11月2日の日曜日の午後、パリのオペラ・バスチ-ユでヴェルディのRigolettoを観ました。


え、またリゴレットなの?  たしか6月にドレスデン でも観たんじゃなかったっけ?


そうなんです、どちらもリゴレットが特に観たくて行ったわけじゃないのに、たまたまやってただけなんですが、ポピュラーなオペラだからよくやってるってことでしょう。

ドレスデンでは開演直前にダフ屋から買ったのですが、今回のパリは事前に切符を買っておきました。

満席でしたから買っておいて正解でした。正面ですが6階席で74ユーロ

このでっかいオペラ・バスチーユ、私としては横からでもいいので近くで観たいところですが、ここにはそういう席がないのが残念。でも音はちゃんと聞こえました。


前夜のガルニエでのバレエが全く白紙の状態で観たのに対し、今度はお馴染み過ぎて手垢のついたリゴレット。

でも、字幕が理解できない身には好都合。舞台に集中しかないですもんね。ドレスデンでも字幕を見ないと他の細かいことが観察できることを実感したし、今回も(遠い席だったので)双眼鏡で歌手をアップでじっくり見ました。

(お馴染みのオペラの字幕は原語で見るのが理想的ですね)


嫌われ者の宮廷道化師リゴレットを父に持ち、女たらしの公爵に弄ばれ、それでも愛しい彼を父親の暗殺計画から守って自ら犠牲になるというオペラ界きっての不幸娘ジルダのお話で(もう少し詳しくはこちら )、ヴィクトル・ユーゴー原作ですからよくできていて、何度見てもリゴレット父娘に同情してしまいます(涙)汗


Direction musicale Daniel Oren
Mise en scène Jérôme Savary
Décors Michel Lebois
Costumes Jacques Schmidt et Emmanuel Peduzzi
Lumières Alain Poisson
Chef des Choeurs Alessandro Di Stefano

Il Duca di Mantova Stefano Secco
Rigoletto Ambrogio Maestri
Gilda Ekaterina Syurina
Sparafucile Kristinn Sigmundsson
Maddalena Varduhi Abrahamyan
Il Conte di Monterone Carlo Cigni
Giovanna Cornelia Oncioiu
Marullo Igor Gnidii
Matteo Borsa Jason Bridges
Il Conte di Ceprano Yuri Kissin
La Contessa Claudia Galli
Paggio della Duchessa Anna Wall


家セットと衣装くつ


一つのセットを回転させて公爵邸にもリゴレットの家にも殺し屋の酒場にも使い回すのはROGと同じ経費節約方法ですが、錆びたメタルの殺伐としたROHよりもこの白っぽい壁のほうが優しい雰囲気で衣装も映えます。ドレスデンのモダンで洒落たプロダクションにはどちらも負けますけどね。


衣装はまともすぎて面白くないですが、ロミオとジュリエット風のジルダは古典的で可愛くてイメージぴったり。

(下の写真の細いリゴレットは、今回の人ではありません)



音譜パフォーマンス


公爵役は、ROHの「愛の妙薬 」でほんとに頭が弱そうなネモリーノを清々しく好演したステファノ・セッコ。彼が一番楽しみでしたが、期待通りのリリカルな美声でうっとりさせてくれました。顔は悪くないものの、小柄でハゲ気味なのでビジュアル的にはナンですが、他の役でも聴いてみたい私好みのテノールです。


ジルダはおたふく顔のロシア人エカテリーナ・シウリーナですが、可愛い衣装で仕草も可憐、素直で清らかな声は純情なジルダに理想的。私のROHジルダ比べ ではネトレプコとシェーファーを押さえて第一位のソプラノ。来年2月にまたROHジルダを、今度はレオ・ヌッチとの共演で歌ってくれるので、舞台近くで聴くのが楽しみ。


  

さて、問題はリゴレットむっ


公爵とジルダは上手なことはわかっていたので、バスチーユに観に行きましょうとお勧めできたのですが、実はリゴレットはすごく不安でした。ホアン・ポンスの裏キャストですが、アンブロジオ・マエストリって誰?ネット検索しても出てこないよ。




やたらタテヨコでかい人でしたが、メークのせいで中年には見えるものの、もしかしたら案外若いのかも。


最初は声が出なくて、他の二人と比べるとかなり劣りましたが、後半は盛り返して、まあこれなら許せるかというレベルには達しました。


でも、図体が大き過ぎるのが原因なのか、動きが鈍いのなんのって。ただ突っ立ってるだけで、体を折り曲げるのすらしんどそう。でかい分視覚的には邪魔臭い大根役者、ウドの大木。


リゴレットを歌えるバリトンは山ほどいる筈なのに、パリ・オペラ座ともあろう大劇場がなんでこんな人を?裏キャストと言っても、数回出るんですよ。(そんなこと言ったら、ROHだってガヴァネッリおじさんを又もうすぐ出すんだもんね、嫌になっちまいます)


ダニエル・オレン指揮のオケはなめらかでとても良かったです。


ということで、まあ総合点としては、セッコとシウリーナが好調で期待通りで、リゴレットも怖れたほどひどくなかったし私の嫌いな声ではなかったので、大満足とはいえないけど、文句は言いますまい。ご一緒したお二方はリゴレットを初めてご覧になったのですが、そりゃオペラとしてはとても優れた作品だし、充分楽しんで頂けたようで、前日のバレエに続き、パリの良い思い出になりました。

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