ケロちゃんの素敵な無茶ぶりから生還!
そして、更に鬼振りっ、ドンッ!
……すみません、すみません。
もう必殺技使わせて頂きました。
みんなの知らぬ所で新たな人物、また登場! そして引っ掻き回します!
それでは渦へレッツダイブ!
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今、スタジオには異様な空気が流れていた。
「もう、だめだってば。パパったら」
「お前が可愛すぎるのがいけないんだぞ。今日も帰りにデートして帰ろうな」
「でもね、パパとデートすると私の部屋が埋もれちゃうんだけど」
「だったらいいマンションを探して買ってあげよう。そこに住むのも良いし、俺からのプレゼント部屋にもいいだろう」
「パパっ、いくら何でもやりすぎよっ!」
「そうかな? 俺はこれくらいで丁度いいと思うんだが」
頭を抱えるキョーコは、男の膝の上でこの会話をしている。
因みに一番乗りで撮影所に入り、そこからずっとこの手の会話が続いている。
だから四人が話しかけたくとも、その隙間さえ与えない状況に四人共々参っていた。
一人は余りに見知った顔で、未だ尊敬の対象であるがゆえに。
一人は余りに尊敬しすぎた相手ゆえに。
一人は余りに女将の母親が昔、憧れていた俳優ゆえに。
一人は余りにかけ離れた存在なゆえに。
「そろそろ始めようと思うんだが、いいかな?」
「はい、頑張りましょうね。パパ」
「そうだな、京子」
「じゃあ、今日もよろしく。京子くん、クーさん」
*****
その台本が俳優に渡される2日前、つまり一週間前からキョーコは地方ロケの名目である場所にいた。
「そんな事を言っても、無理なものは無理ですぅ」
「今のままでも可愛いが、先の事を考えれば今のうちになれておいた方がお得だぞ」
「どういうお得なんですかぁっ!」
「自分の娘が可愛いから、しっかりと進路指導だ」
「そんな照れるな!なんて無理です!」
先ほどから堂々巡りを繰り返しているこの状況に、キョーコは軽く目眩を覚えていた。
「呼び方は? キョーコ?」
「うっ・・・・パパ、なあに?」
「うん。やればできるじゃないか」
その光景を渋沢監督はぽかんと、社長に至っては些かあきれ加減に見ていた。
「あの、あれはどういう事だ?」
「まあ、元々親子役をやった事があってな。その時から大のお気に入りだって訳なんだが。相変わらずあいつの愛情は暑苦しいな」
「・・・・しかし、本当に彼女はそこら辺中の男を本気で虜にするんだな」
「ああ、だから面白いだろう。あいつも胃袋と演技者魂、両方持ってかれた口だからな」
「・・・・もはや彼女は恐ろしいな」
ただでさえあの四人を虜にしながら、どんどん華が開いていくように、演技も魅力もとどまるところを知らない。
「おいっ、クー。お前の為にこんな出演者は希望者なんて事になったんだからな!」
「知らせてくれたのはボスじゃないか! 俺はキョーコの全てにおいて釣り合う男しか認めん!」
「ぱ、パパっ、何を言い出してるのっ!」
「当たり前だっ! 大事な娘をそこら辺の大根役者にやれるかっ!」
「早く撮影を始めねえと、大切な娘との時間がなくなるぞ」
「それは大変だ!キョーコ、頑張ろうな」
四人の預かり知らないところで、父親が死んでから一人になったアイリを女ではなく、一人の人間として接してくれた男性、それが隣の家で弁当屋をやっていた藤井が登場していた。
*****
「女の子ってのは可愛いが、それだけじゃないだろ。アイリちゃんは料理はうまいし、家事も上手だし、喧嘩も強く身も軽い。そういう中身まで全部を見てくれる男をちゃんと見極めなきゃな。アイルも含めてだぞ」
「そんな人いるのかな? 私の周りには女である私しか見てくれない男性ばかり。藤井さん位よ?」
「俺は大好きな奥さんがいるからな。それに女の子は弱いって決めつけちゃいけないよな」
「ふふ、ありがとう。いつも元気ばっかり貰ってるね」
ここにいると本当に心が安まる。
奥さんもまるで本当の子供のように接してくれるから、つい甘えてしまう。
こんな心地の良い毎日が送れるようになればいいな・・・・
「アイリちゃん、って、寝ちゃったか」
天使のような寝顔を見せられるのはここでだけ。
外では大人や男の欲を見せつけられ、アイルがデバってしまうから。
でも・・・・昔カウンセラーをやっていた藤井は思った。
このままではいつかこの子の心は壊れてしまうだろう。
自分が本当に心から好きになれる男性が現れない限り、その男が彼女を優しく受け入れない限り、アイリとアイルの距離はどんどん離れてしまう。
「こうしてると赤子のようだな」
毛布を掛けてやりながら、頭をそっと撫でてやる。
誰よりも優しい父親のような顔がそこにはあった。
*****
DVDを停止させると監督は四人に向き直って高らかに告げた。
「みんなに見て貰ったのが、この一週間に撮った新たな設定部分だ」
「「「「・・・・(聞いてないからっ!)」」」」
「ある意味、あの通り、クーに認められなければ京子くんにもたどり着けないからな」
「「「「(どんな試練なんだ!!!)」」」」
「勿論、話の流れやその他諸々は全て京子くんに任せてある。彼女はアドリブに慣れているから、さっきのような画がとれる。楽しみにしてるぞ」
「さっきの全てアドリブなんすか?!」
「ああ、そうだ。二人であっと言う間に世界を作り出してしまったからな。だから・・・・」
コホン、と俯きながら咳払いをしてからニヤリと笑い
「食われて使い物にならなくなったら、セットから出て貰う。そのつもりで行ってくれ」
まさにここにキョーコを巡りサドンデスの戦いが始まろうとしていた。
***** つづく
そして初参戦のユンまんま様へ!
すみません、必殺引っ掻き回し、及び逃げます~~~~~~!
明太も南の島に旅に行きたいっ!