9月25日、ロイヤルオペラハウスにLa LaLa Calistoを観に行きました。


ROHでは初めて上演される無名のオペラですが、このプロダクションはミュンヘンのオペラハウスで3年前にやったのと同じで、歌手もほとんどそのままのようです。こんなマイナーなオペラ歌える人は限られてますもんね。


Composer Francesco Cavalli
Director David Alden
Set Designs Paul Steinberg
Costume Designs Buki Shiff

Conductor Ivor Bolton
Giove Umberto Chiummo
Mercurio Markus Werba
Calisto Sally Matthews
Diana/Destinio/First Fury Monica Bacelli
Endimione Lawrence Zazzo
Linfea Guy de Mey
Satirino/Nature/Second Fury Dominique Visse
Pane Ed Lyon
Silvano Clive Bayley
Giunone/L'Eternità Vèronique Gens



1651年の作品なのでかなり古いのですが、Francesco Cavaliなんて作曲家、全く聞いたこのありませんでした。


心地よく流れるバロック音楽だけれど盛り上がりに欠けて印象の薄い、いわば超駄作のヘンデルみたいで、これが無名のオペラだという理由はよくわかります。


でも、音楽的には優れていなくても、このモダンでスタイリッシュで明るく綺麗なプロダクションはビジュアル的にとても楽しめました。


メモギリシャ神話の星座「おおぐま座」にまつわる一部割愛版とも言うべきでしょうか(→フルストーリーはこちら をご参照)


月の女神ダイアナに仕える妖精カリストはご存知色情魔の神々の神ゼウスに見初められて子を孕み、これまたお馴染みの妻シュノーの嫉妬で熊に変身させられてしまうけれど、哀れに思ったゼウスがいずれは神の国に住まわせてあげると約束するというストーリーですが、これだけでは単純過ぎるので、潔癖なはずのダイアナと羊使いの恋愛や、処女のまま死にたくないと男漁りする女装の年増妖精他マイナーなキャラクターがセックスをテーマに賑やかに(上手にまとまってないけれど)入り乱れます。


ゼウスが口説いても頑として拒否したカリストが、ダイアナの姿に変装して求愛するゼウスには喜んで身を捧げ、ってことはレスピアンなわけだし、ゼウスも女装するわで、演出家にとっては性的倒錯で遊べる楽しい設定です。


このプロダクションは最大限にそれを生かし、現代のホテルに滞在する映画撮影隊という設定にして、大胆な衣装と大袈裟なおふざけ演技で笑いを誘ったのはいいけど、時にエッチが過ぎて下品になったのは残念。例えば、半人半羊のキャラクターの股間にあからさまなモノが付いてたり、ダイアナが羊飼いの股ぐらをまさぐったり・・・



  



こういうのは近くで見るのがベストなので舞台横の理想的な席を確保してあったのですが、例のお琴のコンサートと重なったので諦め、アンフィシアターの前から2列目に座りました(28ポンド)。安い席は埋まってたけど、やはり高い席は結構空いてました。私が行ったのは2回目で、良い批評が出て多少売れたにちがいないですが、初日は空席が目立ったそうで、勿体無いことです。


音譜パフォーマンス


勿体無いというのは、パフォーマンスが良い場合にしか言えませんが、これは皆さんなかなか立派な歌唱と演技で、不満な人はいませんでした。


タイトル・ロールのサリー・マシューズは妊娠中にも拘わらず大丈夫かしらと心配いになるほどの大熱演で、声も良く出て、なによりも控え目だけど美しい容姿でとてもチャーミング(今回は残念ながら体型を隠すためにアニマル柄のレオタードの上にカゴのような衣装を追加したようですが)。いまひとつ特別ななにかが欠けてるので世界的ソプラノにはなれないでしょうが、ROH若手育成プロジェクト参加者の中では総合的にトップの彼女には母親になっても頑張ってもらいたいものです。


世界的と言えば、カウンターテナーのローレンス・ザッゾの成長したこと!気味悪いから嫌という人も多いカウンターテナーが大好きな私、彼は何度も聞いてますが、上手だけど個性がなくて中堅どころと位置づけてたけど、こらならもう文句無くトップクラス。リサイタルがあればホイホイ行くし、CDもあったら買っちゃう。


もう一人世界的なレベルなのはヴェロニク・ジャンス。フランス古典派を代表するメゾソプラノの彼女を生で聴くのは初めてなので楽しみでしたが、期待以上の素晴らしさで、彼女の存在ゆえに他の歌手たちが格下に見えてしまうという弊害もあったほど。


これもやっと生で聴けたカウンターテナーのベテラン、ドミニク・ヴィスも芸達者ぶりを見せてくれて健在だったのは嬉しかったし、パン役のエド・リオンも名前を覚えておこう。


名作とはとても言えないこのオペラですが、ウィットに富んだプロダクションと上等のパフォーマンス、珍しい楽器が並ぶオーケストラも興味深くて、好印象の舞台でした。

後ろにいる歌わないお姉さんたちはスタイル抜群できれいでした。

              Umberto Chiummo Sally Matthews


Clive Bayley、 Dominique Visse(前を隠せよな)、 Markus Werba、 Lawrence Zazzo(僕だけつまんない衣装)  

Monica Bacelli, Veronique Gens, Guy de Mey(男性です)、  Ed Lyon 



                   人気ブログランキング  クマ