初恋の季節 10 <モモカの恋> | ぺんぎんの戯言ブログ

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スキビファンが今まで読専だった駄文を書いてみました。

出版社、原作者、関係者には関係ない趣味の二次駄文です。
二次が嫌いな方や、悪戯、嫌がらせ等はご勘弁下さいませ。

因みに、基本的に尚ちゃんが好きではないので、尚好きな方は申し訳ありません。

撮影最終日を迎えたキョーコは……

∽∽∽∽∽∽∽

始まる前は自分には無理な役だと思った。だって恋を楽しむ女の子がどんなものか、全く想像が出来なかったから。

敦賀さんに協力を頼んで接点を絶って貰って、やっと最後の鍵を半分開けながら『イノリ』として学園生活と恋する気持ちを楽しむ事を考えられる様になった。

今となってはこのドラマは私にとって、他の作品とはまた違う一面を自分で探せた大事なものとなっていた。次のクールも椹さんを悩ますほどのオファーが来ていた。

尤もこれより濃い恋愛ものの話も次から次へと来ていたが、これ以上恋愛ものは心臓が潰れてしまいそうだから断りを入れると保留箱に入れられた。

でも叶わなくても私に再び人を恋しいと思う事ができたのは、敦賀さんのお陰。今日限りできっちりと鍵を閉めて封じ込めますから、もう少しだけ想ってる事を許して下さいね。

*****

「今日は皆の恋の卒業を撮った後に、皆の卒業式も撮るからな」
「「「「「はいっ」」」」」

皆との楽しい時間ももうすぐ終わりかぁ。私、イノリの恋は先輩の卒業と共に終わったかに思えたが、卒業式にその先輩が現れて……

「イノリ、その後はいつもの様にアドリブな」
「ええっ、だって結末の方向も書いてないじゃないですか。これじゃどうしたら良いか……」
「だからだよ。そこは君の心、いやイノリの心のままに進めてくれればいい」

……監督、無茶ぶりにも程がありますよっ!
大体今まで私の相手は窓の外、遠いグラウンドにいる設定だから出てきてないのに!

「がんがん撮っていくから覚悟してかかってくれよ!」

私の意見を言う暇もなく、スミレから恋の結末が撮られていく。他のみんなは、私よりわずかながら細かい設定があるものの、やっぱりアドリブで最後を締める様になっている。

リハ一発でOKがでる子もいれば、なんとなく違うんだよなぁ、と言われて何度かリテイクを重ねる子もいる。
私の順番は最後。
卒業式で2年前に卒業した恋しい先輩が現れて、もし好きだと言われたら?

相手がショータローだったら迷わず怨キョを飛ばして、ふざけんじゃないわよっ、と怒鳴りつけてまた向こう臑を蹴りあげて追い返すだろう。

「最上君、その顔でこのドラマを演じているとは悲しいぞっ」
「社長!・・・・なぜここに?」
「そりゃあ勿論、君の初の恋愛が絡んだドラマのクランクアップにお祝いに来ないわけにいかんだろう?」
「・・・・わざわざお越し頂きありがとうございます」
「それで今日は愛満載の君の演技を期待しているぞ!」
「・・・・それはご期待に沿えないかと思います・・・・」
「君自身、もうすぐ学校の卒業もあるんだ。楽しみにしているぞ」

そんなに期待されてもぉ・・・・これが終わってもラブミー部在籍が確定しているのに、どうしよう。
でもここで最後は神頼み。神様、敦賀様、どうかこの最上キョーコに力をお与え下さい。

*****

卒業式の式典が終わり、最後のホームルームを終えてみんなでわっと校庭に出るとみんなの周りには部活の後輩たちや親が花束やプレゼントを持って待っていた。

私もお母さんが来るはずだったのだが、たまたま今日風邪をこじらせて寝込んでしまったのだ。
無理して起きて来ようとするのを、みんなに一杯写真を取って貰うからと言って家を出てきた。

だけどみんなに頼める状況じゃないと思ったが、皆の方から一緒に撮ろうと言って貰って写真大会が始まっていた。

だから興奮冷めやらぬまま校門に向かって歩きだそうとしたとき、目の前から歩いてくる人を見て手に持っていた卒業証書を落としてしまった。
皆も私と同じ様にポカンとした様子で固まっている。

「ほら、落ちたよ。はい、君へのプレゼント。卒業おめでとう」

・・・・なぜ先輩がここにいるんだろう?
それになぜ? 薔薇の花束のプレゼントって、私に?

一言も喋ったこともないのに。
ただ私が眺めて幸せに浸っていただけなのに。
恐らく顔は真っ赤になっているだろう。カラカラに乾いた喉を叱咤しながら声を捻り出す。

「・・・・先輩、なぜここに?」
「君の卒業を祝いに来たんだよ、イノリちゃん」
「!!!なんで私の名前を・・・・」
「好きな子の名前は自然と耳に響くよ。いい名前だしね」

好き、ってどうして? 冗談じゃ・・・・

「いつも窓から見ててくれたよね。俺が気が付いたのは部活を辞める間際だったけど、それでも君の笑顔がとても眩しくて見てるだけで嬉しかったんだ。卒業してからも君のバイトの真向かいの店でバイトしてたんだけど、気が付かなかった?」
「すみません、日々精一杯で・・・・」
「この前からバイト先で見かけなくなったから、聞いたら遠くの大学に行くって言うし、捕まえられるのは今日しかないと思ってね」

バイト先にはそう言ったけど・・・・

「・・・・先輩と同じ大学なんです。また先輩の姿がどこかで見られるかも知れないと思って」
「本当に?」

パアッと太陽の様に笑う先輩を見て、自然と台詞が出てきた。
この台詞が貴方にも言いたかったから、イノリの姿で言わせて下さい。

「私はあなたの事が好きです」

***** つづく

クライマックスになっているのか?
多分、次回最終回。