6月のロイヤルオペラハウスの「トスカ」三昧も終わりました。
(3回も行ったのにまだ記事を全然アップしてませんが、只今準備中です。頭の中だけでですが・・。)
しかし、トスカが観たかったわけではなく(むしろうんざり)、3回も行ったお目当てはテノールご贔屓ナンバー・ワンのマルセロ・アルバレス。(以下丸ちゃんと呼びます。デブだから)
6月27日は In Conversation with Marcelo Alvarez という公開インタービューがROHで行われたので、素顔の丸ちゃんに接することができるかもしれないと期待して行ってきました。
このトーク・イベントは年に何回かあるのですが、今まで大した人は出なかったので一度も行ったことなかったのですが、今月は一気に大物歌手が二人も登場。イギリスが誇るバリトン歌手サイモン・キーンリーサイドのトーク・イベントにも14日に行きました。
サイモンも丸ちゃんも、観客のほとんどが60代の女性。イギリスでも日本でもこの年代の女性が一番時間に余裕もあってパワフルなんでしょうね。私も早くなりたい!
アルゼンチン人の丸ちゃんはあまり英語が喋れないいので、簡単なことは英語でもどかしく答えてくれましたが、ちょっとややこしくなると通訳の助けが必要で、でも段々熱が入ってくるともうスペイン語で早口でまくしたて、気が短いのか、通訳がまだ半分しか訳し終わってないのに待ち切れなくてもう続きをお構いなしに喋り出すので、スペイン語が理解できない私は置いてけぼり気味。通訳の若い男性が一生懸命訳してるのに失礼じゃない?
もしかして、丸ちゃんて自分勝手な人? スター歌手にはありがちですけど。
若い頃はよく飲み屋でポップソングを歌ってタダ酒飲んでたとか(女の子も引っ掛けてたんでしょ)、
音楽は得意だったけどオペラのようなまじめな音楽を職業にするとは思わなかったとか(デブじゃポップ歌手にはなれませんよ~、ってでもそういえばプレスリーもいたか)、
イタリア語が一番オペラには適しているとか(やっぱり!)、
ラ・ボエームはやってて楽しいけど(チャンバラごっこもあるもんね)、
トスカのカヴァラドッシは理解できない役だとか(なんで嘘つきで裏切り者のトスカを愛してるんだかわからないというのはまさにその通り)、
頭でっかちな歌手が多いけど僕はハートで歌うんだとか(丸ちゃん芝居下手だから、少しは頭で考えて役作りしてほうがいいと思うけど (^_^;))、
ヴェルディは伴奏がシンプルで歌手の自由がきくけどプッチーニはオケががっちり付いてるから難しいだとか(気が付かなかったけど、そうなんだ)、
コベントガーデンに出るのは好きだからというリップサービスもして、一時間半足らず、歌う声とはまるっきりちがうごくありふれた普通の声で喋りまくってくれて(ほとんどスペイン語で)、素顔の丸ちゃんに接する貴重な機会でした。
太って見える紅白縞柄
でもさあ、あの水増しはなんだ?! サイモンのときもそうだったけど、CDから何曲かを延々と流すわけよ。本人たちももっと喋りたかったみたいだったし、話題のとっかかりとして曲を流すとしても、サワリだけで充分で、全部聞かせてくれなくても、8ポンド払ってここに来てるファンにはお馴染みの曲ばかりなんだからさ~。音楽流れている間丸ちゃんは手持ち無沙汰そうだったし、折角の盛り上がりがその度に中断されちゃうし、会場にはシラケ鳥が飛び回ってたぞ。ちょっとだけでもCDに合わせて鼻歌でも歌ってくれるならともかく、本人が目の前に座ってるだけじゃ付加価値はつかないっちゅうの。
いつもこんなだったら、もう行かないわ。もう一つジョン・トムリンソンの切符が買ってあるけど、まさか長々とワグナーのヴォータンソング流すんじゃないだろうねえ。やだやだ。
丸ちゃんのいでたちはと言うと、グレーの安そうな背広にグレーのド地味なネクタイというサラリーマン風ドブネズミにダサい近眼眼鏡。まあデブは奇抜な服を着ないほうがいいのでそれでいいんだけど、華やかなスター歌手のイメージは全くなし。13日に道を歩いているのを見かけたときも同じ服だったし、一緒にいた奥様(にちがいない)もさえない服をお召しでした。
もしかして、丸ちゃんってケチなのかしらね?
