(緊迫ムードの金融界ですが、横目で心配しながらも、私はマイペースで久し振りにオペラ記事を書いてみましょう。)



9月19日と22日の2回、ロイヤルオペラハウスにプッチーニのLa Fanciulla del West西部の娘を観にいきました。


超リアルな舞台セットと衣装のこのプロダクション、1977年のプレミエだそうですから、陳腐なくらい古臭いです。


ま、それは別にいいのですが(時代の読み替えもしにくい設定だし)、先回2005年も同じホセ・クーラだったので、彼以上にぴったりの人はいないだろうとは思いつつ、特に彼のファンでもないので、今回のお楽しみは専らミニー役のエヴァ・マリア・ウエストブローク。2年前のムツェンスク群のマクベス夫人 も去年のワグナーのリングのジークリンデもすごく良かったので、初めてイタリア物の彼女を聴くのをとても楽しみにしてました。


ストーリーとかは前回の記事を読んで頂くとして(→こちら )、要するにゴールドラッシュ時代のならず者と酒場の女将の純愛物語で、西部劇には欠かせない保安官が彼女に横恋慕するという元祖マカロニ・ウエスタン。


Composer Giacomo Puccini
Director Piero Faggioni
Set Designs Kenneth Adam
Costume Designs Piero Faggioni


Conductor Antonio Pappano
Minnie Eva-Maria Westbroek
Dick Johnson José Cura
Jack Rance Silvano Carroli/Clausio Sgura
Nick Bonaventura Bottone
Ashby Eric Halfvarson
Jake Wallace Vuyani Mlinde
Sonora Daniel Sutin
Trin Hubert Francis
Bello Kostas Smoriginas
Happy Quentin Hayes
Joe Harry Nicoll
Larkens Andrew Foster-Williams
Harry Robert Murray
Sid Adrian Clarke
Billy Jackrabbit Graeme Danby
Wowkle Clare Shearer
José Castro Jeremy White
Pony Express Rider Lee Hickenbottom


 


19月19日

どの批評でもベタ誉めのウエストブロークが予想通りのどんぴしゃキャラの上に絶好調。迫力と魅力に富み、気丈で心優しい姉御の恋心を細やかに歌い演じて、グラマーな美人だし、今が旬のオーラが出てました。

対するホセ・クーラも、彼女に負けじと好演して素敵だったので、ファンになっちゃいそう。

実に絵になるタテヨコ大型カップルでした。もちろん歌も上手なのが第一ですけどね。


だけど、シェリフのランスSilvano Carroliのが全く駄目。
三角関係ってのは3人のバランスが取れてないといけないのに、なんと1977年のプレミエに出たという爺さんを引っ張り出してくるってどうよ? 古めかしいのは舞台セットだけで充分だむかっ 

いえね、それでもいいんですよ、歌さえ上手けりゃ。容貌が役に合わないのはオペラの常ですから。でもこの爺さんは歌もひどくて、せっかく華のある主役二人を揃えたのに、三角形の一角がこれじゃあぶち壊しだ。脇役も皆芸達者で上手だったので、余計この爺さんのお粗末さが際だって、呆れるばかりむかっ

ということで、この日は爺さん以外は皆さん立派でオケも素晴らしく、パフォーマンス的には満足でしたが、聞かせるアリアは一曲しかないしなんか盛り上がらないので、プッチーニとしては一番人気がないのも仕方ないね、と又思い、特にもう一度観たくもなかったのですが、ウエストブロークがキャンセルした時の保険にもう一回分買ってあったので、3日後にまた行きました。ランスは違うバリトンなので、あの爺さんより悪いってことはあり得ないだろうし。

 

29月22日

で、2回目は視点を変えて、オーケストラ音楽に注目してみました。
そしたらこれが状況や心理状態を実に丁寧に表現して、素晴らしいのなんのってキラキラ

歌中心の普通のオペラの聴き方をしたら退屈だったのに、オーケストレーションには感心しっぱなし。ガーシュインかと思うようなジャズっぽさもあったりして、プッチーニがこれで新境地を開いたのがよくわかり、ヴェルディと比べたら単純で薄っぺらいとちょっと馬鹿にしてたプッチーニですが、見直しちゃいました。もちろん、パッパーノ指揮のオケ演奏が良かったからこそ良さが充分わかったわけで、メリハリがあって素晴らしい演奏でした。


歌手たちもこの日はさらに大熱演で、カーテンコールの拍手もより大きかったです。19日は声が温まるまでに少し時間の掛かったウエストブロークは最初から絶好調だったし、ホセ・クーラもスケールの大きな彼女に負けてたまるか、という気迫に満ちて、全ての面ででっかい二人ががっぷり四つに組んでくんずほぐれつつ。


芝居としての盛り上がりもすごくて、歌の良し悪しがまず大事だと思う私が、あまりに生き生きとしたドラマに、「愛し合ってんだから、盗賊のジョンソンだけど、許してやれ~」なんて珍しく応援しちゃいました。

ええかっこしいでルックスで得してる奴だと思うこともあったホセ・クーラ、45歳で白髪が増えてオツムもちょっと薄くなり始めたけど、なかなか素敵じゃないの! ファンになっちゃいましたよラブラブ!


この日ドラマとしてぐっと来たのは、保安官ランスがずっとよかったからという理由も無視できないでしょう。Claudio Sguraは名前を聞いたこともないバリトンですが、長身で細身な意地悪そうなダテ男で、黒い保安官のユニフォームってこんなに洒落てるのかと新鮮だったほどダンディ。ミニーとの絡みもこれまた絵になって、充分三角関係の一旦を担う魅力あり。

歌のほうは、最歩は緊張してたのか、声が出てなかったけど、ぐんぐん良くなったら、なかなかの美声で、陰険な恋敵役とかで重宝されそうな容姿と声です。あんなジジイじゃなくて、ずっとこの人出せばいいのに。


酒場のバーテンダーのブエナベンシューラ・ボトンはENOのキャンディード 美しきエレーヌ などでコメディ専門のイギリス人テノールなのですが、今回は控え目にながらいつもの芸達者ぶりで良い味出してましたし、全員、動きのある演出できびきびと演じて素晴らしかったです。


ということで、舞台の古めかしさもパフォーマンスが良ければ良く見えてしまうという基本的な事実を再確認させてくれた西部の娘に感謝。舞台の前全面に貼ってあったネットが邪魔臭かったけど。


カメラ2回分のカーテンコールの写真を載せておきます。同じ席だったので角度も同じでつまんないですが、保安官ランスが違うので、どっちの日がわかりますよね?


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