写真はクリックで拡大します
12月22日から1月23日まで1ケ月も長々とやっているプッチーニのTurandot、当初の予定では11回のうち真ん中3回は、ヨハン・ボータは出るものの、云わばBチーム。ボータは聴きたかったけど腰痛のため諦め、Aチームだけしか観られなかったのは残念でした。
そして、異常に寒かったロンドンで案の定Aチームのトゥーランドットとカラフが相次いで風邪でダウンしたので、3回観たうちテオリンとクーラが揃ったのは一回だけ。でも幸い両方とも代役がなかなかの顔ぶれで、私にとっては嬉しい病欠シリーズとなりました。
Original Production Andrei Serban
Revival Director Jeremy Sutcliffe
Composer Giacomo Puccini
Designs Sally Jacobs
Conductor Nicola Luisotti
Princess Turandot Iréne Theorin/Elizabeth Connell
Calaf José Cura/Fabio Armiliato
Liù Svetla Vassileva
Timur Paata Burchuladze
Ping Giorgio Caoduro
Pang Ji-Min Park
Pong Alasdair Elliott
Emperor Altoum Robert Tear
Mandarin Kostas Smoriginas
私が行ったのは12月22日初日のクーラ&コネル、1月14日のアルミリアート&テオリン、1月17日のクーラ&テオリンですが、
まずはクーラとアルミリアートのカラフ比べをすると、
どちらが良かったかと言えば、やっぱりクーラに軍配が上がります。
この荒唐無稽のアホらしい漫画のようなオペラでは、クーラのようなビジュアル的にも声質も精悍でスケール(顔の造作も)のでっかいクーラの方がぴったりなのは当然ですもんね。
聴く前から想像のついたクーラのカラフ、期待は高かったですが、立派にそれに応えてくれて(想像通りだった)、私がROHで聴いた中では文句無しにベストのカラフです。(他はデニス・オニール、リチャード、マージソン、ベン・ップナー、ユー・キャン・ダイ)。
初日はあの顔にしっかり白塗りにされて気持ち悪かったけど、14日はかなりナチュラルになってハンサムぶりが際立ってました。初日はドーランの量をまちがえたのでしょうか、それとも14日のアルミリアートがほとんど普通の顔色だったので、クーラが「な~んだ、あんなんでいいんだったら、俺もそうしてくれ」、と要求したんでしょうか?
初日は絶好調でさすがと思わせたのが、17日は病み上がりのせいか2、3度ちょっとだけ高音がぐらついたのですが、野太い中低音の迫力で充分に挽回。大スターの貫禄を見せつけてくれました。
この役では負けたけど、ファビオ・アルミリアート(以下ファビオ)が悪かったわけでは決してありません。
クーラが「演技なんてしなくてもいいだろう、こんな役」と言わんばかりに大雑把に済ませたのに対し、(それでいいんですよ)
ファビオはそれはもう細やかに真摯に演じてくれて、なぞなぞを字幕で読むのに忙しくてカラフの顔なんて見てる人はあまりいないでしょうに、私は双眼鏡でじっくり観察したところ、ほんとうに丁寧で、
トゥーランドット姫のなぞなぞの内容にすらいちいち「えっ、OOOでXXXって何だって?うーん、なんだろう~?」、と超まじめに色んな表情を見せてくれました。
ファビオはこんなおちゃらけ役じゃなくて、もっと知的で深い洞察力が必要な性格俳優的要素を求められる役をやるべきなのであって、声のパワーだけが頼りのカラフを何故やろうとするのでしょう?
だって、調子はすごく良さそうだったのに声量は乏しかったんですよ
私は近くの席だったから聴こえたし変化のある表現力で彼から目が離せないくらい惹き付けられましたが、オケががんがん鳴る時はもちろんのこと他の歌手たちにもかき消されそうでした(声のでかいテオリンに負けるのは仕方ないとしても、ピンポンパンにも負けてた)。
ほんと、一番の弱点を敢えてさらけ出すようなこんな役しないほうがいいのにぃ、とファビオには頑張って欲しい私は切に願うものであります。
それに若い二枚目役をやるには年齢的にもちょっとしんどくなってきたでしょうから、例えばアレヴィの「ユダヤの女」の父親役なんかいいんじゃないかと思ったけれど、イタリア人のファビオがフランス語のこの役をやる筈はないし、ほんとイタリア人の中年テノールってどうすればいいんでしょうね?
ところで、こんな役にもリアリズムを追求するファビオ、衣装が全部だぶだぶで笑えたのはクーラのサイズだから仕方ないとしても、結婚指輪をしたままってのはあんまりではないでしょうか? そんな人初めてです。外すと奥様のデッシーが怒るのかしら? でも、テオリンとホットなラブシーンを演じてねっとり胸撫ぜまわすのはいいわけ?
次はトゥーランドット姫の比較ですが、
代役のコネルおばさんが意外によかったのはすでに書きましたが(→こちら )、14日のテオリンは張りのある美声でとても素晴らしかったので、これではコネルおばさんはとても敵わない、と思ったのですが、17日のテオリンは声量は充分だったもののちょっと叫び声のような不快さが目立ってしまい、コネルおばさんの優しい声が恋しかったです。
やっぱり同じ歌手でも日によってちがうものなのよね、ということを又もや思い知ったのでありました。ファビオも声量たっぷりで歌えることもあるのかしら?
リュー役のスヴェトラ・ヴァシレーヴァは3回聴いたうち、2回目はかなり良くて絶好調のテオリンと共に女性群頑張るの図でしたが、他の日は始終美しい声とはとても言えなくて、総合的にはあまり良い印象を持てませんが、Bチームのリューはデブだったそうですから、ヴァシレーヴァの可憐な容姿をありがたいと思わなければいけませんね。
ピンポンパン三人組は今まででベストはチームでした。今までは大して上手ではなかったので、早く終わらないかしらと思うことが多かったけれど、今回は3人とも上手で3回とも楽しめました。ご贔屓のパーク君もお得意のおふざけ演技で好演。ほんのちょい役のコスタス君もよかったですし。
17日はオペラは初めてという方も何人かご案内したのですが、ビジュアル的にも皆さんに喜んで頂けるだろうという自信はあった優れたプロダクションですが、今回は今までの中でパフォーマンス的にもベストで、プッチーニの記念の年に相応しいイベントになり、ROHの2009年は快調な滑り出し。