中学の美術の時間。
隣の人同士でペアになって、似顔絵を描くという授業があった。
ボクは、この学習が苦手だった。だって・・・。
気を遣うから。
どんなにボクが無神経で、ガハハないたずら坊主でも、似顔絵をリアルに描いてはならないことはなんとなくわかっていた。
少なくとも、1割増しくらいにしなければ。
ドイヒーな人間関係になってしまう。そう思って、緊張した。
緊張して、隣の人(女の子)の似顔絵を描いた。
「そうだ、目に☆を入れよう」。「目も大きく描こう」。
「口元もきりっと吊り上げて、あごの線は細くして」。
こうして創作的かつ独創的な似顔絵が完成した。完成した似顔絵はリボンの騎士みたいだった。
それは隣に座る女の子とはまるで、別人28号なリボンの騎士だった。
ところが、隣の女の子が完成させたボクの絵を見て、ボクはひっくり返った。
ボクの似顔絵。
1割増ししてくれていなかった。その似顔絵は、リアリズムだった。
う~む、ナゼだ。
なぜボクの瞳には☆が瞬いていないのか。
なぜボクの目は、ニタニタな目に描かれているのか。
しばらくの間ボクは、悲嘆にくれた。そして、今度からは誰の似顔絵を描くにせよ、リアリズムでいこうと。
その日心に誓った。