でも、ケチでも自分勝手でも(もちろんデブでも)構わないから、丸ちゃん、ロンドンでドンドン歌ってね!
会場はROHの中にあるClore Studioというバレエの大きなレッスン場の隅っこで、5、6列の長いベンチ席で座れるのはニ百人程度。私は最前列の彼から5メートルくらいのところに座りました。
そこでCDとDVDも売っていて、買えば丸ちゃんがサインしてくれるということでしたが、種類も少ないし、わざわざここに来るようなファンはすでに持っているに決まってるので、ほとんど誰も買いませんでした。「このDVD日本じゃ駄目かも」と言いながら日本人の若奥様風の二人だけがお買い求めになりました。
写真では差はわからないでしょうが、二重アゴが随分すっきりして、ズボンにも余裕が
さて、ここからは内緒の話なので、罪悪感で小さくなりながら、字も小さくしますね。
9時頃に終了して会場を出たら、そこは普通にオペラやってるメインのホールで、まさに「トスカ」の第ニ幕目が始まろうとしていたところでした (トスカは2組キャストで、その日は丸ちゃんじゃないほうのチームの公演だったんです)。
・・・こ、こっそり入れるじゃん!!
歌手のランクが数段劣るこのBチームの切符は前以ては買ってなかったけど、どうせ売れ残るからあとで買ってせめて唯一有名なサミュエル・レイミーを安い席でちょっとだけ聴きにいこうと甘くみてたら、なんと切符が残ってなくて残念に思ってたところだったのです。
そんな私に降って沸いたようなありがたいチャンス!
しかも、観客席を覗いたら、おあつらえ向きの隅っこの立見席がひとつ空いてる!
タダ見なんて悪いことをしちゃあいけません。だけど、ちょっとだけ立見席で聴くだけなら誰にも迷惑は掛からないよね~・・。
でも、でも、と第ニ幕以降は切符のチェックなどしないのは知っていても、気が弱くて悪いことのできない私は多いに迷ったのでした。
結局、折角だから15分だけ聴かせて頂いてから帰ろうと決心して(お腹も空いたし)、遠慮がちに立っていたのですが(着物じゃなくてよかった。目立つもん)、後ろでドアを閉められたので途中では出にくくて、仕方なくニ幕目が終わるまでいました(30分だけですが)。
で、無賃入場の分際でこんなこと言うのはナンですが、
ひどいパフォーマンスだったこと!
スカルピアのSamuel Ramey、2年前にもこの役で聞いたんだけど、そのときももう声が出なくて失望したのを思い出しました。今回はさらに声に張りもなくなって、もう過去の人でしょう。
トスカ役のCatherine Neglestadは美人で、深い艶やかな低音はゲオルギューよりもトスカらしくてこちらの方がいいと思う人がいるかもしれないけど、高音はとても耳障りで不快な声。
でも一番ひどいのはテノールで、聞いたこともないNicola Rossi Giodano、声はでかいけどあれは歌ってるんじゃなくて吠えてるだけ。
ったく、こんなのしかいなかったの?! あっちのチーム(ゲオルギュー、アルバレス、ターフェル)より下手なのは当然だけど、それにしてもこれ程差がつくなんて。これじゃあ自分でお金払ってても、最後まで我慢して聴いてられなかったでしょう。
しかし、Bキャストと言えどもトスカの新プロダクションはすごい人気で、ぎっしり満員の聴衆からはやんやの拍手。 まあトスカのオペラ自体に拍手をしているオペラ初心者がとくに多い夜だったのなら理解できるけど、そういう人ばかりのはずはないので、
「あんたたち上手な歌手ってものを聞いたことないわけ?!」と理解できない私。
「あっちの良い方を見られなくて可哀相だこと・・・。」とも。
なーんて、それはお前があっちに3回も行ったから切符が残ってなかったんじゃないか!というお叱りが飛んできそうですが、弁解させて頂きますと、
人気パフォーマンスのフレンズ予約は一回分だけにして下さいという「お願い」(お達しともいえる)がされることがあり、このトスカも当然そうだったのですが、初日のガラ公演は別枠だったのでこれで一回、自分のフレンズ分で一回、会社の同僚のフレンズ分で一回、と3回は堂々と行っても文句言われないはず。(これ以外にお友達用にちょこっと余分にせしめておいたのはごめんなさいですが)。
尚、Aチームの切符はネットオークションで3倍の値段が付いていたそうです。