今更で恐縮ですが、日本に行く直前の11月12日に観にいった「椿姫」の事を書いておきます。このごろはまるで着物ブログで、これでは「オペラ三昧」という看板に偽りありですもんね。(クリックで写真は拡大します)


この日のオペラ劇場はなんとパブの二階で、私なぞは滅多に行かないHighgateというロンドン北部郊外の閑静な高級住宅街。

ネット仲間のLucyOさんが出演なさるということで、ちょうど日本からいらしてた春さんと一緒に出掛けました。




 着物姿の春さんがパブの前にお立ちです



Hampstead Garden Opera は、1990年にイブニングクラスとしてスタートして2002年にチャリティ団体になり、今は年二回フルオペラを2演目数回づつ上演しています。


入場料は16ポンドで、10ポンドくらいでロイヤルオペラハウスによく言っている私には結構なお値段ですが、チャリティなら仕方ないですね。パブの二階のシアターはうんと小さくて客席が120くらいなので、思い切り真近に見られたのは贅沢な経験だったし。


素人のオペラを観るのは初めてなので、なにを期待していいのか全くわかりませんでしたが、これがもうすごく面白かったのですよ。



ヴェルディの椿姫La Traviata については、←こちらの過去の記事を読んで頂くとして、




 

             セットはシンプルでも衣装はなかなか凝ってます



何が興味深かったって、歌手のレベルです。


だって、主役のヴィオレッタ役のHelen Julie Johnson は、

どうしてこんな人がこんなところで歌わなくちゃいけないの?! とびっくり仰天するくらい上手で、どんなオペラハウスに出しても恥ずかしくない程の実力なのです。本業は教師なのでそうですが、こんな人がプロになれないシステムって絶対まちがってます。彼女が出る他のオペラ、機会があればロンドン中、どこにでも聴きに行きます!



そして、もっとびっくりしたのは、アルフレード役のMatt Connolly

なんでこんな人がこんなところで歌わせてもらえるの?! と信じられないくらい下手くそだったんです。テノールとして上手だとか下手だとかっていうレベルなどではなく、もうただ普通の喋る声に節が付いてるだけ。その喋る声も美声でもなく、ぼんやりと輪郭のない声質で、いくら世の中テノール不足でも、いくらなんでも他に、少なくともオペラ的歌唱ができる人がいるでしょ? 彼の不快な声はいまだに耳にこびりついているので、もう二度と聞く必要はありません。



これほど極端なキャストの組み合わせをするなんて、ハムステッド・ガーデン・オペラってめちゃ面白いぞ!プロのオペラでは絶対あり得ないもん。


  

      上手も下手も仲良しこよしで、楽しそうなチームプレーではありました


極端なのは主役の二人だけで、15人くらいのオケはすんなり美しいし、コーラスもよくそろって聴きやすかったし、ヴィオレッタの友人娼婦のフローラと女中役はちゃんと声楽をやった女性たちで、水準はなかなかのもの。


お父さん役の弁護士さんは、アルフレード役ほどでないにしても、これもストレートな喋り声のままだったのですが、ルックスもぴったりで芝居も上手なので、アルフレードのお父さんってきっとこんなおじさんなんだと思っちゃいました。



        ドレス姿がお似合いのLucyOさんと



この素人集団のオペラが完璧ではないにせよお芝居としてぐっとくるものがあったのは、英語だったせいかもしれません。ご存知のように、私は翻訳オペラが嫌いなのですが、直接心の琴線に触れるのはやっぱり普段使っている言葉なのかなと認めざるを得ないような気すらして、ちょっと翻訳オペラを見直さなくちゃ、と思ったのでした。それに今回の翻訳はなかなかよくできていて、何度も英語の単語が意味も的確にかつメロディーにもうまくはまった箇所があって感心しました。


翻訳モノには抵抗はあるのですが、別のものだと思えばいいんですよね。ロンドンにはEnglish National Operaのように全てを英語にしてしまうオペラハウスがロイヤルオペラハウスに伍する程の支持を得ているし、一つのジャンルとして確立されているわけです。


それにしても、コーラスの一人として堂々の出演を果たしたLucyOさん、素敵でした。それにとっても羨ましかったわあ。歌は歌えないからオペラは無理だけど、私も何かにをやってみたい、とこういうときは刺激されます。



12 Nov 3  その日の春さんと私のいでたち



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