去るとまたジュリエッタの声が聞こえ、恍惚状態のミシェルはいつの間にか最初の港町に自分を見出す・・・



はてなマークという、「はあ~?????」、な内容なんですが、


マルティヌーの流れるように美しい音楽とフランス語の歌詞が妙にぴったりで、なんだかわからないなりに夢か現か幻かの不思議な世界に心地良くk浸れることができましたドキドキ


隣に座ってたおばさんは、「前にお芝居で観たことがあるの。その時はさっぱり理解できなかったけど、これでわかったわ」と言ってました。演劇では表現できないエッセンスであるファンタジーを感じ取ったという意味でしょう。音楽の力は偉大クラッカー


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Martinů
Julietta
オペラ三昧イン・ロンドン
BBC Symphony Orchestra

Jiří Bělohlávek conductor


Rosalind Plowright soprano
女の子Magdalena Kožena mezzo-soprano
Jean Rigby mezzo-soprano
Anna Stéphany mezzo-soprano
男の子William Burden tenor
Andreas Jäggi tenor
Roderick Williams baritone
Frédéric Goncalvès bass-baritone
Zdenek Plech bass
BBC Singers

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音譜パフォーマンス

皆さん素晴らしかったんですアップ


しっぽフリフリオーケストラと指揮者

ラジオやテレビでよく聴くBBCシンフォニー・オーケストラがこんな上手だなんて初めて知りました。この指揮者を生で聴くのは初めてですが、2006年からこのオケのチーフ指揮者になったという彼のお陰ですね、きっと。特にマルティヌーはお得意のようで、今年の秋から来年の春に掛けて彼のシンフォニーを5つバービカンでやってくれるので、聴きに行こうかしら。


オペラ三昧イン・ロンドン
女の子マグダレーナ・コジェナ


去年秋のチェコ語ばかりのリサイタル でもマルティヌーの歌曲を歌ったし、彼女ならチェコ語で聴いたみたかったですが、か細いコジェナの儚げな風情は夢の女ジュリエッタに打ってつけで、絶好調ではなかったかもしれませんが、私はコジェナの声も姿も大好きなので、最前列から美しい彼女を堪能しましたニコニコ


ドレスの趣味が悪いコジェナですが、今日の花柄プリントのドレスはとても素敵で(透け具合はちとまずかったけど)、いつもはどうかと思うヘアスタイルも金髪を生かしてとてもチャーミング。


もっとも、今日の扮装は彼女個人の選択ではなくて、コンサート形式とは言っても皆さんそれらしい小物を使ってましたから、役に合うようにお仕着せだったのかもしれません。


彼女のお陰で私はマルティヌーに出会えたわけだし、おそらくそういう人は多かったのではないかしら。同じチェコ人である指揮者のジリ・ビエロフラーヴェクと一緒に、作曲したというチェコ人マルティヌーの知られざる名曲をイギリスでどんどん紹介して欲しいものです。




オペラ三昧イン・ロンドン
男の子
ウィリアム・バーデン


オペラ自体の素晴らしさと共に、彼が今夜の嬉しい驚きでした。


聞いたことのないアメリカ人テノールですが、伸びのあるリリカルな美声は全くの私好みで、おまけに長身の爽やか美男子なので、コジェナとはこの上もなく美しい絵になるカップルキスマーク

この二人でフル舞台で観たいものです。


コンサート形式とは言っても表情などでそれなりの演技はするわけで、ほとんど出ずっぱりで一番心理描写の難しい役を立派にこなして、いやー、ほんとに見惚れました、聞惚れましたラブラブ!


Candideも歌うし、他にもトビー君とレパートリーが被ってるってことは、私の大好きな種類の声ってことです。


アメリカでは有名な歌手なのでしょうか?だとしても、この歌唱力と美貌で(若くはないけど)、なぜもっと世界的に有名ではないのか全くもって理解できません!?プンプン



他の歌手たちも皆さん上手でしたが、

コジェナの他に期待していたのは、ベテランのイギリス人ソプラノのロザリンド・プラウライトで、ROHのリングでは威厳のあるヴォータンの奥方フリッカ役でしたが、今夜も出番は少ないものの、二役演じて迫力充分。

オペラ三昧イン・ロンドン オペラ三昧イン・ロンドン
オペラ三昧イン・ロンドン オペラ三昧イン・ロンドン

コジェナーが折角綺麗なドレスを着ているのに、隣に蛍光ジャケットをRoderick Williamsが・・・カーテンコールの前に脱いで下さいよね。


演出のし甲斐もありそうなこのオペラ、是非フル・プロダクションにしてもらいたいと願う一方、すでに持ってしまったイメージときっと食い違うでしょうから、やっぱり想像の中で楽しむ方がいいかも、とも思ったり。出てくる人たちは皆今日の歌手たちでOKなのけど。


それにしても、こういう手垢の付いてない初めてのオペラを楽しめるのは嬉しい限りです。


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